6
庵の中は、外の明るさから少し落ち着いた光が差し、いぐさの良い香りが鼻をぬける。
イリスとリシェルは興味深そうに部屋の中を見渡しているが、和葉ははじめてみるそのしっぽのはえた生き物に目を奪われている。
「我は、クロ。お前、茶を淹れれるんだろう?」
「お茶?」
「我は、茶が飲みたい!茶を淹れてくれ!」しっぽをふりながら、期待に満ちた目でみつめる小さな男の子の頼み事を断れるはずがない。
「でも、この世界にお茶なんて・・・」
「茶はそこにある」とクロが指をさした部屋に入ると、中には茶碗などのお茶の道具がきれいに並べてある。
「わぁ、すごい!!」
「封印される前の状態のままだからな」とクロから手渡された瑠璃色のなつめとよばれる小さな入れ物をそっとあけてみると、抹茶の良い香りがふぁっと漂う。
「和葉さま、いったいどなたと話しておられるのですか?」とイリスが不思議そうに先ほどいた部屋からのぞきこんでいる。
「えっ?あっ、ここにいるしっぽのはえたクロという男の子なんですけど・・・」とクロを紹介してみてもイリスとリシェルは顔を見合わせて不思議そうな顔している。
「カズハさま。私には何もみえませんがが。。。リシェルはどうですか?」
「私もみることができませんが。。。そのあたりからとてつもない力を感じます」
クロは、ちょっと得意顔で尻尾をふっている。
「その、クロさまはなんと?」
「お茶を淹れるようにと・・・」
「和葉さまの世界のお茶ですか?私もぜひ飲んでみたいです!!!」とイリスが目を輝かせる。
どうやら、お茶に目がないようだ。
「わ、わかりました。では、皆さまの分もお淹れしますね」
(といっても、茶道部だった学生の頃を最後に久々なんですけど・・・)
そういって和葉は、手に持っていた白い器の他に二人の抹茶茶碗を選び、茶の道具を持って、先ほどの部屋にある炉の前に腰をおろすといつのまにか湯が沸いている。
(久々の正座に足が心配・・・)と足を気にしつつ、クロから渡された抹茶を茶碗に淹れ、柄杓で丁寧にお湯を入れる。
息をすーっととすって気持ちを整えてから、茶筅でお茶を点てる。
(わぁ~この感じ久しぶり。仕事が忙しすぎてお茶を淹れることもなかったな)と考えていたが
だんだんと無心になっていく。
シャカシャカシャカ。
茶筅で茶を点てる音が、庵の中に静かに響く。
「どうぞ」クロの前にお茶をだすと、クロは嬉しそうに一口、そして二口、三口と飲み干した。
「うまい・・・リキュウの茶にはかなわないが、お前の茶もうまいぞ!」
(そりゃ、そんな歴史に名を残す茶人と和菓子食べたいために茶道部入部した私をくらべないでー)と思いながら、クロの言葉をくりかえす。
「え??リキュウの茶!?あなた、リキュウさんのお茶を飲んだとをあるの?」
「当たり前だ!我とリキュウのおやじは友だからな!」
「リキュウのおやじ~~!!??」