第28話 神界会議
どうしてこうなった。
俺――統括は、
再び円卓の間の中央で正座をしていた。
視線の先には、
アウローラ、アウラ、ウェスタ、クロノス、テルス、ヘファイストス、デーメーテール。
全員、無言。
……いや、無言が一番怖い。
「……えーと。こんばんは?」
誰も返事をしない。
「正座、必要でした?」
ウェスタが、にこりと微笑んだ。
「必要です」
はい、必要でした。
沈黙を破ったのはクロノスだった。
「下界の魔力の流れが、明らかにおかしい」
円卓の上に浮かぶ光景。
魔族領の奥、巨大な魔力反応。
「魔王が、動き始めている」
アウラが腕を組む。
「今までとは違うね。
これ、完全に“戦争準備”だよ」
「でも全面侵攻ではないわね」
冷静に言ったのはデーメーテール。
「斥候、局地戦、情報収集……
あくまで“試している”」
俺はごくりと唾を飲んだ。
「……人間側は?」
「気づき始めています」
ウェスタが続ける。
「ギルドを中心に、討伐依頼が増加。
魔法と武器の扱いも、明らかに洗練されてきました」
アウローラが楽しそうに言った。
「育ってきたねぇ、人間」
褒めてるのか煽ってるのか分からない。
「問題はここからだ」
クロノスが杖で床を叩く。
「我らがどこまで“許すか”だ」
「まだ全面介入は早い」
テルスが低く言う。
「地に足をつけて生きる存在は、
自ら立ち上がる力を得る必要がある」
ヘファイストスも頷く。
「武器も、防具も、技術も。
ようやく“使う側”になってきたところだ」
全員の視線が――俺に集まる。
「……えっと」
正座のまま、背筋を伸ばす。
「つまり?」
「直接顕現は禁止」
ウェスタが即答した。
「ただし――」
アウローラがにやりと笑う。
「“間接的な導き”は、許可する」
「夢、啓示、偶然の発見。
その程度なら構わん」
クロノスが締める。
「世界は、次の段階に進もうとしている」
その瞬間だった。
円卓の中央に、
新たな光が灯る。
「……あ」
俺が声を漏らす。
下界の一人の青年。
強い意思、折れない心、そして――異様な伸びしろ。
「選ばれたか」
ウェスタが静かに言った。
「勇者、ですね」
アウローラが拍手する。
「いいねぇ。
バランス型だけど、素早さが突出してる」
「魔王に対する“解”としては、妥当だ」
クロノスの評価は淡々としていた。
俺は、その光景を見つめながら思う。
(……やっぱり、始まっちゃったか)
「結論は一つ」
クロノスが言う。
「この世界の行方は、
まずは下界に任せる」
「神は、まだ舞台に立たない」
ウェスタが頷いた。
全員の視線が、再び俺に戻る。
「……分かりました」
正座のまま、深く頭を下げる。
「導きは、最小限に抑えます」
「よろしい」
クロノスが立ち上がる。
「では――」
光景が消える直前、
誰かが小さく呟いた。
「……魔王は、何を見ているのかしらね」
その答えを、
この場の誰も、まだ知らなかった。




