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人々が腰をおろしたと同時に、二段につまれたせいろうと三色だんごがのった皿を、侍女たちが次々に運んでくる。人々の視線が注がれる中、侍女たちがせいろうのふたをいっせいに開けると、白い湯気がふんわりとあがり、おいしいにおいが食欲を刺激する。
「わぁ~!いいにおい!」
「おいしそう!」
子供も大人も、和菓子をのぞきこんでいる。広場におりてきた王やイリスも用意された席に座り、
「さぁ、皆の者。これは、リキュウさまのいらした世界の菓子で邪気を払う願いがこめられたものだそだ。遠慮なく食べてくれ」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」とうれしい悲鳴のような歓声があがる。
人々は最初遠慮がちに不思議な異世界のお菓子をながめいたが、小さな子供が三色団子を一口食べて、
「おいしい!ママ、とってもおいしいよ!」と、笑顔を輝かせるとみな次々と和菓子を手にとっていく。
「ほんとだ!おいしい!」
「うまい!何本でも食べれそうだ」
「こんなおいしいお菓子生れてはじめて食べたよ!」
みなの笑顔をみながら、王とイリスも和菓子を食べながら話している。
「しかし、見事な景色だ。このピンク色の花はなんというのだ?」
「父上、サクラというそうです。クロさまとはじめてお会いしたリキュウ様の庵のおそばにも咲いていて、それはそれは美しく、ぜひ皆にも見せたいとクロさまに相談したところ、サクラの精霊の力をお借りして今日こちらにも咲かすことができました」
「そうか、サクラというのか。すばらしいものを見せてくれて、イリスよ。礼を言う。それに、お前がみつけてきたというこのお菓子を作ったものも、素晴らしい腕だ」
王が和菓子をまじまじとみつめながら、おいしそうに食べている。
「のちほど、父上にもご紹介しますわ」と嬉しそうに和菓子を一口食べながら、イリスはちらりとバルコニーの方をみる。
(いよいよね)
先ほど王が演説したバルコニーには、台がおかれ、その上にはお茶の道具が用意されている。
「カズハさまそろそろ、お時間になります」と和葉が待機していた部屋に侍女が呼びに来る。和葉は白のローブを身に着け、顔はローブのフードですっぽりと隠し、男性か女性かわからないようないでたちで、緊張した様子で返事をする。
「はい」扉を開けると、部屋の外の椅子にシアンが腰かけている。
「カズハ」と笑顔なシアンに、マドレーヌの和菓子のことを思い出し、顔を赤くする和葉。
「シ、シアン王子!?和菓子作りは?」
「もうすべての和菓子を作り終えたから、バルコニーまでカズハを案内しようかと思って」といって、手をだす。
「え?バルコ二ーってそこだよね?」
「カズハが緊張してるかなと思ってきたんだけど、必要なかったかな?」
「あっ、そんなことは・・・」といって、出された手を遠慮気味につなぐとギュッと強くシアンが和葉の手をにぎる。
(あったかい・・・)手をつなぎながら、二人並んでバルコニーまで歩いていく。
「カズハ、緊張してる??」
「少し・・・」(いや、もう別の意味でも緊張して))と取り乱していると、シアンがこちらをむいて、もう一つの和葉の手をにぎる。
「え?」
「大丈夫。いつも通りで。うまくいかなくても、カズハのことは僕が守るから」と言って、頬にシアンの手がふれる。
頬をふれられ、胸がシアンの優しさと恥ずかさでいっぱいになる。真っ赤になりながらせいいっぱいの声で「ありがとう」と伝えた和葉は、シアンに見送られながら一人バルコニーにすすむと、そこに大きな黒いキツネのような狛犬のような大きな生き物がこっちをみているのに気づいて、ぎょっとして立ち止まる。
「カズハ、待ちわびたぞ」
「え?クロ?その姿は?」
「我の真の姿だ。さぁ、お茶の時間を楽しもう」
そういって、カズハ台の上に登り、お茶を淹れる準備をはじめたのでした。




