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晴天のプレリュード〜幼馴染を勇者に奪われたので、追いかけて学園と傭兵ギルドに入ったら何故かハーレムを作ってしまいました〜   作者: 妖刃ー不知火
第四章・淫魔と雨の憂鬱・いざなうもの編

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あらぶるままに

いまだ桃色に染まる空と分厚い雲の下。


雨によって溜まりきった、澱んだ水が跳ね回る戦場。


グラウンドでの戦闘は、苛烈を極めていた。


否、苛烈どころではない。


一方的な蹂躙が、そこにあった。


リナは眼を見張り、その光景に見入っていた。


「……すごい、のです。」


リナの隣で、クオンはその光景に眼を丸くして呟くことしか出来なかった。


それは、カレンも、他の女生徒も同じ。


いまだ大量に湧きつづける闇の人影。


しかし四人は、その人影を軽く薙ぎ倒すように圧倒していたのだから。


「あらあらぁ!もっと付き合いなさいよ!アタシのダンスに!」


機嫌が良さそうに獰猛な笑みを浮かべたチェリンは、ひたすらに踊っていた。


チェリンは自ら闇の人影の集団に突っ込み、二つのシミターで舞い踊る。


踊りながらも剣の閃きは全く衰えが見えない。


次から次へ、闇の人影の頸に刃を当てては切り取っていく。


影の人影が飛びかかってこようとお構いなしに剣を振り抜き、その頸から上を刈り取る。


 ただただ鮮やかに、優雅にステップを踏んで踊る華麗な姿。


 その一方で、剣閃は苛烈で獰猛。


 戦闘中だというのに、中央で身をひしめき合

う、女生徒の眼を釘付けにしていた。


リナが少し眼を動かすと、カルティアが見える。


それは、よく学園で見る姿ではない。


「シャインバレット!セプテット(七連)アッラルガンド(広がれ)!」


指輪が輝き、カルティアの掌から七つの光弾が放たれる。


七つの光弾は途中、幾重にも分裂。


広範囲に弾が広がる様は、まさにショットガンの連射にも等しい。


散弾の弾幕は、闇の人影を寄せ付けない。


それどころか闇の人影を次から次へと消していく。


カルティアも、自身の戦闘スタイルを確立し、闇の人影を蹂躙していた。


そのスタイルは「防衛」と「砲撃」。


もともとは防御の呪文に長けていたカルティアではあるが、闇の巨人に負けてからというもの、傭兵ギルドでレクスの任務中に修練を重ねた。


その結果、カルティアは一つの結論に達したのだ。


それが、「攻撃こそ最大の防御」。


もちろん防御呪文も使うが、防御の前に「寄せ付けないこと」を是とした。


そしてそれは、古語補正を使うことで最大化される。


元々光属性の呪文は、攻撃呪文が少ない。


それを補うのは、無駄を省き、最大限に魔術を効率化させることで、魔力消費のロスを抑えた立ち回り。


少ない攻撃呪文を補う多彩な古語補正。


レクスの隣に立ちたいという願いは、ここに結実していた。


カルティアは恐れることなく、闇の軍勢を真っ直ぐ見据えている。


手を、構えた。


「わたくしは……守り抜いてみせますわ!シャインバレット!オクテット(八連)カノン(追尾せよ)!」


八つの光弾。


独立し、正確無比に八つの影の頭部を穿つ。


次々と光球を展開、多彩に扱うその姿は、美しい指揮者にも見えた。


そんな光球の間隙を縫い、動く影が二つ。


レクスとアオイだ。


彼らはカルティアの光球でカバーしきれない範囲の闇の人影を蹴散らして回る。


元々、二人は戦い方が似ていた。


アオイに向かってきた闇の影。


触れる刹那。


その頸に、冷静にクナイを突き立てる。


「…触らないで。」


クナイを引き抜き、蹴り飛ばす。


すぐに裾に仕込んだ棒手裏剣を引き抜く。


ひょうと風を切り、投擲。


”ドス”と。


人影に刺さりこみ、人影が溶け出す。


確認する隙もなく、アオイはぴょんと真上に跳躍した。


