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オーダーメイド 〜魔道具の祖の研究日誌〜  作者: 中安・ユージーン・風真
第二章 Order:至宝を守る痣

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助っ人治癒師は……?

「参ったな……」


マエリスたちが帝都を去る少し前の屋敷で、ミシェルは一人悩んでいた。


「『吹雪の海』の寒波の影響が、ここまで……」


スタンピードのあったマギカ辺境伯領。通常なら戦後復興のために教会から治癒師が派遣されるのだが、今回はその数が少なかった。


それはペーラ・ウルト大陸の南部に広がる『吹雪の海』から来る寒波が原因で、毎年、ペーラ・ウルト大陸の東部から南部にかけて異常な積雪を引き起こしていた。


この時期は、そっちにも治癒師の派遣が必要であり──


「ああそうか、担当官が変わったのだったか。前任は横領をするが、長く務めていた分まだマシだったな……」


今年は例年以上の被害であることに加えて、担当の変更が重なり、今の教会は大分混乱しているようだ。


「依頼できるのは彼女だけ、か」


ミシェルは手元の羊皮紙を一瞥する。

能力はある、十分なほどに。意欲も問題はない。

しかし彼女も彼女で、火種となることが明らかなのだが、背に腹は代えられなかった。




帝都を出発して五日後。マギカ辺境伯領。


「「「お誕生日、おめでとうございます!」」」

「ありがとう。やっとお祝いされた感じがするよ」


リラックスした表情で、マエリスは感謝を述べる。


「おねえちゃ、プレゼント!」

「ありがとうマノン──これは、クッション?」


使用人や家族たちの代表として、マノンがマエリスに大きな包みを贈る。

中にあったのは、縦長の大きめなクッションだった。


「私も実験時に覚えがありますが、その車椅子は座面も背もたれも硬いですからね。是非使ってください」

「寝るときはぁ、抱き枕としても使えますよぉ!」

「ありがとう──けど、燃えないかな。大丈夫かな」


マエリスは、自身の車椅子を魔法陣で呼び出すときに、最後に蒼炎で一炙りすることを思い出す。

巻き込んで燃やしてしまったら──その想像をしてトーンダウン。


しかし、使用人たちは待ってましたと言わんばかりの笑顔。


「大丈夫です。そのクッションは熱や炎に強い『溶岩蜥蜴』の皮を使っています。魔獣素材なので丈夫でもありますよ」

「中の綿も『水面綿』っていう魔草なのでぇ、そっちも熱には強いですぅ」

「へぇ! 面白いね。すっごく嬉しいよ!」

「おねえちゃ、ぷにふわ!」

「そっか、ぷにふわか」


クッションを手で挟んで遊んでいたマノンが目を輝かせた。


マエリスはさっそく、車椅子にクッションを敷く。圧迫されていた腿に血が通う感覚──クッションがマエリスのお気に入りになった瞬間だった。




さて、本家での誕生日会も終わり、いよいよマエリスは魔法陣の吟味に向かう。

シャルボートの約束した支援も、もうしばらく時間はかかるだろうから、まずは手持ちを調べなければ。


「具体的には『生命』属性と『精神』属性をね」


マエリスはそう独り言ちたが、腑に落ちない点がある。


マルセラモデルを知ったからだろうか。

「生命=肉体+精神+魂魄」という図式を知ったからこそ、「水属性と風属性からなる上位属性」を「精神」属性と呼ぶことに違和感を感じていた。


(そもそも、『生命』と『精神』は仮称みたいなものだし……性質を調べたらもう一度名前を考えよう)


そう意気込んだマエリスだったが、ドアのノックに意識を現実へ戻した。


「どうしたの?」

「マエリス様、旦那様が呼ばれた治癒師の方が到着されました」

「あれ、早いね。馬を飛ばしてきたのかな……」


ミシェルがあれだけ貴重と言っていたのだから、てっきり早くとも一ヶ月は掛かると思っていたマエリス。


さっそくマエリスは、これから長く世話になる治癒師を出迎えに向かった。




「またお会いできましたね〜♪」

「どうして……どうして……」


マエリスは玄関で項垂れていた。

よりにもよって、何故「聖女」が──ディアナが、ここにいるのか。


何かの間違いであってくれ、というマエリスの祈りは、しかし打ち砕かれる。


「ご希望通り〜、上級以上の治癒が使えて〜、フリーな治癒師として〜、『聖女』ディアナ・サクリムが来ました〜♡ 一年間お世話になりま〜す♡」


「聖女?」と使用人たちはザワつく。あの時、受付をしていた執事も名前と髪色で判別できたのだ、彼女が本物だと知られるのもすぐだろう。


「マエリスさんも〜、妹さん共々、仲良くしましょ〜♪」


マエリスは心中でミシェルを呪った。

お読みいただききありがとうございます。


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