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オーダーメイド 〜魔道具の祖の研究日誌〜  作者: 中安・ユージーン・風真
第二章 Order:至宝を守る痣

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飛び入りは一件で十分 前編

「この度は、デビュタント直後というのに私の誕生日会に参列していただいたこと、誠に感謝申し上げます」


マエリスがジュースを片手にスピーチをする。


「デビュタントで知己を得た方々、魔法学会で知己を得た方々、果ては聖女に皇室の方々にも来ていただいて大変恐縮ですが、これも良い機会だと諦めて、開き直っていきたいと思います」


大人組から苦笑が漏れる。


「では僭越ながら、私が乾杯の音頭を取らせてもらいます──乾杯!」

「「「乾杯!」」」




さて、この場のホストであるマエリスは、各テーブルに挨拶周りをしなければならない。

ミシェルとシャーロットは大人の話し合いがありそうなので、マエリスはリフィを伴って最初のテーブルを訪れた。


「──つまり、この秘石、いや凸レンズか。凸レンズは光を集める効果があるんだ」

「なるほど……それ、値段はいかほどになります?」

「値段? 売り物じゃないからな……」

「じゃあ原価はいかほどで?」

「原価? これは『粉々砂漠』の砂から作ってるから──」

「それ無料(タダ)ってことやんな!? 最強の商材を見つけてもうたか!?」

「ボクの誕生日会で何をやってるのさ」

「うお冷たっ!」


大興奮のアヌの首筋に、マエリスがジュースのグラスを当てる。


「マエリス嬢。改めて誕生日おめでとう」

「ありがとうリケ」

「邪魔せんといてぇなマエリスはん! うちは今重大な交渉に臨んでるんや!」

「主役への挨拶を忘れるな」


マエリスは呆れたように言う。一方、リケは申し訳なさそうに目尻を下げた。


「済まない。レンズの販売をしていないのは、これに『呪い』があるからなんだ。魔力が弱い生物が触れると、身体が砂になる」

「いや怖っ!? いやでも……マエリスはんならどうにか──」

「うーん、調べてみなきゃ分からないけど、『呪い』は扱ったことがないなぁ」

「うちが八割、マエリスはんが二割でええから!」

「分け前の話じゃないんだよ。というか折半じゃないんだ」


興味深い内容ではある。マエリスもレンズの解析はしたい。非常にしたい。


「ボクが触れても、大丈夫かな?」

「分からない。ラホープ公爵家には代々伝わる技術があるから、僕は問題ないけれど、嫁いできた母上は触らないんだ。だから他家の人間でも使っていいのか、そもそも僕が伝えていいのかは判断が付かない。父上に聞いてこようか?」

「……さすがに時期じゃないかなぁ」


悩みに悩んだ末、マエリスは遠慮した。




次にマエリスが訪れたテーブルは、混沌としていた。


「フィエット、これも食ってみろ! やっぱ北の辺境領は山菜が旨いな!」

「お父様! せめて手掴みは止めてくださいまし!」

「ジニー! せっかく高位の子たちもいるのですから、挨拶なさい! デビュタントもサボったのでしょう!?」

「……面倒臭いなぁ……あ、マエリス」


ジニーがマエリスに気づき、体を起こす。


「魔法のこと、教えてよ」

「え?」

「まだ隠してることがあるでしょ……例えば、その車椅子とか」


ジニーが小声で、マエリスに耳打ちする。


「学会でも言ったけど、これは『魔の森』の遺跡で見つけた遺物だよ。ボクも原理は分かんない」

「嘘つき」


ジニーは断言し、車椅子をじっと見る。


「……鉱属性、風属性、あと火属性? 君の魔力で動いてるのは分かるけど、どうなってるのかが分からない」

「……」

「だから、教えてほしい」

「……仮にボクが知ってたとしても、君は何で知りたいの?」


今度はマエリスが、ジニーの顔を覗き込む。

するとジニーは、簡潔に答えた。


「別に、ただの興味」

「興味だけ?」

「僕は、魔法の天才らしいから。魔法で知らないことがあると、親が面倒臭い」

「お、おぉ……」


まるで前世の、教育ママの子どものような悩みに、マエリスは深く頷く。


「……それなら、ボクと文通でもする?」

「え? 面倒臭い」

「一通だけでいいよ。ボクと文通したって事実があれば、分からないことがあっても、『ボクか賢者に聞いてる』って言い訳が使えるよ」

「……なるほど」


ジニーが考え込む。


「まあ、その気になったら」

「うん。その気になったら送ってね」

「私も、文通がしたいですわ!」

「うわ、びっくりした!?」


突然、横からフィエットが声をかけてきてマエリスは跳び上がった。


「えっと、フィエット様。当主様はよろしいので?」

「そこのジニーさんにしていたような口調でいいですわ。

 お父様は……言っても聞かないので通りがかりのメイドに頼みましたわ。どうせ肉を食べさせれば静かですから」


それでいいのか侯爵家、と思うマエリスだが、余計なことは言わない。


「それで、その……私と文通は、お嫌ですの……?」

「ボクは、いいですけど……むしろフィエットはいいの? デビュタントではほら、色々あったけど」

「私も反省しましたわ。マエリスさんのことをみくびっていたこと、勝手な想像でご迷惑をお掛けしたこと──本当に、お恥ずかしいです」


縮こまるフィエットの姿に、マエリスは苦笑する。

その姿が、悪戯がバレて半泣きになるマノンの姿に重なった。


「まあ……それじゃあ、しましょうか。文通」

「本当ですの!? 嘘ではありませんわよね!? 悪戯ではないですわよね!?」

「疑り深いなぁ……」


こうして、妙な約束が交わされた。




そして次のテーブルは、別の意味で混沌としていた。近寄りたくないという意味では、群を抜いているが。


「えぇ〜? 私はただお話がしたいだけですよ〜?」

「絶対に、マノン様には近づけさせませぇん!」

お読みいただききありがとうございます。


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