靡いた髪をそのままに急降下。


”グサリ”と。


クナイを闇の人影の脳天に叩き込んだ。


闇の人影に対するアオイは、今までのアオイの戦い方とは少し異なっている。


今までのアオイは、一人だけだった。


ただ一人だけで動き、任務をこなす「シノビ」。


しかし、レクスと出会い、カルティアと出会う。


それは、自身の背中を預けられる存在。


自分一人で戦うより、よっぽど安心出来た。


「安心感」。


それを教えてくれたからこそ、アオイはレクスを信頼し、愛するのだから。


アオイは人影を蹴って、くるりと宙返りし後退する。


隙間を縫って駆けつける”婚約者”を信じていた。


「…お願い。…レクス。」


「おう。任された!」


そして、アオイと瞬時に入れ替わるように、レクスが前線に立つ。


眼前に立った闇の人影。


振り上げられた手を剣で受け止める。


”ドン”と発砲。


拳銃が火を噴き、人影に穴が空く。


レクスは消滅前の亡骸を蹴り飛ばし、親指で射撃形態を変える。


トリガーを引きながら、銃を横に薙いだ。


”ババババッ”と銃口が光る。


二十発の光弾。


牽制とともに、レクスは人影の中へと駆け出した。


左手の剣を突き立て、一体。


振り抜きざまに拳銃を放ち、二体。


跳び上がる。身体を回し、小石が跳ねる。


その紅く燃える眼は、闇の人影を見逃さない。


発砲。三体。


目にも留まらない早業だった。


冒険者ギルドで噂となっていた「裂旋」。


その姿を、リナたちは目の当たりにしていた。


大嫌いな幼馴染の姿に、リナは歯を食いしばる。


情けなかった。


(……何で?何でよ!?あたしたちは……!あの無能に劣るっていうの……!?)


大嫌いなくせに、安心させておいて。



無能なくせに、頼りたいと思ってしまって。



馬鹿のくせに、必死な姿を見せられて。



その隣に立つ、二人の美少女を。



”《《羨ましい》》”と思ってしまって。



(あたしは……。あたしは……!)



荒ぶる感情。ちぐはぐな想い。


リナはぎゅっと、自身の大剣の柄を握りしめる。


それでもと顔を上げたその時、リナの眼に不思議なものが映った。


テチテチと小さな手足を動かし、必死な様相で走る黒い玉。


その行き先は、真っ直ぐレクスへと向かっている。


闇の人影に囲まれそうになりながらも、必死にかいくぐるその様を、リナは捉えた。


レクスたちはその姿に気がついていない。


黒い玉のような何かは、それでもテチテチと向かって行っている。


じれったい動き。


そんな黒い玉のような何かを捕らえようと、闇の人影は迫っていた。


「ああ!もう!」


それを見た途端、リナはゆっくりと立ち上がる。


「……リナ!?」


「リナお姉ちゃん!?」


幼馴染たちの声も気にせず、大剣を持ったまま、黒い玉に群がる闇の人影を見据える。


その黒く丸い玉に向けて、ドンと一歩を踏み込んだ。


「おい!リナ!?」


もう一人の幼馴染の慌てたような声が聞こえるが、リナには関係ない。


鉛のように重かった身体を、突き動かした。


鬱陶しいように纏わりつく風。


それを振り払うように一歩。


衝動に駆られるままにもう一歩。


駆け出した。


「ああああああああああああああああああああ!」


声を荒げ、黒い玉に肉薄する。


”ブン”と、大剣を思いきり薙ぎ抜いた。


人影を切った粘つくような感触。


「……ビ?」


黒い玉に纏わりついていた人影は、真一文字に切り取られていた。


「行きなさい!アイツのとこに行きたいんでしょ!?」


「……ビ!」


真剣な眼で頷いた黒い玉は、テチテチとレクスの元に駆ける。


それを守るように、リナは黒い玉に群がる闇の人影を次々と切り抜いていく。


そして、黒い玉(ビッくん)はレクスの元にたどり着いた。


お読みいただき、ありがとうございます。

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