第一章・世界創造編 第1話 脳筋消防士、火災に遭う
はじめまして、アントモパパといいます。読むのが好きで書くのは全然ですが、思いついたのでちょっと書いてみようと思いました。良かったら温かい目で見てください
俺の名前は、豊田正義。
三十八歳。
職業、消防士。
いわゆる体育会系で、
いわゆる脳筋だ。
趣味は筋トレ。
これは自虐でもネタでもなく、
ただの事実だ。
筋肉は裏切らない。
サボれば落ちるし、
鍛えれば応えてくれる。
火災現場で信じられるのは、
経験と体力だけだ。
だから俺は、
休みの日でも身体を動かす。
今日も非番だった。
午前中にジムで胸と背中を追い込み、
シャワーを浴び、
プロテインを飲み干したところで気づく。
――切れてる。
いつも飲んでいるプロテインが、
棚にない。
「……やらかしたな」
冷蔵庫の前で腕を組む。
こういうミスは、
だいたい疲れている証拠だ。
仕方なく、
駅ビルに入っている量販店へ向かった。
駅ビルは人が多い。
休日の午後、
家族連れやカップルで溢れている。
正直、
俺はこういう場所が得意じゃない。
人の流れを無意識に見てしまう。
出口はどこか。
通路は狭くないか。
天井は低すぎないか。
――職業病だ。
量販店でプロテインを手に取り、
成分表を眺める。
「……今回はチョコ味にするか」
そんな、
どうでもいいことを考えていた。
その時だった。
**ドンッ。**
鈍い爆発音。
一拍遅れて、
焦げた匂いが鼻を突く。
「……火か」
身体が、
勝手に動いた。
頭で考えるより早く、
足が床を蹴る。
エスカレーター方向。
人が密集する位置。
最悪の場所だ。
「火災発生!」
誰に向けたわけでもなく、
声を張り上げる。
「落ち着いてください!
走らないで!
出口はこっちです!」
驚いた顔が、
次々とこちらを見る。
制服は着ていない。
だが、関係ない。
声と動きで、
場を制御する。
配線から火花。
天井裏へ延焼。
「……早いな」
火の回りが、
想定より早い。
人を流す。
押さない。
戻らせない。
泣いている子どもがいる。
「大丈夫だ」
しゃがみ、
目線を合わせる。
小さな身体を抱き上げる。
――重い。
だが、
筋トレはこういう時のためにある。
出口まで走り、
子どもを親に渡す。
「戻らないで!」
言い切る。
そして――
**戻ってしまう。**
まだいる。
必ず、いる。
煙の奥。
咳き込む音。
「……クソ」
口元を押さえ、
姿勢を低くする。
視界が、白い。
熱い。
だが、
まだ行ける。
それが、
俺の判断だった。
最後に見えたのは、
天井の亀裂。
「――っ」
嫌な予感。
**崩落。**
音が消えた。
炎が、
視界を埋める。
熱い。
息が、
吸えない。
それでも。
――三十人。
助けた人数が、
頭をよぎる。
「……まあ」
悪くないか。
最後に思ったのは、
本当にどうでもいいことだった。
筋トレ、
サボらなくてよかったな。
視界が、
暗くなった。




