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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第99話 もっと安全にしよう



――その日。

統括は、久しぶりに「何も起きていない朝」を迎えていた。

「……よし」

「今日は胃が痛くない」

鬼人族の島。

災害は“ほどほど”。

訓練も成立。

農作物も育つ。

戦士も強くなる。

完璧ではないが、

管理としては理想的な落とし所。

統括は深く息を吸った。

「エキドナ」

「今日は何も――」

その瞬間。

空間が、

バキンと割れた。

「――あ」

嫌な予感しかしない。

現れたのは、

三つの首を持つ神獣。

「主ー!」

「来た!」

「遊びに来た!」

「……ケルちゃん」

胃が、

ギュゥゥゥと鳴いた。

「どうしたんだ?」

「今日は管理順調だぞ?」

ケルちゃんは島を見回し、

尻尾をぶんぶん振る。

「うん!」

「でもね!」

嫌な間。

「もっと安全にしよう!」

――地獄、開幕。

「待て待て待て待て待て!!」

統括は即座に両手を上げた。

「今が“ちょうどいい”んだ!」

「これ以上は――」

「だめ?」

三つの首が同時に首を傾げる。

「……う」

統括、即死しかける。

エキドナが前に出た。

「ケルベロス殿」

「今は十分安全じゃ」

「でも!」

「前より危ない!」

「前より“学べる”だけ!!」

ケルちゃんは真剣な顔になった。

「事故」

「怪我」

「良くない」

「だから!」

「全部止める!」

「やめろォォ!!」

――遅かった。

◆ 第一段階:善意

ポチが口を開く。

「火、全部弱くする」

島中の火属性魔法が

**“ちょっと温かい”**に固定された。

鍛冶場、死亡。

クロが続く。

「水、常に最適量」

島、常時うるおう。

農作物、過剰成長。

畑、森になる。

ハナが微笑む。

「回復、常時」

鬼人族全員、

筋肉痛が存在しなくなる。

「訓練の意味ぃぃ!!」

◆ 第二段階:配慮

ケルちゃん、さらに言う。

「怖いもの、なくす」

次の瞬間。

・高所 →低くなる

・刃物 →丸くなる

・段差 →消える

「文明後退してる!!」

エキドナが青ざめる。

「これは……

余の防御陣より厄介じゃ……」

◆ 第三段階:優しさ

ケルちゃん、考え込む。

「でも……」

「主、前言ってた」

「失敗も大事」

「……言った」

「じゃあ!」

「失敗しても痛くないようにする!」

「それが一番ダメなやつ!!」

発動。

――完全無痛世界(島限定)。

転んでも痛くない。

殴られても痛くない。

怪我しても違和感だけ。

鬼人族の戦士。

「……あれ?」

「俺、今腕折れた?」

「気のせい!」

「回復した!」

「……怖」

統括、頭を抱える。

「ケルちゃん……」

「それは……」

「安心?」

「恐怖だよ!!」

◆ 最終段階:決定打

そこへ――

子供鬼人が駆け寄る。

「ケルちゃん!」

「すごいね!」

「もっとやって!」

その言葉で、

ケルちゃんの目が輝いた。

「任せて!」

「任せるなァァァ!!」

――空が光る。

管理者モード:全力善意

島全体に、

“危険を起こす意図”が検知されると

即座に無力化される仕様。

結果。

・喧嘩 →双方座らされる

・反抗 →自動反省タイム

・怠惰 →なぜか筋トレが始まる

エレブス(遠隔念話)

『父上……

島、思想統制されてます』

「やっぱりか!!」

統括は叫んだ。

「ケルちゃん!!

ストップ!!」

三つの首が振り向く。

「……主」

「嫌?」

沈黙。

統括は、

ゆっくり膝をついた。

「嫌じゃない」

「守ってくれてるのも分かる」

「でもな」

目を見て、言う。

「これは“檻”だ」

ケルちゃんの尻尾が止まる。

「檻……?」

「全部決めて」

「全部守って」

「全部止めたら」

「生きてる意味がなくなる」

長い沈黙。

やがて――

ケルちゃんは小さく頷いた。

「……分かった」

結界が、

一つずつ解除される。

島に、

“普通の音”が戻る。

風。

波。

人の声。

統括はその場に倒れた。

「……胃が……」

エキドナが肩を叩く。

「よく生きておるな」

「死にかけだよ!!」

ケルちゃんが近づく。

「主」

「ごめん」

統括は笑った。

「いいんだ」

「善意は、調整が一番難しい」

ケルちゃん、にっこり。

「次は!」

「ちゃんと相談する!」

「頼む……本当に……」

――こうして。

鬼人族の島は救われた。

そして統括の胃は、

また一つ、強くなった。

なお――

この日以降。

統括は

「ケルちゃんが来る予定表」を

三重管理するようになったという。



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