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オーダーメイド 〜魔道具の祖の研究日誌〜  作者: 中安・ユージーン・風真
第二章 Order:至宝を守る痣

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異端なる魔法士 前編

「続きまして、マギカ辺境伯家長女、マエリス・マギカ様。発表テーマは『上位属性の再定義と複合魔法の条件』です」


司会者の言葉に、最前列の老人たちから嘲笑が漏れる。


「あの発表の後とは、相手はさぞ緊張していることでしょうな」

「失敗しても大目に見てやりましょうぞ。まあ所詮女ですから、目も当てられないかもしれませんがね」

「あの賢者も気の毒なことだ。魔法の使えない欠陥品か、『紅眼』の障害者しか後継に持てなかったのだからな」

「生意気なことをした罰が下ったのですよ。いい気味です」

「この場に相応しくない貴族どもを今日集めたのもアレだと聞きましたよ。権威ある学会を社交場と勘違いしておられる」


彼らの頭の中には、これから現れる登壇者にどれだけの理不尽を叩きつけてやろうかということしかなかった。

──いや、これは教育的指導だ、愛の鞭だ、若者が間違った方向へ行かないために必要なことだと、彼らは本気で思っていた。


舞台横から、銀白色の車椅子と少女が現れる。観客席の一部から「車椅子?」という困惑の声が上がった。


「マギカ辺境伯家の長女、マエリス・マギカです。今回は私の研究で明らかになった上位属性の性質と、複合魔法についてお伝えできればと思います」

「その前に少しいいかね?」


マエリスが始めの挨拶をしたところで、最前列の老人から声が上がる。


「『上位属性』と『複合魔法』──全く異なるテーマを並べているようだが、発表のまとまりは大丈夫かな? 知らないかもしれないが、発表には時間が決められているのだよ」


老人はニヤニヤと笑いながら言う。時間を気にしながら、老人のこの質問で時間は浪費されている。嫌がらせだった。


対して、マエリスは予想していたかのように冷ややかに答える。


「ご懸念は理解します。ですので、ご多忙の皆さまのために抄録部分を記載したポスターを用意しております。老眼で前の方に座っている方にも見やすい大きさですので、どうぞご安心を」


そう言うと、スタッフが巨大な羊皮紙の巻物を運んできて、天井に吊るす。

抄録──論文の内容を簡単にまとめた章が記載された紙だ。


パワポも、印刷もないこの時代に、マエリスが分かりやすい発表を考えた結果だった。昨日丸一日を使って作成した力作である。


「ほ、ほう、そうですか。ご配慮感謝します」


老眼、と言われた(と思った)質問者が、目尻を引きつらせながらも着席する。

それを見て、マエリスは発表を再開した。


「上位属性の習得方法は、これまで多くの仮説が上げられましたが、確としたものは判明しておりませんでした。ですが、この度の研究で、上位属性の習得方法について確定(・・)できたことを、ここに報告します」


その言葉に。

場のざわめきは更に大きくなった。


「では時間も押していますので、さっそくその内容について説明します。簡潔に申しますと、上位属性は二つの基本属性の概念の組み合わせです」


火属性(エネルギー)』+『水属性()』=『光属性』

水属性(水分子)』+『土属性(固体)』=『氷属性』

土属性(金属分子)』+『風属性(電子配列)』=『鉱属性』

風属性(電子)』+『火属性(エネルギー)』=『雷属性』


「さて、言葉だけで言うのは簡単ですので、前の発表に習ってデモンストレーションといきます。まずは光属性からですね」


マエリスの言葉に、最前列の老人が鼻で笑う。


「どうやってだ? お前のような魔法の使えない『欠陥品』に、上位魔法の再現などできるわけがないだろう!」


その罵倒に、マエリスは涼しい顔で頷いた。


「ええ、おっしゃる通り。私のようなか弱い令嬢には荷が重い。ですから──便利な道具に頼らせていただきましょう」


そう言って、マエリスは膝の上に置いていた布を取り払う。


現れたのは、奇妙な幾何学模様が刻まれた黒い立方体だった。

中には複雑怪奇な魔法陣が内蔵されているが、外側からはただの黒い箱にしか見えない。


「これは……『魔の森』にある遺跡から発掘された『遺物』の一つです。魔力を流すだけで特定の現象を固定化する機能がありまして」


もちろん真っ赤な嘘だが、マエリスは悪びれもせずに魔力を流す。


「起動」


直後、箱の上空──マエリスの左右に、二つの球体が浮かび上がる。

右側には荒れて波打つ水の球。左側には何もないが、よく見れば景色が揺らめいているように見える、熱の塊。


「右手に火属性、左手に水属性を用意しました。ただ普通の魔法ではなく、火属性は『熱』の要素を強くし、水属性は『波』の要素を強く調整しております。

 火属性のこれは陽炎という現象でして、砂漠に詳しいラホープ公爵家の方は、よく知っているかと思います」


そしてマエリスは、箱への魔力供給パターンを変化させる。

二つの魔法が、箱の制御によって強制的に混ぜ合わされる。


「融合」


瞬間。

荒れ狂う水が、激しく明滅する光へと変化した。

ざわめきは、いよいよピークに達した。


「な、なんだあの箱は!?」

「詠唱もなしに、相反する属性を混ぜ合わせたのか!?」

「皆さんは、水属性が得意な方が光属性に目覚めたという話を聞いたことはないでしょうか? その理由にこの原理があると考えます」


周囲の動揺をよそに、マエリスは同じように他三つの上位属性を出現させる。

全て、その黒い箱の上で、システマチックに生成されていく。


「この方法で、我が父ミシェル・マギカ、我が母シャーロット・マギカも、習得していなかった上位属性を習得できたことを報告します」


この報告に、観客席はもはやパニックだった。

お読みいただききありがとうございます。


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