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晴天のプレリュード〜幼馴染を勇者に奪われたので、追いかけて学園と傭兵ギルドに入ったら何故かハーレムを作ってしまいました〜   作者: 妖刃ー不知火
第三章・家族の縁・しのびよるもの編

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覗く視線

 同時刻、勇者の寮ではリュウジの前にきらびやか輝く鎧を纏った女性たちが、鮮やかなカーペットの上で跪き、集まっていた。


 リュウジは自身の寮の床に跪く、黄金の鎧を着た女性たちを満足げに眺めている。


 跪いているのは冒険者ギルドのAランクパーティ、「黄金百合ゴールデンリリー」の面々だ。


「黄金百合」は女性5人で構成されたパーティで、冒険者ギルドの中でも魔獣の討伐実績の多い、有数の実力派パーティだった。


 そのうちの一人、真ん中にいる淡桃色の髪を肩に流した女性が顔を上げた。


 リュウジを見ているその眼は、どこか潤い蕩けており、頬も林檎のように赤い。まるで恋する女性の姿だ。


「我ら、「黄金百合ゴールデンリリー」は勇者リュウジ様に忠誠を誓います!どうぞ、何なりとお申し付け下さい!リュウジ様!」


「いやぁ、僕も嬉しいよ。君たちみたいな可憐で美しい人たちが戦力になってくれるなら、僕も安心して魔王の討伐に挑めるよ。」


「ありがたき御言葉です。それで、ノアどのに、ここに来るように言われたのですが、リュウジ様は何を?」


「ああ、ここは僕だけの学園寮なんだ。僕は君たちと仲を深めようと思ってね。……さぁ、みんな。鎧を脱いでベッドにきてくれるかな?」


「は、はいぃ……。リュウジ様のためなら……。」


 リュウジの言葉に「黄金百合」の面々が我先にと鎧を脱いでいく。


 黄金の鎧がガチャガチャと音を立て、床の上にバラバラと無造作に散らばる。


 「黄金百合」の鎧の下は、豊満な桃色の果実が実った者や、発展途上な者などよりどりみどりだ。


 その姿にリュウジは鼻の下を伸ばしながら、極度の興奮を覚えていた。


(こんなに美人ぞろいのパーティすら、僕のものなんだ。この力さえあれば、魔王を討伐したあとに王様にだってなれる。…ま、それより今は彼女たちと過ごさなきゃね。)


 次々と鎧を脱いでいく「黄金百合」のストリップショーを、リュウジは鼻息を荒くしながら眺める。

 

 皆、美人や美少女の集まりである「黄金百合」は皆それぞれにスタイルが良く、いい気になったのか、リュウジはすでに鼻の下を伸ばしきっていた。


 鎧と服を脱いで下着姿になった「黄金百合」の面々は全員眼を蕩けさせながらリュウジにしなだれかかる。


 極度の興奮状態からか、リュウジは既に眼が血走っていた。


 そして、全員が下着すらも邪魔というように脱ぎ始める。


 咎める者が誰も居ない淫靡な光景は、この世の常識が狂ったようだった。


「リュージさまぁ……。」

「リュージくぅん……。」

「リュウジぃ……。」


(グフフフフフ……ベッドまでって言ったけど、ここでおっぱじめても良いよね。誰も見てないしさぁ!)


 リュウジも「黄金百合」の女性たちの色香につられたのか、その場で服を脱ぎ始めた。


 そんな「黄金百合」とリュウジの酒池肉林の宴が始まろうとしている光景を、天井裏から覗く影が一つ。

 

