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オーダーメイド 〜魔道具の祖の研究日誌〜  作者: 中安・ユージーン・風真
第三章 Order:筋書を外す鳥籠

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遺跡ゴーレム

『──ッ!』


鈍重ながらも確実に、重厚な響きを伴って接近してくる遺跡ゴーレム。


「お嬢様、本来は稼働する遺跡ゴーレムに遭遇したら即撤退が正道ですが」

「今も生き残ってるゴーレムだよ? 解析したら何か分かるかも知れないじゃん!」

「そう言うと思いました……メイド使いの荒い主人に退職届がポロリしそうです」

「いつもそう言って辞めないじゃん。信じてるよ」

「ハラスメントですね」

「何で!?」


そう言いながらも、マエリスは遺跡ゴーレムを観察する。

ゴーレム──特に遺跡に存在するゴーレムは先史文明の人々に作られた、『人造魔物』だが……


(歯車とか、駆動音はなし……見た目は岩だけど、突然足が生えたし、本質はスライムみたいな軟体……?)


つまりは、金属製の粘土でできたゴーレムか。


(でも命令系にしては、予備動作がない。まるで人を相手するみたいに、思考と動作が直結してる……脊髄反射? 魔法陣で?)


「ふっ!」


素早く接近したリフィが、振り下ろされた拳をかわして両手に構えたナイフで乱撃を放つ。

細かい傷がゴーレムに増えていくが、あっという間に元に戻ってしまった。


ドゴォッ!


そこへマエリスが、『炎銀の傀儡塊(メタフラマタ)』の一撃を叩き込む。

総重量百キロを超える鉄塊と、限界まで高めた空気圧。かつては魔王の影を粉砕した一撃は、しかし、ゴーレムの体を凹ませ、ノックバックさせるだけで終わる。


その凹みも、周りが波打ちすぐに消えてしまった。


「……なるほど、このゴーレムがまだ生きている理由がわかりましたね」

「修復能力……いや耐性って言うべき? 動きが遅いから負けないけど、有効打がないから勝てないね」

「恐らく核がどこかにあると思われるのですが……お嬢様のその拳の形は変えられますか?」

「槍みたいに細長くってこと? さすがにこの場で加工は無理かなぁ」


未だ立体魔法陣の扱いには慣れていないマエリス。戦闘の緊張感の中で石に加工などとてもできない。


「それに、できれば核は傷つけないで確保したいなぁ……」

「それはまた無茶を仰いますね」

「こう、手足を切り落として周りを削って中身をくり抜けない?」

「外道の発想ですね」

「何で!?」

『──ッ!』


マエリスの邪な考えを察してか、ゴーレムはマエリスへ向かって拳を振り上げる。


それを『炎銀の傀儡塊(メタフラマタ)』で受け止める。シリンダーが悲鳴を上げ、機体も歪み軋む。


(パワーだけじゃない、受け流されないように力の向きを合わされてる──反応速度で負けてる!?)


その隙にリフィがゴーレムの腕を切り刻むが、切断には至らなかった。


マエリスは緊急離脱し、距離を取る。機体が魔力に還る直前に、ゴーレムの膂力に負けて砕ける。

マエリスはその様子に冷汗をかきながら新たな『炎銀の傀儡塊(メタフラマタ)』を出現させた。


背後から、リフィが無詠唱で魔法を放つ。炎の槍、水の鞭、風の刃、土の砲──いずれも有効打には至らなかった。


「諦めましょうお嬢様。旦那様がいない今、手はありません」

「うぅ……ここで消耗したら、帰り道も危ないもんね……」


渋々、泣く泣く、不承不承、後ろ髪を引かれる思いで、マエリスが撤退の決断を下そうとした、その時だった。


「ならば私たちの手は必要ありませんか?」

『────ッ!?』


斬。


風切り音すらなかった。

切断されたゴーレムの足が、ゴロリと床に転がる。綺麗な切断面の横には大きな槍の刃先と、一人の黒髪の男性。


「私共『応需の商隊(デリバーズ)』は傭兵業もしております。長期に渡るものから一戦のみの契約も可能です。この場は私一人のみですが、いかがですか?」


薄暗い遺跡の中で、金の瞳が優雅に微笑む。


「『金眼』の──」

「アンドレスさん!」

「覚えていてくださり大変光栄です。そちらのメイドさんに知られているのも嬉しいですね──おっと」


振り下ろされた拳を、アンドレスが回避する。ゴーレムの拳に触れた切断された足が遺跡ゴーレムに吸収され、足が再生した。


(この距離でも気配が感じられない……これがAランク上位の冒険者ですか)


ナイフをゴーレムとアンドレスの間に構えるリフィの頬に、冷汗一筋。


「パーティ全員が揃っているわけでもありませんし、短期契約ならば初回は無料とさせていただきましょう。どうですか?」

「リフィ!」

「……悪い虫をお嬢様に近づけたくはないのですが……仕方ありませんね」

「ご利用、ありがとうございます」


アンドレスが槍を振り上げる。ゴーレムの腕が斬り飛ばされた。


「それで確認ですが、お求めは単なる討伐ではなく、ゴーレムの核を傷なく確保することでよろしかったですか?」

「聞こえてたの?」

「これでも耳聡いことが自慢でして──」


瞬間、アンドレスの姿がブレる。


一閃すれば、両腕が落ち。

さらに一閃、両足が消えゴーレムはダルマとなる。

そして一閃──


「手足を切り落として、周りを削って、中身をくり抜く──とても合理的です」


それは最早、手品の領域だった。


核を剥き出しに残骸となったゴーレムを背後に、涼しい顔のアンドレスはニコリと笑った。

お読みいただききありがとうございます。


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