表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーダーメイド 〜魔道具の祖の研究日誌〜  作者: 中安・ユージーン・風真
第三章 Order:筋書を外す鳥籠

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/122

戦況確認

「自決致します」

「待って、リフィ」

「失礼、間違えました──あの女を殺して私も死にます」

「待って、リフィ」


タリアとの出会いから一晩。

朝、タリアの胸の中で目覚めたマエリスは、既に起きていたリフィが修羅場を引き起こしており、何とかディアナと二人がかりで宥めること数十分。


その帰り道での、発言だった。


「ですがマエリスお嬢様。お嬢様の貞操を守れなかったメイドに価値はありません。貴族社会的に」

「貞操言うな! そこまで行ってない! だからそれは隠すんだってば。貴族社会的に」

「ま〜、知ってるのは私たちだけですから〜、隠そうと思えば隠せますね〜、貴族社会的に〜☆」


陰鬱な顔のリフィとは対照的に、ディアナの表情はむしろ明るかった。


「……ディアナ、楽しそうだね?」

「ようやくマエリスさんの弱味を握れると思えば〜、今回の苦労もお釣りが来ますよ〜!」

「この腹黒聖女がぁ」

「やはり、あの女を殺して私も死にます」

「リフィも落ち着こう!?」


混沌とした帰り道だった。




冒険者ギルド、マギカ領支部。


その支部長室のソファに、リフィに抱え上げられて腰を下ろしたマエリスを見て、ブレイクは眉をひそめた。


「よう。無事に帰ってきたのは何よりだが……お前さん車椅子はどうした?」

「……ちょっと、色々あってね。今は足がないんだ」


不機嫌そうに、マエリスは自分の動かない両足を叩く。

自分の意志で移動できないというストレスが、彼女の顔に濃い隈を作っていた。


「そんなことより、報告してもいい?」

「お、おう、頼むわ」


そんな苛立ちがブレイクにも伝わったか、彼はそれ以上追及はせずに対面のソファに座った。


「──以上が、今回の調査結果だね」

「なるほどなぁ……」


予定通り、マエリスのファーストキスが奪われたこと以外を報告したマエリスは、そこから更に自分の考えを述べる。


「それで、ここからはボクの予想だけど、『魔封じの領域』の原因はタリアだね。タリアが魔力を無差別に吸収するから、あの場では魔法が使えないんだと思う」

「おいちょっと待て。だとすりゃ、そのボスドルム家の生き残りは『魔封じの領域』の中でも普通に魔法が使えることになるぞ」

「使ってるでしょ。茨を」


この世界で起きる現象で、前世では起きない現象には全て魔法が関わっている、と大雑把に考えると。


タニアの特殊体質は『体液が睡眠薬』になることで、『茨を操作する能力』ではない。

つまり、茨は魔法で動かされていたことになる。


(……いや、睡眠薬というよりは麻酔薬だよね。意識は残して体の自由を奪えるんだから)


