幕間:目に見えるだけが魔法ではない
それは前世での、とある夢の話だ。
「いい? 言霊による魔法ならともかく、魔法陣で起動する魔法は、現代の機器ですら観測できない『何か』が起きることだってあるのよ」
その日の彼女は、いつもと違って饒舌だった。
ちょうどその頃は仕事を辞めて新しい仕事を探していた時期であり、ある意味で自由な時間が増えたことで、研究が捗っていた頃でもあった。
「たとえば風は、物理的には気圧変化による空気の移動現象だけれど、魔法的にはそこに『速度』とか『自由』とかって概念が組み込まれることがあるわ。空気から派生して『空』に干渉することもあれば、空中にあるものって共通点から『雷』に変化することだってあるの。まあ雷はもう少し他の条件も必要だけれど」
「けっこう連想ゲームに近い感じ?」
「そうね。特に比喩表現、慣用句として使われる概念までは含まれていると考えてもいいかもしれないわね」
そのときの、まだマエリスになる前の彼は、彼女のその様子を見て、今日はそういう話をしたい気分なのだろう、としか考えなかった。
さて、では火の話をしよう。
彼が研究し、部屋一面に魔法陣を吊るしていた、あの火属性の話だ。
彼女の言葉に沿うならば、火にも燃焼という現象以上の「何か」が、魔法的に付与されていることになる。
たとえば、このような慣用句、このような比喩表現が考えられるのではないだろうか。
『プロメテウスの火』、などが。
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