深夜5:00のヴァンパイア
その、ひとときを愛してる。
美紫 萌
あなたとの待ち合わせは、いつも深夜5時。
夜の街は、街灯も消えかけていて、信号はついてない。ぼんやりと光る自動販売機の前でコーヒーとカフェオレを買った。隣にあるベンチで今日も彼と待ち合わせ。
「ごめん、ごめん。待たせた」
「ううん全然、はい、これ」
私は、彼に手に持っていた缶コーヒーを渡す。彼は笑顔でありがとうっと言って缶コーヒーを開ける。いつもブラックコーヒーを飲んで最初に必ず、あー染みるはっと言う。
「いつも、そればっかり」
「ああ、なんだろう癖かな」
そう言って彼は頬へんだ、いつも、同じ時間、同じセリフ、同じ灯り、同じ2人この空間には私と彼以外居ない。
「いつも、ありがとうねこんな時間に」
「また、同じ、何回も言ってるじゃん私がしたくてしてるの」
「うん。でも、僕はあやかに助けられてばかりだよ」
「なによ、急に。何かあった?」
「いや、何でもないよ。あやか何時もありがとう」
「ふふふん。」
彼の口癖はありがとうと、私の名前だずっと同じなのに何故か悪い気はしない不思議な感覚。彼のありがとうは他の誰かに言われるありがとうよりも特別で、名前もそう他の誰かに呼ばれるよりも嬉しい。この時間もそう他のどの時間よりも私の中では特別に流れている。だけど、どうして、この1時間が他のどの時間よりも切ないのだろう。
「あやか泣いてる?」
「え…いや…ないて…」
「おいで。」
彼はそう言って両手を広げた私はそのまま身を任せるように彼の胸に抱きついた。冬の冷たい空気と彼の体から伝わる熱が私を包む。自然と、気持ちが強くなって私はまた泣いてしまう。ただ一言、行かないでって言えたらどれだけ楽なのだろうか、たった一言私にはそれを出来る勇気はなかった。そうして彼は6時にまた帰っていったまだ朝焼けの見えない時間。彼が見えなくなるまで手を振った。また、一日が始まる。