この世界に外科手術はないため、麻酔という概念もない。よって、マエリスは細かい修正はしなかった。


「タリアは樹属性の使い手、ってことだね」

「反則だろ……」


樹属性──それは聖属性や闇属性に並ぶ希少属性の一つであり、マエリスが未だに解析できていない属性の一つだ。


知名度も高くないため、情報が少ない属性でもあるが、希少属性は全て厄介な性質を持つため、樹属性もその例に漏れないだろう。


「まあそんな細かいことはいいんだよ」

「細かくねえだろ。仮想敵の情報だぞ」

「いいんだよ──それよりも大事なことがあるんだから」

「何だよ、嬢ちゃんがそう勿体ぶると怖ぇんだが」


ブレイクがゴクリと唾を飲む。それを無視して、マエリスは続けた。


「結論から言うと、タリアの支配する『ボスドルム旧領』と『魔の森』はずっと前から戦争状態にあると思う」

「……は?」

「お嬢様、それはどういう……?」

「順を追って説明するよ。何度も言うけど、あくまでボクの予想だからね」


一度、マエリスはブレイクの目を見てから推測を語る。


「『魔封じの領域』はタリアが本能的に魔力を必要として、吸収しているが故に発生する領域だった。

 つまり、タリアは魔力を吸収する──魔力を奪うんだよ」

「そうだな」

「でもダンジョンも魔力で動く生物だから、魔力を奪う寄生虫は許せないはず。見た所共生関係ではなさそうだったし」

「まあ、そうだろうな」

「昨年よりも前のスタンピードが起きたのがいつかは分からないけど、昨年のスタンピードの魔物が少なかったのは『ボスドルム旧領』に魔物が押し寄せてたからじゃないかな」

「……なるほど」


ブレイクが真剣な目で顎を搔く。


「だが昨年よりも前のスタンピードは大陸歴657年。パターン『強欲』、グレードC──その時は魔物の数に異常はなく、大きな被害が出たぞ」

「減った上でそれだったか、その時はまだ無視できる範囲だったか、じゃないかな」

「どこまでも推測だなぁ……続きは?」

「うん。しばらくは『ボスドルム旧領』と『魔の森』の勢力は拮抗していたんだと思う。

 だけど昨年のスタンピードで、勢力が逆転した。『魔王の影』をタリアに奪われたんだ」

「根拠は何だ? あの『魔王の影』が『ボスドルム旧領』由来でない理由は?」

「力付くで押さえつけられてること、かな」


タリアのペットとなっていた『魔王の影』だが、あの暴れ様は『支配』というより『捕獲』な気がする。タリアの意識が浮上したのは、『魔王の影』から魔力を奪ったからだろうし。

それに最近まで眠っていたタリアに『魔王の影』を作ることができるかと考えると……タリアの言を信じるなら、だが。


「それで、『魔の森』の魔力を今まさにタリアに吸い尽くされそうになって、魔力欠乏状態ってことだと思う」

「……嬢ちゃんの説明は筋が通ってて心臓に悪いんだよなぁ……」


遠い目をして、ブレイクが呟いた。


「……近い内に、また『ボスドルム旧領』に行くんだよな?」

「そうだね。色々調べたいし」

「俺も同行する。日付が決まったら教えろ」

「え、ボクとしては助かるけど……ギルドマスターって忙しいんじゃないの?」

「少しくらい平気だろ。それに嬢ちゃんの推測が正しけりゃ、Sランクでも荷が重いかもしれねえんだ。嬢ちゃんのマスクがあれば人は増やせる──人手は多い方がいい」

「わかったよ。よろしくね、ブレイクさん」


話はまとまり、マエリスたちはギルドを退出する。

外へ出た時、ディアナが話しかけてきた。


「──マエリスさん、ちょっといいですか〜?」

「うん? どうしたのディアナ?」

「二人きりで話したいことがあるんですよ〜。リフィさん、マエリスさんは私が抱えて行きますので〜、いいですか〜?」

「お嬢様?」

「ボクは大丈夫。そしたらリフィには……羊皮紙を買ってきてもらおうかな。大量にね」

「畏まりました」




「それで、話って?」


屋敷の一室。

言われた通り、ディアナと二人きりの場を用意したマエリスは話を促す。


「単刀直入に言うと〜、マノン様と仲直りして欲しいんです〜」

「仲直り? ボクもできるならしたいよ、切実に」


毎晩冷える胸元を思い涙を堪えながらマエリスは言う。


「でもマノンが視線すら合わせてくれないんだよ。声をかけても無視されてさ……うぅ、思い出したら動悸が……」

「私のプレゼントを〜、目の前で叩き割ったそうですね〜★」

「ごめんて。でもやった事に後悔はしてないんだよ。そこは譲れないんだ──だから仲直りができないんだけどね……」

「なので〜、私が間を取り持ちます〜」


その提案に、マエリスは怪訝な目をした。


「……今度は何を企んでるの?」

「酷くないですか〜?」

「だってさ、ディアナの目的って、最終的にはマノンと敵対して超えられることだよね。前々から、それにしては大人しいなって思ってたんだけど」

「甘いですね〜、マエリスさんは〜。タイミングというものが分かっていませんよ〜♪」


したり顔をする狂人に、マエリスはイラッとする。


「ここぞというクライマックスで〜、仲間だと思っていた聖女が裏切るのがいいんじゃないですか〜♪ こんな日常でやることじゃないですよ〜。今は信頼稼ぎの段階です〜」

「あ、そう。その一環で仲直り?」

「ポイント高いと思いませんか〜♪」

「高いといいなぁ」


(マノンも実は仲直りしたがっている、というのなら泣いて喜ぶのに)


マエリスの中で天秤は傾く。そして僅かな意地で、仕方なくという空気を作る。


「……いいよ。君が勇者に大幅な点数を稼ぐ機会をあげるよ」

「わ〜ありがとうございます〜♡」


わざとらしく感激するディアナの計算高さに、マエリスは溜息を吐く。


「……まあ最近は〜、マエリスさんが『勇者』でもいいかな〜って思いもしますけどね〜」

「何か言った? ディアナ」

「気のせいじゃないですか〜?」

お読みいただききありがとうございます。


ブックマーク・誤字報告、いつもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