第19話 神界会議「やりすぎです」
その頃。
神界。円卓の部屋。
統括は――
正座していた。
「……どうも皆さんこんばんは」
静まり返った空間で、
妙に軽い声が響く。
「創造神です」
返事はない。
あるのは――
十柱の神々による視線。
前方に並ぶ円卓。
その周囲に座る神々。
火の神ウェスタ。
水の神ウェヌス。
風の神アウラ。
土の神テルス。
光の神アウローラ。
闇の神エレブス。
農業の神クロノス。
鍛冶の神ヘファイストス。
食の神デーメーテール。
そして、魔法の神ヘルメース。
壮観だった。
「……壮観ですね」
ぽつりと漏れる。
「これだけの神に
睨まれること、
なかなか無いですよ?」
誰も笑わない。
「……」
統括は、
ゆっくり視線を巡らせる。
「もうそろそろ
立ち上がっても
いいでしょうか?」
間髪入れず。
「「「まだです」」」
全員だった。
「……ごめんなさい」
即座に頭を下げる。
最初に口を開いたのは、
火の神ウェスタだった。
「やりすぎです」
静かで、
しかし逃げ場のない声音。
「……どこが?」
「全部です」
「全部!?」
「全部です」
即答だった。
「あなた、
直接顕現しましたね?」
「しました」
「人前に」
「しました」
「しかも」
ウェスタの視線が、
統括の胸元へ落ちる。
「……タンクトップで」
「そこ重要!?」
アウローラが、
肩をすくめる。
「重要でしょ~?」
「神が
人前に出るのに
タンクトップって」
「しかも
筋肉アピール」
「完全に
怪しい宗教の人」
「ちがう!」
統括は反射的に否定した。
「説得力を――」
「神に必要なのは
説得力じゃなくて
威厳です」
ウェスタが、
きっぱりと言う。
「……はい」
今度は、
水の神ウェヌス。
「魔道具も
やりすぎです」
「管理用だよ?」
「オーバーテクノロジーです」
冷静に断言された。
「ジョブ鑑定」
「スキル鑑定」
「変更管理」
「3つずつ」
指を折られるたびに、
統括の背中が丸くなる。
「文明段階、
一気に
二つ飛ばしてます」
「……」
「奇跡として
処理できる
限界を超えています」
「……ごめんなさい」
風の神アウラが、
楽しそうに口を挟む。
「でもさ~」
「面白かったよ?」
「宿屋に
突然現れて」
「どもこんちは
創造神です、って」
「絶対
忘れられないでしょ」
「だからダメなんです」
ウェスタが即座に切る。
「個人に
神の存在を
明確に刻みすぎです」
「……」
統括は、
小さく手を挙げる。
「導いただけなんだけど」
全員が、
同時にため息をついた。
闇の神エレブスが、
ぼそりと言う。
「……直接介入」
「……しかも
仕組み作り」
「……完全に
アウト」
「……」
「……はい」
最後に、
魔法の神ヘルメースが
にやりと笑う。
「でもさ」
「魔法安定したの
早かったよね?」
「ギルドできたら
戦争の火種も
制御しやすくなる」
「……結果的には
正解寄り?」
「結果論です」
即座に却下。
円卓の空気が、
一段階冷える。
ウェスタが立ち上がり、
統括を見下ろす。
「今後の方針を
確認します」
「直接顕現は禁止」
「夢や啓示、
象徴的現象まで」
「物品提供は
神界管理下のみ」
「筋トレ推奨は――」
一瞬、
間が空いた。
「……控えめに」
「え?」
「控えめに」
「……はい」
「以上です」
ウェスタは、
椅子に戻る。
「反論は?」
統括は、
正座のまま考え――
やめた。
「ありません」
「……」
「……」
「……すいませんでした」
深く頭を下げる。
沈黙。
やがて、
アウローラが
にっと笑う。
「でもさ」
「タンクトップは
正直似合ってたよ?」
「だから余計
ダメなんです」
即ツッコミ。
「……はい」
「では」
ウェスタが宣言する。
「次に
問題を起こした場合」
「もっと長い正座です」
「……何時間?」
「神界基準で」
「……」
統括は、
覚悟を決めた。
「以後、
気を付けます」
「……」
神々は、
それぞれ視線を外す。
会議は、
終わった。
正座を解かれ、
立ち上がる統括。
膝が、
少し笑っていた。
「……老化しない身体、
最高だねって
言ったの、
撤回しようかな」
誰も聞いていなかった。
だが――
下界では、
確実に歯車が
動き始めている。
神の“導き”は、
もう戻らない。




