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オーダーメイド 〜魔道具の祖の研究日誌〜  作者: 中安・ユージーン・風真
第二章 Order:至宝を守る痣

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秋口の強風

数日後。

ラホープ公爵家の屋敷の前に、三台の馬車があった。


「押しかけで始まった滞在ですのに、ご厚意に感謝いたしますわ、リケさん」

「……リケとの話は面白かった。また話そう。手紙を出す」

「文通か。二人はマエリスともしているんだったな……僕もするとしよう」

「いいんじゃない? 折角できた同年代の友人だしね」

「私とも是非〜! いっぱい返事を書きますよ〜!」


着々と文通の輪が広がっていくことに、マエリスは内心で苦笑する。

友人がおらず、私的なSNSどころかチャットすらしていなかった前世では、考えられなかった関係だ。


マエリスがディアナの手を借りて馬車に乗り込むと、後ろからリケに呼び止められる。


「マエリス」

「うん?」

「ありがとう。君のお陰で、僕の光はさらに進める」

「そう? いずれリケ一人でも辿り着く程度だと思うけど」

「それでも、今ではなかったはずだ。感謝する──冬にまた会おう」


穏やかな、それでいて少年らしい自信のある表情。

いい顔をするなと、マエリスは思いながら、馬車の戸を閉めた。




「マエリスさんは〜、どんな男性が好みなんですか〜?」

「は?」


三泊四日の復路。それに飽きてか、ディアナが唐突に爆弾を投げ込んできた。


「最近リケさんといい雰囲気じゃないですか〜♪ かと思えばジニーさんに懐かれてますし〜♪ ロイ殿下も執着してますよね〜♪ そこのところどうなんですか〜♪」

「退屈だからってボクに恋バナを振ってくる普通?」

「お嬢様、私も気になります」

「リフィは仕事に集中して!」


御者席から飛んできた言葉をマエリスは打ち返す。

そしてディアナに向き直り、投げやりに答えた。


「三人ともいい子だとは思うよ。リケは少し頭が硬いけど素直だし、ジニーは面倒くさがりだけど魔法には真摯だし、ロイ殿下は俺様気質だけど努力家だからね。でも恋愛的な目で見たことはないかな。

 ディアナはどうなの? それとも聖女は恋愛禁止?」

「そんな決まりはないですよ〜。でも今はマノン様に集中したいので〜」

「人の妹を何て目で見てるのさ!? 言っておくけど、マノンの誕生日に変な物を送らないでよ!」

「送りませんよ〜。心外ですね〜」


うっとりした目でそんなことを言うため、信用できないとマエリスが警戒していると、再び御者席から声が飛んでくる。


「それで、お嬢様のタイプは何なのですか?」

「リフィが蒸し返す!?」

「逃げられませんよ〜♪」


楽しそうに追い詰めてくるディアナに、マエリスは溜息を吐く。


「そう言われてもね。そもそも男性が好きなのかどうかも分からないし」

「え、マエリスさんってそっちのケが──」

「クエッショニング!」


その後、「きっといい出会いがありますよ〜」という謎に腹の立つ慰めをディアナにされ、マエリスは馬車で不貞寝した。




マエリスが辺境伯領へ帰ってくると、秋が始まる。

ミシェルはまだ帰ってきていなかった。帝都で何やら事件があったらしく、その対応に追われているとか。


シャーロットも忙しそうだ。マエリスの招いた波紋は半年経った今でも収まることはなく、連日の社交で大陸中を行き来しているそうだ。


また、マエリスが不在の間に賊の侵入も数回あったとか。既に全件、犯人は黒幕含めて処罰済みらしい。


「なんか物騒になってきてない?」

「そうかもしれませんねぇ。マエリス様も研究資料は隠した方がいいかもですねぇ」

「ボク、目立ち過ぎたのかな?」


諸々をルピが説明し、マエリスはやや落ち込んだ。賊の目的はマエリスの『遺物』──研究成果ではないかと。それで迷惑をかけていないかと。


リフィがフォローを入れる。


「元々、お嬢様に限らずマギカ辺境伯領は魔法の研究が盛んですから、程度の差はあれどこうした騒ぎは通年で存在します。ルピの報告を聞く限り、頻度は例年通りと言える範囲ですから、お嬢様は気にせず研究を続けてください」

「そっか。でもセキュリティはボクの方でも考えてみるよ」


そう言って、マエリスは一人、研究室へ籠った。




「──セキュリティねぇ……暗号とか? 魔法陣は図だから意味ないか」


チクチクと、マエリスは裁縫針を動かしながら呟く。


「わざと嘘の魔法陣を置いておく? 起動したら大爆発するような失敗作を分かりやすく置いて、その裏に本物を隠しておくみたいな」


それとも、魔法陣自体を隠すべきだろうかと、マエリスは考える。


「……いや、どうせあと半年したらボクの根幹が魔法陣だってことはバレるんだし、いっか。後でとにかく派手に爆発する、それでいて陣の見てくれはかっこいい自爆魔法陣を作ろうっと──うん、こんなもんでいいかな」


針を針山に刺して、マエリスは満足げに頷き、作っていたそれを机に置く。


中に綿が詰まった拳大の皮の球だ。ただし、枝分かれする管が何本も取り付けられている。

それが、さまざまな大きさで机に並べられていた。


「じゃあ、冬の準備をしていこうか」

お読みいただききありがとうございます。


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