29
王との謁見後、和葉とシアンはリキュウの庭でお茶を飲んでいた。
「あの、シアン・・・よかったの?」
「王位継承権のこと?」
「それも、私のだけれど、護衛兼手伝いだなんて・・・」と和葉が申し訳なさそうにシアンをみる。
「カズハが気にすることないよ。王位継承権の話は、昨日、父上と姉上と決めたことなんだ」
「え?」
~昨夜~
大茶会のあと、王とイリスとシアンが食事をしている。
「家族そろって食事などいつぶりか?」と王が嬉しそうにリスとシアンの顔をみている。
「そうですね。誘ってもいつも忙しい、忙しいと誰かさんが断っていたから」とイリスがいたずらっぽく笑いながらシアンの顔をみる。
「ハハハ。今日は黒い霧も晴れ、本当に良い日じゃ。カズハ殿もお招きしてもよかったのだが・・」
「カズハは少し疲れているようでしたので、また日を改めてお誘いしようかと」
「そうだな。本当にカズハ殿には感謝しかない。また、明日改めて正式な場で礼を述べようと思っている」
なごやかな家族の食事が進み、デザートが運ばれてきた。
「これは・・・和菓子か?」
薄黄緑色の中に、黄色の小さな花が咲いたまあるいきんとんをながめながら、王がイリスにたずねる。
「はい。昔、家族でよくいった湖のほとりのお花畑を和菓子にしてもらいたいと職人にお願いして作ってもらいました」
一面に広がる黄色い花の中、小さなシアンが元気よく走り、お花の冠をかぶった笑顔のイリスと亡き王妃との思い出がよみがえり、なつかしそうな目でその菓子をみつめる王。
「本当に見事な菓子じゃ。食べる前に幸せな気持ちにさせてくれた」と涙をうかべる王。
「そうじゃ。和菓子を作ったものにもほうびをとらせなければのう」とイリスをみると、
「はい。父上にご紹介しようと職人をよんでおります」
「そうか。ぜひ会いたい。そのものはどこに?」
「父上の目の前に」とイリスがシアンをみてニコニコしている。
「???・・・まさか、シアンが作ったのか??」
「はい」とシアンが恥ずかしそうに答える。
「今日の大茶会の菓子もか?」
「はい」
王が驚いた顔で今度はイリスを見ると、イリスが笑顔でうなずく。
「そうであったか」そう言ってうなずきながら、王は菓子を口に運ぶと目を見開いて、笑顔になる。
「これは、うまい!見事な腕じゃシアン!」
王が嬉しそうな顔で菓子を食べる姿をみて、シアンが真剣な表情で伝える。
「父上、お話があります」
「ほうびの話か?」
「いえ。私は幼き頃より菓子を作り、たくさんの人に食べてもらい、皆を笑顔にしたいと思ってきました。今もその気持ちはかわりありません」
「よいではないか!わしもシアンの菓子がまた食べたい。王になれば時間がないかもしれぬが、時間はつくればよい」
「いいえ、父上。私は、王になれる器ではございません。王となって民を幸せにすることはできませぬが、私は菓子を作って人々を幸せにしたいのです」
王の和菓子を食べる手がとまる。
「それは、菓子をつくる職人になりたいということか?」
「はい」真剣な目をしたシアンの目をじっとみつめる王。
「だが、お前はたった一人の王位継承者・・・」
「わかっています・・・」
沈黙の時が流れる中、イリスが口を開いた。
「父上。私ではだめでしょうか??」
「イリス??」王が今度は驚いてイリスの顔をみる。
「私は幼き頃より、父上にあこがれ、父上のあとを継ぎたいと思い、勉学や剣術にも励んで参りました。女だからという理由で王になれないと知ってからもその思いはかわりません」
「イリス・・・」
イリスとシアンの真剣な表情をみて、王が口を開く。
「お前たちの気持ちはよく分かった。わしは父親失格じゃの。お前たちの気持ちに気が付かず、長い間無理をさせてきたようだな」
「父上・・・」
「わかった。だが、わしはこの国の王である」イリスとシアンが顔を曇らせる。
「しかし、その前に、わしはお前た父親だ。父にまかせよ」と笑顔で二人をみる王。
「父上・・・!!!」
「さぁ、皆でシアンの和菓子をいただこう。ユリアにも食べさせたかったな」
「はい」と涙ぐむシアン。
「母上のお墓に今度もっていきましょう。黄色花束も忘れずに」とイリスが涙をぬぐいながら和菓子を食べる。
「そうだな。ユリアの喜ぶ顔が目に浮かぶ」そういって王が微笑み、亡き王妃との思い出話や幼い頃の話など久しぶりの家族団らんを楽しんだ夜になったのでした。




