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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第100話 原初の神、頭を抱える



――原初の神は、

基本的に「見ているだけ」の存在である。

星を作り、

神を配置し、

あとは静かに巡りを眺める。

……はずだった。

「…………」

原初の神は、

虚空に浮かぶ“観測盤”を見つめていた。

映っているのは、

鬼人族の島。

そして――

数刻前までの惨状ログ。

【安全指数:過剰】

【自由裁量:極端に低下】

【管理者善意:暴走】

【統括:胃痛】

「………………」

原初の神は、

ゆっくりと額に手を当てた。

「……なぜ、

こうなる」

少し時間を遡る。

原初の神は、

いつものように星を俯瞰していた。

文明。

衝突。

選択。

成長。

どれも順調。

「……良い流れだ」

特に評価していたのは、

創造神・統括。

破壊しない。

放置しない。

だが、奪わない。

「……珍しい型の神だ」

そう思った、その時。

――警告。

【異常検知】

【安全概念:再定義】

【実行主体:神獣】

「……ん?」

画面を拡大する。

そこにいたのは、

三つの首を振りながら

善意を全力投下する神獣。

「……ケルベロス」

原初の神は、

少しだけ口元を緩めた。

「ほう。

管理者か」

――次の瞬間。

【自由意思:制限】

【痛覚:無効】

【危険概念:消失】

「……?」

さらに。

【反抗:無力化】

【怠惰:筋力補正】

「…………?」

原初の神、

完全に黙る。

「……いや、待て」

慌ててログを遡る。

原因:

「もっと安全にしよう」

「……善意、だな」

だが結果。

・文明の停滞

・学習機会の消失

・管理者依存の兆候

原初の神は、

ゆっくりと椅子に腰を下ろした。

「…………」

そこへ。

天界側の映像が切り替わる。

床に倒れ込む統括。

「……胃が……」

「……」

原初の神は、

思わず天を仰いだ。

「……すまん」

誰にともなく呟く。

やがて。

すべてが解除され、

島に“普通”が戻る。

統括が説得し、

神獣が理解し、

善意が抑えられた。

観測盤の数値が、

徐々に安定していく。

原初の神は、

深く息を吐いた。

「……危なかったな」

だが――

評価項目を確認する。

【危機対応】

・統括:S

・神獣:A(要教育)

・文明耐性:A+

「…………」

原初の神は、

頭を抱えた。

「評価が下げられん」

そこへ、

ウェスタの念話が届く。

『……あの、原初様』

「何だ」

『あの件……

統括は怒られますでしょうか』

原初の神は即答した。

「怒れん」

『……ですよね』

「むしろ褒める案件だ」

『……え』

「制御不能な善意を、

力でなく言葉で止めた」

「神獣を叱らず、

理解させた」

「失敗の意味を、

現場で教えた」

「……理想的だ」

ウェスタが黙る。

原初の神は、

ぼそりと付け加えた。

「……胃以外は」

その後。

原初の神は、

記録簿に一文を書き足した。

この星は特殊である。

神が強すぎる。

神獣が優しすぎる。

管理者が真面目すぎる。

よって――

私が口を出す余地は、もはや無い。

そして最後に。

追記:

統括には、

胃薬を常備させること。

原初の神は、

ゆっくりと観測盤を閉じた。

「……本当に」

小さく、

だがどこか楽しげに。

「とんでもない星を、

作ってしまったものだ」

遠く――

天界のどこかで。

統括がくしゃみをした。

「……誰か、

俺の悪口言ってないか?」

その問いに答える者は、

もういなかった。

――だが。

この星の未来を、

原初の神は確信していた。

滅びはしない。

胃は壊れるが。



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