閑話14 いつまで続くの?
今日も今日とて――
魔王ゼノスは、まっすぐだった。
「ヘルメースゥゥゥ!!今日こそ決着をつけに来たぞ!!」
天界の門前で叫ぶその姿は、もはや恒例行事である。
結果から言おう。
今日も、秒で負けた。
「ぐあああああ!!」
ドゴォン!と吹き飛ばされ、魔界へ逆落とし。
部下たちは慣れた手つきで瓦礫から魔王を引きずり出す。
「……ボス、もうやめましょう」
「そうですよ、これで何回目です?」
「正確には……今日で、えーっと……」
「数えるのやめた日から数えて、三十七回目です」
「知らん!」
即答だった。
「恋は挑戦だ!」
「諦めたら終わりだろうが!」
「でも相手、神ですよ?」
「しかもヘルメース様ですよ?」
「何で毎回、神に恋するんですか……」
部下の一人がぼそっと言う。
「うちのボス、もう一生結婚できないんじゃない?」
「言うな」
魔王ゼノスは立ち上がり、マントを翻す。
「次は勝つ」
「次こそは、想いを――」
「その前に生きて帰ってきてください!」
そして三日後。
「来たぞヘルメースゥゥゥ!!」
懲りない魔王は、再び天界に現れた。
だが。
「……?」
いつもなら余裕の笑みで迎え撃つはずの神が、そこにいない。
代わりに――
「……」
そこにいたのは、
目を潤ませたヘルメースだった。
「……え?」
魔王ゼノスは、完全に固まった。
「……ど、どうしました?」
思わず声が柔らぐ。
「どこか……痛むのか?」
「大丈夫?」
ヘルメースは袖で目元をこすりながら言う。
「……大丈夫じゃ」
「ちょっと、目がしみただけ」
「そ、そうか……」
剣を構えたまま、魔王の手が止まる。
(な、泣いてる……?)
(泣いてる相手を、殴る……?)
(いや、魔王としては……)
(でも……)
「……」
完全に動けなくなった。
「どうした、来ないのか?」
ヘルメースが不思議そうに首を傾げる。
「……いや、その……」
「その……」
魔王ゼノスは視線を逸らした。
「……涙が、その……」
次の瞬間。
「お前が来すぎて」
ヘルメースが、口を開く。
「ねむいんじゃーー!!」
大あくび。
「ふぁぁぁ……」
「……え?」
次の瞬間、
ドゴォン!!
「ぐあああああああ!!」
魔王ゼノス、再び撃沈。
ただの欠伸だった。
部下たちは遠くから見ていた。
「あー……」
「またか」
「期待した俺がバカだった」
瓦礫の中から、魔王が片手を上げる。
「……まだだ」
「次は……」
「ボス」
「それもう三十八回目です」
「黙れ!」
空を見上げ、魔王ゼノスは叫ぶ。
「頑張れ俺!!」
「負けるな俺!!」
「いつかきっと!!」
――その日が来るかは、誰にも分からない。
だが一つだけ確かなことがある。
この戦い、まだまだ終わらない。
頑張れ、魔王ゼノス!




