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オーダーメイド 〜魔道具の祖の研究日誌〜  作者: 中安・ユージーン・風真
第一章 Order:精細を描く腕

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総力戦

「ルピ! ロルカさん!」


砂煙が晴れると、そこには心強い援軍の姿があった。


「美味しいところを持っていくとは……この駄犬、最初から狙っていましたね?」

「そ、そんなこと考えてないですぅ! 必死に走ってきたんですからぁ!」

「ふぉっふぉっ。奥様も、大事ないようで老骨も一安心ですぞ」

「ロルカ……お帰りなさい」


双子と見紛う祖母と孫。

二人はいつものメイド服ではなく、動きやすさを重視した民族衣装のような装束を纏っていた。

その服も肌も泥と血で汚れており、ここまで壮絶な戦いを潜り抜けてきたことが分かる。


「旧交を温めるのもいいがの、敵さんが待ってはくれなさそうじゃぞ」

『ガアァァァァァッ!』


粉砕された上半身の黒い宝石が、ジャラジャラと逆再生のように組み上がり、狼が復活の咆哮を上げる。


むろん、皆も油断はしていない。

一瞬の安堵を切り捨て、速やかに戦闘態勢へと移行する。


「ロルカ、見えてる(・・・・)?」

「『魔王の影』じゃからなぁ。因果が乱れておるが……ま、寸先程度なら」

「ならあなたはそのままマエリスの『目』になってちょうだい」

「承知。それが最善じゃな」


シャーロットとロルカは短い言葉で意思疎通を済ませる。


(ロルカの「目」──文脈的に未来視みたいなものかな? だとしたら、すごく助かる)


一方で、リフィが愛用のナイフを構え直した。


「ルピ。私とあなたで、あれの動きを固定します。現状、有効打はお嬢様の攻撃しかありません」

「ふぇぇ、あれ中身がドロドロで気持ち悪いんですよぉ……殺意しか感じませんしぃ」

「つべこべ言わないでください」

「ひぃん、もう私ヘトヘトなんですよぉ!?」


文句を垂れつつも、ルピがファイティングポーズをとる。

彼女に派手な攻撃力はないが、獣人特有の身軽さと、特殊な「目」がある。囮としては適任だ。


役者は揃った。


「再生も無限ではないはずじゃ。壊し続ければいずれ尽きるじゃろう」


ロルカがマエリスの背後から囁く。


「お嬢様、わしがタイミングを指示します。迷わず引き金を」

「分かった!」


(再生にはエネルギーを使うはず。なら、ガス欠になるまで叩き潰す!)


「行きますッ!!」


リフィの号令と共に、戦いが再開された。


ルピが持ち前の俊敏さで狼の足元を駆け回り、リフィが死角から関節を狙う。

狼が鬱陶しそうにルピを踏み潰そうとするが、ルピは殺気が膨れ上がる瞬間を読んで、紙一重で回避する。


「あぶなっ! わ、私ばっかり狙わないでくださいよぉ!」

「隙あり!」


狼の意識が逸れた瞬間、地面が底なしの流砂のように変化し、その足を絡め取った。シャーロットの拘束魔法だ。


『グゥッ……!?』


動きが止まる。

その瞬間、ロルカの声がマエリスの耳元で響く。


「──今じゃ!」

「らぁぁぁぁっ!!」


マエリスはアクセルを踏み込む。

ホバークラフトが滑るように接近し、シリンダーアームを突き出す。

しかしそれは、すんでのところで流砂から脱出され、回避された。


「狙いを定めるのが少し遅いのう!」

「今度こそ!」

『シイィィィ──ネエェェェ──ッ!』


振り下ろされた爪を腕で防ぐ。火花が散る。

距離を取るために後退するマエリスと、それを追う狼。その間にルピとリフィが割り込む。


「うぅぅぅ重いですぅぅぅ!」

「本当に、嫌になりますね……ッ!」

『ガアァァァァァ!』


狼は学習している。この二人が止めにくれば、足元が柔らかくなることを。

故に狼は跳び上がってマエリスを追う──が。


ズボッ


『!?』

「発動のタイミングはズラせるのよ!」


狼が着地しようとした瞬間の地面が流砂となり、両足を飲み込んだ。

シャーロットの魔法だ。


「今じゃ!」

「はい!」


完全に無防備になった胴体。

その隙を逃さず、マエリスはシリンダーを起動した。


ガゴォッ!!


三度目となる粉砕音。

チタンの拳が、狼の腹部を深々と貫き、黒い宝石の鎧を爆散させた。


「やった!」

「いかん! マエリス様──」

「え──」


確かな手応え。当たったことに喜んだその一瞬、ロルカの切迫した声が重なった。


頭もない、胸も腹もない、爪もない。

上半身のほとんどを失った狼。

だが──「脚」は残っていた。


生物なら即死の傷。しかしコイツは、ただの影。

脳など必要ないと言わんばかりに、狼の残った下半身がバネのようにしなり──


ドォォォォォォォンッ!!


「がはっ……!?」


ホバークラフトの下部、マエリスの足元に強烈な蹴りが直撃した。

トラックに側面衝突されたような衝撃。

数トンの機体が、マエリスを乗せたままボールのように軽々と空へ蹴り飛ばされる。


「きゃあぁぁぁぁっ!?」

「マエリスッ!!」

「お嬢様!!」


視界がぐるぐると回転する。

強烈なGで意識が飛びそうになりながら、マエリスは見た。


遙か眼下。

頭のない狼の残骸が、恐ろしい速度で再生しながら──宙を舞うマエリスの落下地点へ向かって、一直線に駆け出しているのを。


(嘘……狙いは、ボクだけ……!?)


「逃げ、られ──」

『コォロォシィテェヤァルゥゥゥゥゥッ!』


地面に叩きつけられる衝撃が、マエリスの思考を強制的にシャットダウンさせた。

お読みいただききありがとうございます。


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