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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第18話 神、宿屋に降り立つ



レオンは、

宿屋の二階にある自室で、

一人考え込んでいた。

昨日の夢。

霧の中の視線。

言葉にならない“圧”。

「……何か、

 しなきゃいけない気がする」

だが、

具体的な形が見えない。

組織?

規律?

導き?

考えれば考えるほど、

思考は空回りする。

「……難しいな」

そう呟いた瞬間。

――コンッ

軽い音がした。

ドアじゃない。

窓でもない。

部屋の真ん中だ。

次の瞬間。

空間が、

ぐにゃりと歪んだ。

「ども」

突然、

そこに“誰か”が立っていた。

「こんにちは。

 創造神です」

「……は?」

レオンの思考が、

完全に停止した。

そこに立っていたのは――

筋骨隆々の男。

鍛え抜かれた肩。

盛り上がる胸筋。

そして――

白いタンクトップ。

「……え?」

レオンの視線が、

無意識に上から下へ動く。

「えっ、

 なぜタンクトップ?」

思わず口に出た。

創造神は、

当然のように答える。

「人前に出るから」

「……え?」

「神だし」

「……え?」

レオンの頭が、

完全に追いついていない。

「いやー」

創造神は、

頭をかきながら笑った。

「普段は

 もうちょっと

 ちゃんとしてるんだけど」

「今日は

 急だったからさ」

「……急でも

 タンクトップ?」

「筋肉見せないと

 説得力ないでしょ」

「……」

理屈が、

意味不明だ。

だが――

なぜか妙に納得してしまう

自分がいるのが怖い。


「でね」

創造神は、

勝手に椅子を引いて座った。

タンクトップが、

きしむ。

「君さ」

「最近、

 悩んでるでしょ」

「魔法が強くなって」

「人が増えて」

「でも、

 まとめる仕組みがない」

レオンの喉が鳴る。

「……なぜ、それを」

「神だから」

即答だった。

「で、

 いいことがあるんだ」

「いいこと?」

「うん」

創造神は、

指を立てる。

「冒険者ギルド」

「……ギルド?」

「そう」

「冒険者を登録して」

「依頼を管理して」

「報酬を明確にして」

「勝手に暴れたら

 ペナルティ」

「怪我人が出たら

 救護と補償」

言葉が、

流れ込んでくる。

それは――

レオンがぼんやり考えていた“形”を、

完璧に整理したものだった。

「……なぜ、

 そこまで」

「おすすめだから」

「?」

「あとね」

創造神は、

さらに畳みかける。

「建てる場所は」

「町の中心から

 ちょっと離した方がいい」

「騒音対策」

「訓練場併設」

「掲示板は

 誰でも見える位置」

「酒場は

 併設必須」

「情報は

 酒の席で集まる」

「……」

「あと、

 一番大事なこと」

ぐっと顔を近づけてくる。

タンクトップ越しでも、

圧がすごい。

「魔法も大事だけど」

「まずは筋肉」

「基礎体力」

「筋トレ」

「魔力切れたら

 終わり」

「逃げるにも

 殴るにも

 筋肉」

親指を立てた。

「筋トレ、

 忘れるなよ」


数秒。

沈黙。

「……」

「……」

「……」

レオンの脳が、

ようやく再起動する。

「……あの」

「はい」

「あなたは」

「創造神」

「……」

「で?」

「うん」

「……本当に?」

創造神は、

少し考えた後、

肩をすくめた。

「信じるかどうかは

 任せるよ」

「でも」

「君なら、

 できる」

「導いただけ」

「ヒントを

 出しただけ」

そう言って、

立ち上がる。

「じゃ」

「そろそろ

 帰るね」

「え、

 ちょっと――」

創造神は、

窓の前に立ち、

振り返った。

「応援してるよ」

「レオン」


「……あ、そうだ」


創造神は、

思い出したように手を叩いた。


「もう一個、

 大事なもの」


レオンが、

警戒しながら聞く。


「……まだあるんですか?」


「あるある」


「むしろ、

 こっちが本命」


創造神は、

どこからともなく

小さな板状の魔道具を取り出した。


薄い。

軽い。

文字が浮かんだり消えたりしている。


「これ」


「ジョブの鑑定と変更、

 管理ができる魔道具」


「……」


「で、こっちは」


もう一つ。


「スキルとレベルを

 鑑定できる魔道具」


レオンの顔が、

完全に固まった。


「……え?」


「とりあえず」


創造神は、

指を折る。


「ジョブ管理用、

 3つ」


「スキル鑑定用、

 3つ」


「合計6個」


「……え?」


「ギルド運営するなら、

 最低限必要でしょ?」


レオンの口が、

開いたまま閉じない。


「……こ、

 こんなの」


「世界、

 ひっくり返りません?」


創造神は、

少し考えてから

首を傾げた。


「……管理用だし」


「戦闘力上がるわけじゃないし」


「間接的だし」


「セーフ」


自分に言い聞かせるように

頷く。


「悪用防止で」


「使用履歴も残るし」


「個人所有は禁止」


「ギルド保管」


「貸出制」


「……そこまで

 考えてるなら」


レオンは、

震える手で

魔道具を受け取った。


「……信じます」


「うん」


創造神は、

満足そうに笑う。


「じゃ、

 本当に今度こそ帰るね」


「筋トレ忘れるなよ」


そう言って、


そのまま、

 窓に飛び込んだ。

「――っ!?」

次の瞬間、

姿は消えていた。


しばらくして。

レオンは、

ベッドに座ったまま、

天井を見つめていた。

「……」

「……よし」

立ち上がる。

胸の中に、

不思議と迷いはなかった。

「やるか」

「冒険者ギルド」


一方、その頃。

神界。

円卓のある部屋。

統括は、

戻ってきていた。

「……よし」

「導いただけだ」

「直接介入じゃない」

「間接的」

「セーフ」

自分に言い聞かせる。

その背後で。

「……」

「……」

「……」

十の視線。

ウェスタは腕を組み。

ウェヌスはため息。

アウラは呆れ顔。

アウローラは

ニヤニヤしている。

テルスは

机の下。

エレブスは

影の中。

「……」

統括は、

ゆっくり振り返った。

「……なに?」

ウェスタが、

静かに言った。

「顕現」

「しましたね?」

「……え?」

「完全に」

「……」

アウローラが、

楽しそうに続ける。

「めっちゃ

 丁寧に

 説明してたよね?」

「……」

「筋トレ推奨まで

 してたし」

「……」

「タンクトップだし」

「……」

統括は、

視線を逸らした。

「……善意」

「……でした」

円卓に、

深いため息が

重なる。



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