第3章ドワーフ王国ダンジョン作成編 第39話 地図を広げて雑談中
神界、円卓の間。
珍しく、卓の中央には巨大な一枚の地図が広げられていた。
星全体を俯瞰したそれは、どこか見覚えのある形をしている。
「……改めて見ると、ほんと地球っぽいな」
統括神――豊田正義が、腕を組んで唸る。
「だって最初にタブレットで“おすすめ設定”選んだの、パパでしょ?」
食の神デーメーテールが、軽いノリで言った。
「言い方!」
即座に、ウェヌスがツッコむ。
「事実じゃん?」
「事実でも言い方ってものがあります」
きっぱりと言い切るウェヌスに、アウローラは「それな」と肩をすくめた。
ウェスタは地図を覗き込みながら、静かに頷く。
「はい。大陸配置も、文化圏も、かなり整理されていますね」
地図の上には、ざっくりとした区分が描かれていた。
ユーラシア大陸に広がる人族の国々。
中東付近に集まる魔族の領域。
アフリカ大陸にはドワーフの国。
南アメリカにエルフ。
北アメリカに獣人。
もちろん、完全に分断されているわけではない。
小さな集落や混血の街は、世界中に点在している。
「こうして見ると……」
クロノスが顎ひげを撫でながら、ゆっくりと言った。
「争いが起きるのも、まあ自然じゃのう。隣り合えば、考えもぶつかる」
「でも、ギルドは世界中に広がりましたよ」
エレブスが、円卓の“下”ではなく、今日はちゃんと椅子に座って言う。
まだ声は小さいが、確実に前より前を向いていた。
「種族関係なく、冒険者は増えてる」
「それは良い傾向ですね」
ウェスタが穏やかに微笑む。
一方で、統括は地図の一点を指でトントンと叩いた。
「問題はさ……ここから先、何を“作る”かなんだよな」
「作る?」
テルスが、珍しく前のめりになる。
「国そのものをいじるのは、さすがに重い。
でも、世界に“仕組み”を足すのはアリだと思うんだ」
「また変なこと考えてる顔だよ」
アウラが笑う。
「失礼な。ちゃんと真面目だぞ」
「はいはい」
ヘファイストスは腕を組み、鼻を鳴らした。
「仕組み、なぁ。
どうせなら、技術と相性のいい場所がええんちゃうか」
「技術……」
統括とウェスタの視線が、自然と地図のアフリカ大陸に向かう。
ドワーフの国。
「鍛冶、地下、職人文化……」
ウェヌスが指折り数える。
「確かに、“何かを作る”には向いていますね」
「まだ決めるってほどじゃないけどな」
統括は慌てて手を振る。
「今日はあくまで雑談。雑談だからな?」
「その前振り、だいたい決まってますよね」
ウェスタが静かに言う。
「……はい」
即答だった。
場の空気が、少しだけ緩む。
「まあ、急ぐ話でもない」
クロノスが、ゆったりと締めくくった。
「世界は今、ようやく落ち着き始めたところじゃ。
次に何を置くかは、ゆっくり考えればよい」
統括は、地図を見下ろしながら小さく笑った。
「……だな。
まずは世間話から、だ」
地図はまだ畳まれない。
だが、次の章への“印”だけは、確かにそこに残っていた。




