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晴天のプレリュード〜幼馴染を勇者に奪われたので、追いかけて学園と傭兵ギルドに入ったら何故かハーレムを作ってしまいました〜   作者: 妖刃ー不知火
間章 かえるもの編

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むきしつなひび

 隷属の首輪をつけられたそれからのシルフィは、意識を封じられた人形に成り下がった。


 シルフィの意識は心の底に押し沈められ、ただ言われたことにそのまま頷き、行動するだけの人形。


 ギルバートに連れ帰られたシルフィは、ダンジョンでの鬱憤を晴らすかのようにひたすら嬲られ続けた。


 ギルバートやパーティメンバーの接待は当たり前、躾と称し革の鞭で叩かれることなど日常茶飯事となっていたシルフィだが、そこにシルフィの意識など無い。


 あるのは命令を聞き入れることだけに徹した、ただの傀儡だ。


 首輪の効果で抵抗の意思すら封じられたシルフィはギルバートの満足するまで、徹底的に慰みものとされていた。


 ダンジョンでパーティの半分を失っていた「鉄の蛇」だが、その怒りの矛先がシルフィに向いていたのは言うまでもない。


 そうして一週間ほどたったある日。


 満足したのか、ギルバートはシルフィを奴隷の仲介へと売り渡した。


 ほくほくとした表情で二千万Gという大金を受け取ったギルバートは、用済みと言わんばかりにシルフィを売り払い、シルフィの前から去る。


 その背中を、シルフィはただじっと無表情に見つめるだけだった。


 奴隷の仲介商にシルフィが連れられていった先は、王都の中にある古びた孤児院。


 そこは孤児院とは名ばかりの奴隷の仮置き場だった。


 シルフィは襤褸切れのような服を着せられると、冷えきった牢に無造作に放り込まれる。


 そこは食事なども最低限の劣悪な環境で、陽の光すら届かない。


 しかし隷属の首輪がはまったシルフィは、新しい主から命令を待つのみ。


 文句など言えるはずもなければ、逃げ出そうと考えることすら出来ない。


 さらさらとしていた髪は、手入れもされずボサボサになり、翡翠色に輝いていた目は、死んだように虚空を見つめるだけ。


 ギルバートによって左耳の一部は切り取られ、身体には鞭の跡すら残っている。


 だがシルフィは何も思わず、朦朧とした意識の中を時間だけが過ぎていく。


 既にシルフィの心は、隷属の首輪で死んでいたと言っても過言ではなかったのだろう。


 自由な意思など、何一つない。


 そんなシルフィが虚無の中で過ごして、幾ばくか経ったある日。


 奴隷商が、ある男を連れて牢に訪れた。


「旦那様!こちらが目玉のエルフでさぁ!」


「ほぉ……これがエルフか。初めて見たが、確かにそそる顔をしてるじゃあないか。」


 奴隷商が連れてきた黒髪で小太りの男性は、まじまじとシルフィの全身を舐め回すように眺めた。


 脂ぎったどろどろの髪と、面皰だらけの顔の男性はひとしきりシルフィを眺めた後、奴隷商に向き直る。


「ところどころ傷が目立つ。値引してくれないか?」


「それは……どうやら捕まえるときに反抗的だったらしく、少々の傷は仕方がないかと……。」


 胡麻を擂るように謙る奴隷商に、男性は少々悩むような顔をちらつかせる。


 奴隷商は焦ったようにたらりと冷や汗をかいていた。


 奴隷商としても、商品は早く手放すに限るからだ。


 さらに奴隷商にとって、その客は上客。


 機嫌を損ねても碌なことはないのだろう。


「ふーん。顔は悪くないからなぁ。……どうしようか悩んでしまうな。」


「に……二千万値引き致します。ガラムタ様。三千万でいかがでしょうか?」


 奴隷商の提示した金額に、ガラムタはにやりと口元を吊り上げた。


「三千万か……じゃあ、買おうかな。」


「あ、ありがとうございます。ガラムタ様!」


 男性の一言に、奴隷商は男性と笑みを浮かべながら握手を交わす。


 シルフィはその姿を、ただただ呆然と目に映すのみだった。


 男性は契約書を書き記し、奴隷商に手渡す。


 奴隷商はにこやかな笑みを浮かべ、シルフィを檻から出した。


 シルフィを男性の前に立たせると、奴隷商はシルフィの首輪を指し示し、口を開く。


「くれぐれも首輪を外さないようにお願いしますよ。なかなか反抗的だったと聞いております故に。」


「外す訳がない。俺も死にたかないしな。……でも、しっかりと躾はしてやらんとな。このガラムタ・アンブラルの奴隷になるのだから。」


 にぃぃと黄色い歯を拡げ、下品に嗤う男性にシルフィは「はい」と無感情に返事をする。


 満ちたりた笑みと共に、シルフィは男性の屋敷へとその日の内に連れ帰られた。


 待っていたのは、ギルバートにされたような躾とは名ばかりの暴力と、ひたすらに嬲られるような性の蹂躙。


 だが、シルフィは何をされようと命令とあらば静かに従うのみ。


 ひたすらに新たな主人となった男の命令を聞くだけで、そこにシルフィ自身の意思は欠片もない。


 ただただずっと、主人の命令を聞きながら蹂躙される日々が過ぎていく。


 シルフィは何の疑問も持たず、反抗心はもちろんのこと、自我すらない。


 しかし、男性はシルフィに殺される事もあると心配になった事もあるのだろう。


 ひたすらシルフィを呼び出しては躾を行い、夜通しその身を汚し続けた。


 男性が満足した後は簡単に身体を洗われ、地下牢へと放り込まれて、買われる前と同じ最低限の扱いを受ける毎日。


 無気力な一人の奴隷として過ごす、心のない玩具のようでもあった。


 そんな日々が続いたある時、男性を驚愕させる事実が判明する。


 奴隷であるシルフィの体調に違和感を覚えたガラムタが、病気を恐れて息のかかった治癒魔術を呼びつけたのだ。


 その結果として明らかになったことは、ガラムタに取って完全に予想外の出来事。


 シルフィの胎内に、新たな命が宿っていた。

お読みいただきありがとうございます

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