 光の遮られた天井裏で、僅かに開いた隙間から漏れ出た光から、その影はリュウジたちを覗いていた。


 リュウジを蔑むような眼で睨みつけるように、その影はその光景を眺めている。


「…最低。…あんなのが勇者なんて。…うちには理解できない。」


 その呟きは誰にも届かないほどに小さく響く。


 次の瞬間、声の主の姿は天井裏から消えていた。


 まるで、最初から誰もいなかったように、微小な埃だけがそこに舞っていた。



 翌日、レクスの姿は王都中心の裏路地にあった。


 裏路地は昼過ぎだというのに薄暗く、ゴミが散乱しており、異臭すら漂っていた。


 王都中心の街道から見ると、裏路地は別世界だった。


 そんな中、レクスは傭兵ギルドの依頼で裏路地に来ていた。


 その依頼とは……ゴミ拾いだ。


「どっから出て来るんだ、この紙くず……?」


 レクスは落ちていた紙切れを眺めながら呟く。


 いつも通り、任務にあたる時に着用するフード付きのボロボロになった外套を着て、レクスは手に持った麻袋にゴミを拾っては放り込んでいた。


 いつもならクロウが受け持っている系統の任務だが、今日は偶々不在だったため、レクスが引き受けているのだ。


 レクスは辺りをキョロキョロと見回しながら、ゴミを探す。


 その姿は一般人から見れば不審者のようにも見えなくはない。

 憲兵に通報でもされそうな服装だが、かろうじてローブの下の制服が、学園生だということを示している。


 ゴミ拾いを続けるレクスだが、眼の前から誰か走ってくる様子が見えた。


「ん?」


 眼を凝らすと、冒険者風の男が2人、凄い勢いでレクスの方に走って来ていた。


 青い髪の男と、茶髪の背の高い男。


 その形相は険しく歪んでいた。

 とても焦っているようにも見える。


 何かに追われているようだった。


「退けどけどけぇ!」


 眼は血走り、ただ一目散に走ってくる男たち。

 ついにはレクスのことなど御構い無しに突っ込んできた。


「うおおぉっ!?待てって!」


 レクスはすんでのところで飛び退き、男たちを避ける。

 男たちはそのまま路地を走り去っていった。


「なんだったんだ一体……?」


 嵐のように走り去る男たちを後ろから眺めるレクス。

 しかし後ろから来る影には気が付いていなかった。

 レクスの後ろから、”ドン”という衝撃が走る。


「うおいっ!?」


 何かがぶつかってきた衝撃に、レクスはバランスを崩しそうになる。


 倒れ込む直前、とっさの判断でレクスは地面に左手を着いた。


 そのまま左手を軸にして捻りながら回転し、レクスは振り返りながら着地する。


 ぶつかってきた人物を見やるレクスの顔は、訝しむように歪んでいた。


 明らかな不審人物が、そこにいたのだ。


 黒い装束を身にまとう人物は、目元しか露出していない。


 服の上からでは、男か女かもわからない。


 全身をほぼ全て、黒い装束で覆い隠している人物だった。


 その人物は転んで尻餅をついていたが、レクスを見るとくるりとバク転をしてレクスと相対する。


 その眼はしっかりとレクスを睨んでいた。


「……何者だ、あんた?」


 黒装束の人物は何も答えずレクスを睨むのみだった。


 レクスも警戒しながらその人物を見据える。


 すると黒装束は、飛んだ。


「何!?」


 黒装束は何かをレクスに向かって投げつける。


 レクスは避けるが、《《ソレ》》は僅かにレクスの腕を掠めた。


 鋭い痛みが走り、二の腕から出血する。


「ぐぅっ!?」


 呻くレクスにそのまま黒装束は飛びかかる。


 手には鈍く輝く何かを持っていた。


 刃にしては小さい。


 ナイフにしては独特な形だ。


 黒装束の手に握られていたのは”クナイ”だ。


「…この野郎!」


 黒装束が腕ごとクナイを振るう。


 レクスは後ろに飛び退くと、鼻先ギリギリをクナイが通過していった。


 僅かな風圧に、レクスは少し気を張り詰める。


(よくわからねぇが、手にナイフみたいなもん持ってやがる……。どうすっかな……?)


 剣を抜く暇はなかった。


 黒装束はレクスに大きく踏み込むと、さらに深くにクナイを振るう。


 レクスはその腕を、タイミングを合わせてパシッと掴んだ。


 掴まれたことに黒装束は眼を見開くが、次の行動は速かった。


 後ろに身体を反らしたかと思うと、レクスの胴をを蹴り抜く。


 それは対人戦でレクスがよく使う手法だった。


「ぐぁ…!?こんのっ!」


 腹を蹴り抜かれた衝撃でレクスは掴んだ腕を離す。


 クルッと回り着地した黒装束は、再びレクスに踏み込む。


 クナイの切っ先は流れるようにレクスの頸を狙っていた。


「…………!?」


「……その技は見切ってんだよ。俺もよくやるからな。」


 クナイは頸に刺さる事はなく。


 レクスの腕によって逸らされていた。


 再び黒装束の眼は大きく見開かれる。


 蹴りを放つのはレクスの方が速かった。


 黒装束の腹を思い切り蹴り抜く。


「ごほっ!?」


 黒装束はその衝撃に呻く。


 怯んだ隙をレクスは見逃さなかった。


 黒装束に一気に肉薄すると、その裾をレクスは掴む。


 レクスは身体を返し、黒装束を背負い投げた。


「がっ……!?」


 黒装束はなすすべなく地面に叩きつけられる。


 レクスは手を離し、倒れた黒装束を見据えた。


「顔ぐらい見せろっての。」


 レクスは黒装束の顔布に手をかけたが、それと同時に黒装束は足腰をバネのように使い、ぴょんと飛び起きた。


 黒装束の顔を覆っていた布が、しゅるしゅると解かれる。


 ライトブラウンの髪がふわりと舞った。


 長い髪は首のところで2つに分けて結われている。


 所謂ローツインテールだ。


「…女?」


 黒装束はレクスへと振り返る。


 顔立ちは非常に整い、可愛らしい丸顔。


 カルティアやマリエナとはまた違った、小動物を思わせる美少女だ。


 しかしアンバーを思わせるくりっとした澄んだ瞳は、レクスを忌々しいように睨みつけていた。


お読みいただきありがとうございます。

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