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オーダーメイド 〜魔道具の祖の研究日誌〜  作者: 中安・ユージーン・風真
第三章 Order:筋書を外す鳥籠

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上位存在?

突如、目的の廃墟の壁が吹き飛び、土煙が上がる。

同時に聞こえてくる、聞き慣れてしまった唸り声。


『ォォォォ──』

「ッ、二人とも、気をつけて!」

「来ます!」

「逃げますよ〜!」


土煙を突き破り、姿を現した黒い宝石の狼──『魔王の影』。


(遭遇する可能性は高かったけど、よりにもよって『炎銀の傀儡塊(メタフラマタ)』が使えない時に……!)


リフィに抱えられながら、マエリスは迫り来る狼を見据える。


茨を薙ぎ倒し、踏み潰し、殺意に塗れた瞳でこちらを睨む『魔王の影』だが、その挙動は記憶の中よりもぎこちない。

前回のダメージの残りか、それとも『魔封じの領域』の影響か。


それでも、リフィ達よりも足は速い。


『コオォロオォシイィテエェヤアァルウゥッ!』

「攻撃、来るよ! 避けて!」


マエリスの合図に二人が横に逃げるのと、狼の爪が地面を裂いたのはほぼ同時だった。千切られたマエリスの髪が宙を舞う。額が熱い。


「次! 上に跳んで!」

『グルァァァッ!』


振るわれる横薙ぎの爪。二人はジャンプして、無事に避けられた──


グラッ


「きゃあ!?」

「ディアナ!?」

「フォローに入ります! お嬢様──」

「いいからボクは捨てて!」

『シイィィィネエェェェッ!』


割れて浮いた石畳に足を取られて転んだディアナ目掛けて、狼は爪を振るう。

それをリフィがナイフで強引に受け流したが、刃にはヒビが走った。


「リフィ!」

「私がしばらく相手します! ディアナ様はお嬢様を領域の外に!」

「マエリスさんの周りはいっつもこうですよね〜★」


瞬間、ディアナの体から膨大な魔力が膨れ上がり、しかし一瞬で霧散する。

身体強化の魔法だろう。ディアナはひょいと片手で、マエリスの体を持ち上げて脇に抱えた。


そして、走りだそうと足に力を入れ、重心を傾ける──


石畳の隙間から、無数の茨が射出される。

それらはディアナの頬を掠め、リフィの脇を通り、黒い狼の首を貫き、巻きついた。


『ガァッ!? ガアアアアアアアァァァァァァッ!!!』


『魔王の影』は悲鳴をあげながら引きずり倒されると、さらにその体中から茨を生やした。生えた茨は地面に潜り、再度体を貫いては地面に潜り、『魔王の影』を縛り付ける。


茨の棘が、容赦なく宝石の体を削りとっていく。その鏡のような輝きは茨に覆われ、やがて悲鳴も消えた。


「……え、何、今の」


正気に戻り、やっとの思いで言葉を搾り出したマエリス。

その発言で呆気に取られていたリフィとディアナも口を動かす。


「守られた、のでしょうか?」

「やっぱりこのまま帰りませんか〜? 不気味すぎて本当に私嫌なんですけど〜!」

「いや、むしろ帰る方が危ないかも」


ディアナは駄々をこねるが、マエリスは冷静に反論する。


「茨はまた静かになったし、道は空いたまま。『魔王の影』よりも上位の存在に、招かれてるって考えた方がいいよね」

「……招待を断れば、どうなるかわからないと」

「……今朝大人しく二度寝していればよかったですね〜★」


奥歯を噛み締めて、ディアナは諦めた。




「近くで見ると、これは……」

「ボスドルム家の館の跡ですね」

「貴族のお屋敷は〜、崩れていても立派ですね〜」


牛の歩みで茨のアーチを抜けた三人。

近くから廃墟を見ると、それは屋敷というよりは小さな砦のようにも見えた。


「マギカ辺境伯家が賢者の魔法で『魔の森』に対抗していたのなら、ボスドルム辺境伯家は屈強な軍団で『魔の森』に対抗していた家です。今では見る影もありませんが、この建物はその名残なのでしょう」

「物理と魔法……英雄と軍団の違いか」


マギカ辺境伯家にも騎士団はあるし、軍にも魔法使いはいるのだが、あえて特徴を分けてマエリスは表現した。


「──あ、マエリスさ〜ん、裏は壁がガラガラで中に入れそうですよ〜」

「立派な砦もハリボテか……」


時の流れの残酷さを感じながら、マエリスとリフィは砦の裏に回る。

壁も、天井も、階段も、屋根も崩落し、茨に覆われたその内部だが、不自然に一箇所、ポッカリと茨のない箇所があった。


腐敗し断片化した木材に、布み、綿──恐らくここにはベッドがあったのだろう。

そして今、目の前で眠る女性はそこで眠っていたのだろう。


まず目に入るのは、まるで澄んだ海のように真っ青な肌。衣服は朽ちて裸だが、それを新緑を思わせる深緑の長髪が纏わり、大事な部分を隠している。

そして、前世と今世を合わせても見たことのない程に大きな胸は、確かに上下に動いていた。


「生きてる……?」

「青い肌……? こんな人種は見たことが……」

「何だか不気味な気配を感じますね〜。『聖痕』が熱いです〜」


各々が感想を抱き、もう少し詳しく調べようと数歩近づく──直後。


眠り姫の右目に、顔の半分を覆うほどの大きな白い花が咲く。

その異常事態に距離を取ろうとした刹那、マエリスの体が茨で絡め取られ、リフィから引き剥がされる。


「うわぁっ!?」

「お嬢様!?」


リフィが反射的に茨にナイフを投擲するが、それは全て弾かれてしまう。

巻き取られたマエリスは女性の目と鼻の先へと連れられる。


そしてペストマスクを剥ぎ取られ──


「んむっ!?」


次の瞬間には、眠っている女性に唇を奪われた。

お読みいただききありがとうございます。


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