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晴天のプレリュード〜幼馴染を勇者に奪われたので、追いかけて学園と傭兵ギルドに入ったら何故かハーレムを作ってしまいました〜   作者: 妖刃ー不知火
第四章・淫魔と雨の憂鬱・いざなうもの編

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Who are you?

「…は?どういうことだ…?」


 予想外の言葉に、レクスは目を丸くした。


 聞き返そうと声を出した瞬間、レクスの左右から”ゴゴゴゴ”と圧力が放たれる。


 レクスは感じ取ってしまった。


 左右から、ゾクリと絶対零度の寒気を。


「マリエナさん?どういうことか説明を願いますわ。わたくし、少々戸惑っていますの。」


「…会長、レクスを一人占めするの?…許さないよ…?」


 底冷えしたような二人の様子に、マリエナは眼を震わせて慄く。


 カルティアはニコニコと微笑んでいた。


 しかしその額にはばっちりと青筋が浮かんでいる。


 アオイに至っては無表情だ。


 だがその雰囲気は、今にも目の前のマリエナを殺してしまいそうな、ただならぬ殺意を纏っていた。


 両者ともに、目のハイライトが消えている。


「か、カティ?アオイ?」


「レクスさんは黙っていてくださいませ。わたくし、少し怒っていますの。」


「…レクスは黙って欲しい。…場合によっては、会長に消えてもらうしかなくなる。」


 有無を言わさぬ雰囲気の二人に、レクスは黙るしかなかった。


 マリエナは、今にも泣き出しそうに眼に涙を溜めている。


「せ、説明だけ、させて……?」


「聞きますわ。納得いく説明をお願いしますわね?」


「…言い訳は聞くよ。…辞世の句でもいいけど。」


「は、はい……。実は……。」


 マリエナは恐る恐る、三人に向かって訳を話し始めた。


 マリエナがハニベアに行く少し前に遡る。


 生徒会の役員たちはマリエナを追い出したのち、マリエナを全員で尾行していた。


 もちろんビッくんも一緒であり、クリスに抱えられている。


 尾行の理由。


 それはマリエナがハニベアに行くことを、役員全員が知っていたからだ。


「レクス」という人物に会うと予想し、その人物を特定しようとしたのだ。


 生徒会の役員は、マリエナに感づかれないよう、慎重にマリエナのあとをゆっくり着けていた。


「しっかし、マリエナ会長の言う「レクス」って何者なんスかね?傭兵ギルドなんて、あっち知らないッスよ?」


 ヴァレッタは物陰に隠れながら呟く。


 ヴァレッタの家は新興貴族であった為に、傭兵ギルドを知らなかったのだ。


 ヴァレッタの呟きに、レインもコクコクと頷く。


「かいちょーの言う「傭兵」さんって、あちしは怖い噂しか聞いたことがないです。金の亡者とか、汚い仕事をやるギルドとかです。」


 しかし、レインの言葉に、クリスとルーガは首を横に振った。


「少なくとも、俺はそんなギルドじゃないって知ってる。あのギルドは「手を出してはいけない」ギルドだって家から言われたからね。この国では、かなり古参のギルドだよ。」


「わたしも聞いたことがありますよ。レインちゃんの言う噂は、ほとんどが冒険者ギルドから出てきた噂です。傭兵ギルドはこの国の最高戦力を超えたギルドと言わていますからね。」


 四人が会話をしていると、マリエナが店に入って行くのが見えた。


 会話を止め、マリエナの後に入って来そうな客を確認する。


 しかし、この通りは人が少ないためか、そうそう入って来る人物は現れない。


 しかも四人と同年代となると、全くそんな人影は見えなかった。


「…来ないな。時間帯かな?」


「そうかもです。たまたま今日はお休みかもしれませんです。」


「来なさそうッスけどねぇ。そもそも本当にここで会ってるんすか?「レクス」って奴と」


「傭兵ギルドはハニベアの前ですから。ここだと思ったんですが…?」


 目当ての人物はもう来ることが無いのではないかという雰囲気が漂う中、その時は訪れた。


 マリエナが入っていった店の、向かい側にある建物の扉が開いたのだ。


 四人はその扉から出てくる人物を注視する。


 すると……いた。


 橙髪で学園の制服を着た、ボロボロのフード付きローブを羽織った人物が、建物から出てきたのだ。


「あいつッスか…?結構イケメンッスね。」


「顔はすごく整ってるです。何処かの貴族って言われても説得力があるです。」


「魔導拳銃とは珍しいな。俺も使ってる奴なんて知らないぞ。」


 会話を続けていると、「レクス」と思われる学園生の後ろから二人、女性が連れ立って出てくる。


 一人は黒装束の薄茶色の髪をした美少女で、もう一人は高貴な雰囲気を纏ったプラチナブロンドの美少女だった。


 高貴な美少女を眼に入れた瞬間、四人の中に電撃が走る。


「ねぇ…あの人って…。」


「間違いないッスよね…?」


「なんで、あんなお方がここにいるです…?」


「カルティア様が…なんでこんなところに?」


 四人はあの高貴な美少女が、グランドキングダムの第三王女、カルティア・フォン・グランドだという事に気が付いたのだ。


 見続けていると、カルティアと黒装束の美少女を伴った男子学園生は、何かを話して、マリエナの入っていった店に共に入っていく。


 四人は慌てて身を潜めた。


「カルティア様ッスよねあれ!?なんでカルティア様が傭兵ギルドに出入りしてるッスかぁ!?」


「お、俺も、わからないよそんなこと!あの「冷淡の王女」って呼ばれてるカルティア様だよな!?」


「でも、すごくいい笑顔してたです…。あちしの聞いてた人とは、全く別人っぽかったです。」


「カルティア様と一緒に傭兵ギルドに入る男子学園生…もしかして…カルティア様のお気に入り…ですか…?」


 クリスの言葉に、他三人は押し黙る。


 ただでさえ、アンタッチャブルな傭兵ギルドの関係者なのだ。


 加えて傭兵ギルドから出てきた少年が王女様のお気に入りならば、マリエナの恋人のフリなんてもってのほかの人物だと思えた。


「と…とりあえず今日は解散にしましょうか。カルティア様がいる中で話なんて出来ませんし。」


「そ、そッスね。あっちもそれがいいと思うッス。」


「俺も賛成。触らないほうがいいと思う。」


「無理です。あちしもあの中に入っていける気がしませんです。」


 四人はそこでコクリと頷き合い、学園に戻ろうとしたその時。


 ヴァレッタがあることに気が付いた。


「……そういえば……ビッくん何処に行ったッスか?」


 その言葉に他の三人はきょろきょろと辺りを見回す。


 クリスが抱えていたのだが、いつの間にか抜け出したようだった。


 ビッくんの姿は忽然と消え、何処にもない。


「もしかして……店の中に入ったです?」


 レインの放った言葉に、その場の全員が冷や汗をかく。


 尾行していましたと言っているようなものだからだ。


「と、とりあえず周囲を探そう!遠くには行ってないと思う!」


「そッスね!見つからないように周辺を探すッス!」


 四人はそこから、ビッくんを探しに散開した。


 しかし、ビッくんは何処を探しても、見つけることは出来なかった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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