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オーダーメイド 〜魔道具の祖の研究日誌〜  作者: 中安・ユージーン・風真
第三章 Order:筋書を外す鳥籠

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姉妹喧嘩

裏手の庭園。かつてマエリスとディアナが衝突した場所には、使用人たちの輪が作られていた。


その中央で相対するのは二人の少女。

マノンは動きやすい服にカーディガンを羽織り、髪を後ろにまとめて木剣を構える。


「おねえちゃん?」

「ん? どうしたの?」


ポニーテールのマノン可愛い~、とディアナのような思考をしていたマエリスは、マノンの声に表情を整える。


「車椅子、大きくしないの?」

「ああ、『炎銀の傀儡塊(メタフラマタ)』のこと? 最初は様子見するから使わないよ」


ホバーモードではあるが、大きな腕がない車椅子。

明確な『舐めプ』であり、目隠し越しではあるが睨まれていることがマエリスには分かった。


「絶対に勝つ!」

「これはごっこ遊びじゃないから、殺す気で来なよ。お姉ちゃん、一回なら死んでも大丈夫だからね」


かつて姉妹の間で流れたことのない、緊張を孕んだ剣呑な空気。

審判のミシェルが合図をした。


「では、始め!」

「やあぁぁぁぁ!」


瞬間、爆発的な加速でマノンが突っ込んでくる。

その勢いは予想以上なものの、直線的に過ぎる。マエリスは置き土産をしながら、横にスライドした。


マノンが方向転換するために、地面を踏む。その瞬間、マエリスの置き土産が発動し、マノンは盛大に転んだ。

地面がぬかるんでいた。


「きゃ!?」

「どうしたのマノン。攻撃しないと」

「う、うぅぅぅぅ──」


加速するために足に力を入れるが、足元が不安定のため満足に踏み込めない。

それでもまあまあの速度で突撃をするのだが、さっきよりも遅い攻撃が、マエリスに届くはずもない。


マエリスは地面を泥だらけにしながら、マノンの攻撃を避けていく。


「おねえちゃん、ズルい!」

「遠距離攻撃がないのが悪いと思うんだけど……仕方ないなぁ」


これはマノンを納得させるための試合だ。マエリスは仕方なく地面の水への魔力を切る。地面が一瞬で乾燥し固まった。


「やあ!」


すかさず接近戦に持ち込むマノン。今度は打って変わって、余裕のある動きでマノンの攻撃を避けていくマエリス。

しかし風切り音と共に軽々振るわれる剣戟はマエリスには相性が悪い。


ついにマエリスの想定を超えた速度で、剣が体へ届こうとする、が。


「緊急離脱」

「あっ」


マエリスは上へ吹き飛び、上空で車椅子を再生成、マノンの背後を取って肩を叩いた。


「はい、どうするの?」

「まだ!」


マノンが振り向き様に剣を振るうが既にマエリスは後退済み。

そしてホバーの排気を強くして、砂埃を巻き上げた。


目隠しがあるため砂が目には入らないマノンだが、マエリスの姿を見失う。

その隙を、マエリスは急ブレーキをかけながら体当たりをした。

尻もちをつくマノンを、マエリスは見下ろす。


「うっ」

「まだやる?」

「マノン、負けてないもん!」


その後のマノンの攻勢は、さらに力任せになった。体力を無駄に消費し、精彩を欠く。

マエリスはそれを避け続け、マノンが剣を振り下すのに合わせてホバーを回転させながら持ち上げ、スカートパーツで剣を弾き飛ばした。


「あ──」

「まだ、やる?」

「まだ負けてない、まだ負けてない──」


遠くに落ちた剣を拾おうと、マノンは歩く。それはフラフラと頼りなく、限界が近いことが誰の目にも明らかだった。


マエリスはここで、マノンに嫌われることを決意した。


ホバーを走らせ、マノンよりも先に木剣を拾う。そしてマノンの前にそれを置いた。


「え?」


その行動に訝しみながらも、剣を拾おうと手を伸ばすマノン。

その直前、『炎銀の傀儡塊(メタフラマタ)』を起動していたマエリスが、木剣に拳を叩きつけていた。


バギィッ!


凄まじい破砕音。その破壊力は地面を陥没させ、振動と衝撃を周囲にまき散らす。

シリンダーから風魔法が消え、拳が引き戻された地面には、無残な姿となった木剣があった。


「あぁ、あ──」

「マノンはさ、自分がどうなったら負けるのかを考えてないね」


膝をついて、呆然と木剣だった残骸を見詰めるマノンに、マエリスは冷たく言い放つ。

そしてマノンの目隠しを掴み、引き剝がした。色素の薄いアルビノの目に、日光が突き刺さる。


「うぅ!?」

「こうやって目隠しがなくなったらどうするの? 今着てるカーディガンがなくなったらどうするの?」

「ぅぅぅぅ──」

「そういうことを考えてないから、勝てないんだよ」

「ぅぅ──うああああああああああああああああっ! あああああ──!」


その言葉をトドメに、マノンは泣き崩れた。自分の全力は届かなかった。相手にもされなかった。その事実がマノンを絶望させ、涙を生み続ける。


マエリスがミシェルを見る。ミシェルは頷き、判定を下した。


「勝者、マエリス。今回マノンは専属のルピ含めて屋敷で待機だ。シャーロット、マノンの面倒を頼む」

「それが適任ね」


マノンがルピに助け起こされる中、マエリスは背を向け庭園を立ち去る。


「お姉ちゃんなんてっ! 大嫌い!」


その慟哭に、マエリスは奥歯を嚙み締めた。

お読みいただききありがとうございます。


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