第2話 原初の神は忙しい
原初の神は、忙しい。
宇宙を管理し、
法則を維持し、
星々の寿命を見届ける。
それが、役目だ。
星が生まれ、
文明が芽吹き、
そして――滅びる。
そのすべてを、
感情を挟まず、淡々と処理する。
それが、
原初の神という存在だった。
だが。
その日、
ひとつの**魂**が目に留まった。
「……妙だな」
数え切れないほどの魂が、
毎瞬、消えていく。
戦争。
病。
事故。
寿命。
だが、その魂は――
**最後まで、燃えていた。**
「三十名、救助」
原初の神は、
魂に刻まれた記録を読む。
「判断速度、適切」
「自己保存意識、低い」
「……またか」
こういう魂は、
珍しくない。
だが。
「火を恐れていない」
「だが、軽んじてもいない」
原初の神は、
ほんのわずか、思考を止めた。
「……消防士、か」
火を扱う文明で、
火に立ち向かい続けた人間。
燃える建物の中で、
最後まで他者を優先した魂。
「責任感が、過剰だ」
その時。
「でもさ〜」
軽い声が、
空間に割り込んだ。
「こういう人、嫌いじゃないでしょ?」
原初の神は、
視線を向けずに答える。
「……口を挟むな」
「え〜?」
天使が、
ふわふわと宙に浮いている。
黄色い翼。
だが、態度は軽い。
「だってさ〜
この人、完全に守る側の人じゃん?」
「もう死んでるのにさ」
原初の神は、
魂を見つめ続ける。
「筋肉量、平均以上」
「精神耐性、高」
「自己評価、低」
「……扱いづらい」
天使は、くすっと笑った。
「でしょ〜?」
「だからこそさ〜」
「世界、任せたら面白くない?」
原初の神は、
ゆっくりと天使を見る。
「軽率だな」
「でもさ〜」
天使は、指を立てる。
「新世界案件、溜まってるよ?」
「管理神、足りてないし」
「この人、絶対逃げないタイプだし」
原初の神は、
再び魂を見る。
炎の中で、
迷いなく戻った記録。
「……否定はしない」
天使の顔が、ぱっと明るくなる。
「っしょ!」
「ねえねえ」
「創造神にしよ?」
「軽く言うな」
だが。
原初の神は、
すでに計算を始めていた。
この魂なら。
・世界を壊さない
・責任から逃げない
・感情を捨てきれない
――統括向きだ。
「……決定」
天使が拍手する。
「やった〜!」
「新世界〜!」
「……喜びすぎだ」
原初の神は、
魂に向き直る。
「豊田正義」
「あなたは、次に進みます」
「守る側ではなく」
「**作る側**として」
魂は、
静かに光った。
だが、
まだ眠っている。
「ちなみにさ〜」
天使が小声で言う。
「この人、絶対真面目だよ?」
「あと、筋トレしないと落ち着かないタイプ」
原初の神は、
わずかに眉をひそめる。
「……面倒だな」
「でしょ?」
天使は笑う。
「でもさ〜」
「そういう神の方が、
世界、長持ちするんだよ?」
原初の神は、
ほんの一瞬だけ考えた。
そして。
「……確かに」
「世界設計権限を与える」
「初期ポイント、五千」
「補佐に、天使団をつける」
天使が、目を見開く。
「え、五千!?」
「贔屓すぎじゃない!?」
「失敗させないためだ」
原初の神は、
淡々と告げる。
「壊す神は、多い」
「守る神は、少ない」
「……この魂は」
「守り続けて、壊れなかった」
天使は、少しだけ黙った。
「……ねえ」
「この人さ」
「最後、後悔してなかったよ?」
原初の神は、
魂の記録を閉じる。
「知っている」
「だからこそ」
「次は、死なせない」
天使は、にっと笑った。
「よろしくね〜」
「新米神様」
原初の神は、
宇宙へと視線を戻す。
すでに、
別の星が崩壊し始めている。
「……忙しい」
だが。
この世界だけは、
少しだけ、目をかける価値がある。
そう判断した。
ポイントについては後々出てきます。




