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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第98話 安全すぎる島



翌朝――

鬼人族の島は、異様な静けさに包まれていた。

波は穏やかすぎて動かず、

風は吹く前に整列し、

雲は影の角度まで計算されている。

「……おかしくない?」

統括は浜辺に立ち、周囲を見回した。

「おかしいのは統括殿の感覚じゃ」

隣でエキドナが胸を張る。

「災害対策は完璧。これぞ理想の管理じゃろ?」

「いやいやいや」

「“完璧すぎる”んだよ!!」

事実――

島は異常だった。

◆ 台風:接近前に進路変更

◆ 地震:発生前に減衰

◆ 津波:そもそも波が立たない

◆ 落雷:雷雲が自発的に解散

◆ 隕石:大気圏で謝罪して帰る

鬼人族の子供が空を指差す。

「ねーねー!」

「流れ星、途中でUターンしたよ!」

「見て見て!」

「雨降りそうだったのに、雲が避けてった!」

鬼人族の大人たちは、深く頷く。

「さすが竜神様……」

「この島、もう死ぬ気がしない」

統括は頭を抱えた。

「違う!!

“死なない”と“生きてる”は別!!」

そこへ、ウェスタが空間転移で現れる。

「報告です」

「この島、危険度がゼロを突き抜けました」

「突き抜けた?」

「はい。

災害予測モデルが計算を放棄しています」

「放棄!?」

クロノスも腕を組む。

「農耕神の立場から言おう」

「この島……」

「作物が失敗しない」

「え?」

「雨も日照も“最適値”で固定されておる」

「凶作という概念が消えかけている」

エキドナは満足そうだ。

「問題ないではないか」

「飢えぬ、死なぬ、壊れぬ」

「理想の星じゃ」

統括は叫んだ。

「違う!!

“苦労しない”は“成長しない”だ!!」

その瞬間。

ゴペッ。

エキドナが転んだ。

「……だから転ぶな!!」

鬼人族、即座に駆け寄る。

「竜神様大丈夫ですか!?」

「地面が悪かったのでは!?」

「すぐ舗装を――」

「やめろ!!

そこは自然のままでいい!!」

だが、問題はさらに続く。

漁師が青ざめた顔で駆け込んできた。

「統括様……」

「魚が……」

「魚が?」

「……逃げません」

「え?」

海を覗くと、

魚が整列して待っていた。

《本日の捕獲枠はこちらです》

みたいな顔で。

「これ、もう漁じゃない!!

配給!!」

鍛錬場では――

鬼人族の戦士が困惑していた。

「攻撃が……」

「全部、当たらないんです」

「敵が強いのか?」

「違います」

「当たる前に“安全判定”が入ります」

エキドナ、即答。

「怪我は良くない」

「危険は排除した」

「それ、訓練にならないから!!」

統括は、ついにエキドナを正面から見た。

「なあ、エキドナ」

「安全は大事だ」

「でも――」

「“失敗できる余地”も必要なんだ」

エキドナは、初めて黙り込んだ。

「失敗……?」

「それは……危険では?」

「危険だよ」

「でもな」

統括は、島を見渡す。

「危険があるから」

「人は考える」

「工夫する」

「助け合う」

「全部を守ったら」

「全部、止まる」

しばらくの沈黙。

そして――

エキドナは、そっと結界の一部を緩めた。

「……難しいのう」

「管理とは……」

「だろ?」

「だから“慎重すぎ”なんだよ」

ゴペッ。

「だから今は転ばなくていい!!」

こうして――

鬼人族の島は、

・死なないが

・怪我はする

・失敗もする

・でも、滅びない

という

**“ちょうどいい安全レベル”**へと修正された。

なお――

その後も、

隕石だけは二度と近づかなくなった。

理由:

「怖い神がいる」

――宇宙規模の風評被害であった。



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