閑話01 創造神の名前
アウローラがエレブスを産んだ後のお話です
「……なぁ」
俺は、円卓の前で咳払いをした。
「ちょっと、
相談がある」
一斉に視線が集まる。
火の神ウェスタ。
水の神ウェヌス。
風の神アウラ。
土の神テルス(部屋の扉越し)。
光の神アウローラ。
闇の神エレブス(円卓の下)。
「どうしたの、
統……あ」
アウラが、
途中で止まった。
「……」
俺は、
その間に割り込む。
「いや、
それだ」
「それ?」
「名前」
場が、
静まった。
「……皆には、
名前があるだろ」
「ウェスタ、
ウェヌス、
アウラ、
テルス、
アウローラ、
エレブス」
「でも」
「俺には、
まだ無い」
沈黙。
「……あ」
ウェヌスが、
小さく声を漏らす。
「……確かに」
「気にしたこと
なかった」
アウローラが、
あっけらかんと言う。
「だって」
「創造神ですから」
ウェスタが、
当然のように言った。
「名前より、
役割が重要です」
「……そうなんだけど」
俺は、
頭を掻いた。
「でもさ」
「呼びづらくないか?」
「『創造神様』とか
毎回言われるの」
「じゃあ」
俺は、
少し考えてから言った。
「正義、とかどうだ?」
「……正義?」
「俺、人間の頃の名前が
正義だったんだ」
一瞬、
空気が止まる。
「……それは」
ウェスタが、
言葉を選ぶ。
「人の名、ですね」
「神になってからも
使い続けるのは……」
「流石に、
重いです」
「……だよな」
俺も、
そう思っていた。
「人間だった頃の名前を
神として名乗るのは」
「ちょっと、
引きずりすぎだ」
「……」
すると。
「じゃあさ」
軽い声が、
割り込んだ。
光の神アウローラだ。
「統括で
よくない?」
「……は?」
「だって」
「やってること、
それじゃん」
「まとめ役」
「決定役」
「責任者」
「統括!」
場が、
ざわつく。
「……確かに」
アウラが、
頷く。
「一番しっくりくる」
「創造神=統括」
「分かりやすい」
「呼びやすい」
「……」
俺は、
嫌な予感がしていた。
「いや、
ちょっと待て」
「俺、
創造神だけど?」
「はいはい」
「分かってるって」
アウローラが、
軽く流す。
「統括神」
「統括」
「統括〜」
次々と、
呼ばれ始める。
「……」
「……」
「……なんで
決定事項みたいに」
「異議は
ありますか?」
ウェスタが、
真顔で聞いてくる。
「……ありません」
思わず、
答えてしまった。
「では」
「以降、
創造神は」
「統括と
呼称します」
「……え」
「決まりですね」
ウェヌスが、
頷く。
円卓の下から、
小さな声。
「……統括、
落ち着く」
「……それ、
褒めてるか?」
返事は、
無かった。
こうして。
俺は、
神になってからも
正式な神名を持たず、
役職名で呼ばれる
珍しい神になった。
「……まぁ」
俺は、
ため息をついた。
「呼ばれりゃ、
何でもいいか」
その瞬間。
「統括〜」
「統括様〜」
「統括ー!」
一斉に呼ばれる。
「……やっぱ
ちょっと軽くないか?」
誰も、
答えなかった。




