表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーダーメイド 〜魔道具の祖の研究日誌〜  作者: 中安・ユージーン・風真
第二章 Order:至宝を守る痣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/105

ディアナは八歳

「──いや〜、あなたってもしかして〜」


研究室へ通されたディアナが、大量の死因で埋め尽くされた紙を見て呟く。


「とんでもないお馬鹿さんだったのでは〜?」

「何でさ。死を防ぐためには、死を知らないといけないでしょ?」

「葉っぱだけ見て〜、木を知った気になる昔話を思い出しますね〜」

「『木を見て森を見ず』──本質が見えてないって言いたいの?」


この言葉にマエリスはムッとするが、ディアナは呆れた目で見下ろす。


「当たり前じゃないですか〜。これで死を網羅できている保証がどこにあるんですか〜?」

「そ、それは、まあ……」

「命の死を考えるなら〜、まずは『肉体』と『精神』と『魂魄』に分けるんですよ〜。それで『肉体』なら病気かそうでないかで分けるんです〜。

 肉体の病気でない死は〜、極論治癒魔法のゴリ押しだけで防げます〜」


リフィから羽根ペンをもらい、まるで樹形図を描くように死を分類し始めたディアナを見て、マエリスはキョトンとし、呟いた。


「ディアナって、結構理系っぽい思考──研究者向きの思考してるんだね」


ディアナも呟きで返す。


「意味なく死にたくないだけです〜。充実して生きるために〜、意味あって死ぬために〜、あれこれ考えてたらこうなっただけです〜」


そして溜息を吐いて、マエリスの目を覗くディアナ。


「正直私〜、あなたのこと嫌いですね〜。マノン様の近くにいてほしくないです〜」

「それはボクも、君に対して思ってることだよ。嫌いまでは行かないけど」

「年下のくせに生意気ですね〜」

「え、ディアナっていくつなの?」

「あなたの三つ上ですよ〜」

「結構上だね!?」


マエリスは自分のことは棚に上げてディアナの身長を見る。


「これから伸びますよ〜!」

「あ、うん、ごめん……話を戻すけど、それじゃあ内因死──病死を防ぐにはどうすればいい?」

「時間でも戻せばいいんじゃないですか〜?」

「急に適当になったね!?」

「治癒できないものには興味ないです〜」

「えぇ……」


マエリスは戸惑いながら、そちらは後回しにする。


「それじゃあ『精神』や『魂魄』の死は? 発狂死とか滅死とか。過去の聖女は魂魄の修復ができたとか言ってたよね」

「ん〜、私も詳しく知ってるわけじゃないです〜。聖女にできることって〜、世代ごとに結構違うんですよね〜。

 戦場を丸ごと癒した聖女セシリアとか〜、死後五分以内なら蘇生ができた聖女マリアとか〜、それこそ魂魄の修復を成し遂げだ聖女アグネスとか〜。先代の聖女テレサは変わり種で〜、治癒よりも結界が得意でしたしね〜。

 でも〜、どうすればそれができるかは分かりませんし〜、残っている記録も日記みたいなものですから〜」

「代々聖女にのみ伝わる秘伝書……みたいなのは?」

「あるなら見てみたいです〜」


期待はしませんが〜、とディアナは話を戻す。


「『精神』や『魂魄』のダメージは予防が一般的ですよ〜。抵抗力を上げるんです〜。この辺りは『肉体』ほど死因の種類は多くないですから〜、虱潰しも現実的な範囲ですね〜」

「そっかぁ……それって、ボクのアプローチが間違ってるって言いたいの?」

「最初から言ってますよ〜★」


ディアナはマエリスの短慮を嘲笑う。


「肉体的な死のバリエーションは単純な死因だけの話じゃないんですよ〜。死者の肉体的な素因に〜、死の状況に〜、加害者の正体もですか〜。

 想像もしたくないですね〜。全て網羅できるのならそれは神の領域です〜」

「だからって、最初から諦めるのは違うでしょ?」

「そう思うのは勝手ですけど〜。

 今日は初日だから付き合いますけど〜、次からは私には意見を聞くだけにしてください〜。こんなの時間がいくらあっても終わりませ〜ん」


うんざりしたようにディアナが言う。


「今日一日で〜、あなたがそれを理解してくれたらいいんですけど〜」


その憂鬱を、昼飯前にはマエリスも理解した。


これなら、というマエリスのアイデアを、片っ端からバッサリ切っていくディアナ。命に詳しい彼女は、背反の概念である死にも詳しかった。


尽くの手を潰されて、マエリスは食卓で項垂れる。


全ての死を防ぐ盾──その最大のハードルは、やはり死の多様さにあった。


現状の方法では、一つのパターンをある程度防ぐのみ。

なので『毒殺を防ぐだけの魔道具』なら、マエリスは今の段階で道筋を描けていた。


しかしそこから一般化すると──無限の魔力で、総当たりで対処する程度の案しか、机上の空論でさえも浮かばなかった。


それはディアナに「神話ですね〜★」と鼻で笑われる程度には荒唐無稽だった。


「いっそ、蘇生ができたらいいんだけどなぁ」

「ただの蘇生でも意味ないですけどね〜。体も治さないと〜」

「そっかー……?」


何かが引っかかり、マエリスは昼食を口に運ぶ手を止める。


「蘇生を前提にすれば……道筋は──」

「どうかしたんです〜?」

「ディアナ! この方法ならできるかも!」


そして次に放たれるマエリスの言葉に、ディアナは耳と正気を疑った。


「全ての死を防ぐなら、死んでもらえばいいんだよ!」

お読みいただききありがとうございます。


ブックマーク・誤字報告、いつもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