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イリスが利休の庭にリシェルと到着した。


「これは・・・??」


利休の庭の桜の下には、赤い布をひいたベンチと、赤の和傘が日よけにたてられている。


「イリス、ごきげんよう!今日はいつもと違って、外で桜を見ながらお茶会をと思って」と和葉がベンチに案内する。


「イリスさま、私はクロさまとお話がありますので、庵の中におります。何かございましらたら、および下さい」とリシェルが席をはずすと、和葉が和菓子を運んできた。


「なんて、美しい和菓子でしょう」


虹色の花のように美しい練り切りをながめながら、イリスがうっとりしている。


「食べるのがもったいないですね。クロさまの新作ですか?」


「いいえ。今日の和菓子は、こちらの世界の方が作ったんです」


「この世界のものが?」イリスが驚いて尋ねると、和葉は笑顔でうなずく。


「一口、食べてみてください」


「・・・おいしい。中はあんこかしら?華やかな見た目と違って、やさしい味します」


「その菓子を作った方をこちらにお呼びしてるのですが、お会いになりますか?」


「まぁ!ぜひ!お会いしたいわ」と喜んでいるイリスの後ろから、


「姉上」とシアンが声をかける。


「シアン?」イリスが驚いてふりかえる。


「シアン、どうしたの?何かかきゅうの用事ですか?」とイリスが心配そうに答える。

シアンが恥ずかしそうに、下をむいているので、代わりに和葉が答える。


「イリス、その和菓子を作った方をお連れしましたよ」


「え?」とイリスが和葉の顔をみる。和葉は微笑んで、


「お二人のお茶をお持ちしますね」と席をはずした。


「あの、姉上・・・今まで、ひどいことを言ってしまって申し訳ありませんでした」と、シアンが頭をさげる。


「シアン・・・この和菓子は本当にシアンが作ったの?」


「はい・・・」顔をあげて、シアンが恥ずかしそうに返事をする。

「姉上の名前は、虹の女神さまのように美しく、そしてすべての者の繋ぐ架け橋となるような女性になってほしい願いを込めて名付けたと母上が話されていたのを思い出して、虹をイメージして作りました」


「シアン・・・」とイリスが涙を流す。


「え?姉上。どうされたのですか?」


「ありがとう。とても美しくて、おいしくて、シアンの気持ちが伝わってくるの」


「姉上・・・」


そういって、2人は今までのお互いの気持ちを話しはじめました。

その姿を庵からクロとリシェルが嬉しそうに眺めている。


和葉が抹茶を淹れて、二人に運んでくると二人は抹茶を頂きながら、


「あぁ、カズハのお茶はいつも最高に美味しいし、とても幸せな気持ちなる」


「そうですね。とても好きです」とシアンに見つめられて、カズハは真っ赤になる。


(お茶を好きっていってるのに、何赤くなってるのよ。私)その様子をフフフとイリスが微笑みながら、


「シアンの和菓子も本当に美味しかったわ。カズハもシアンも今日はありがとう!」

シアンとカズハが微笑む。


「それでね、シアン。実はこの国を覆っている黒い霧を払うために、この国のものすべてを招いてお茶会をしようと計画しているの。その和菓子をぜひ、シアンに作ってもらいたいのだけれど・・・」


「もちろんです。姉上」


「ありがとう!シアン。父上もきっとびっくりするでしょうね。内緒にしておきましょうね!」とイリスが嬉しそうな横で、シアンが少し顔を曇らせる。


「父上は本当に喜んでくれるでしょうか?また、まわりの者たちがお菓子作りなどして頼りない後継ぎとして騒ぎだすのではと・・・いずれは和菓子作りもやめなければと思っているのですが・・・」とシアンが寂しそうに庭を眺めている。


「シアン・・・」とイリスもどうにもならない現実を思って顔をふせた。


「自分の気持ちは大切にしなきゃ」と和葉が答える。


二人がパッと和葉の顔をみる。


「難しいことは分らないけれど、二人はこの国の為、お互いの事を想って頑張ってきたのに、自分の為にはまだ何も行動していない。まずは、自分の気持ちを大切にすることからはじめてみてはどうかな?」


その言葉をきいて、シアンが話し出した。


「姉上。カズハ。私は、和菓子をたくさんの人に食べて、幸せになってもらいたいと思っている。王ではなく和菓子職人になりたい」


イリスが驚いた顔でシアンをみる。


「シアン」


「さっ、姉上も。ここには僕とカズハしかいません」和葉もうんうん、とうながす。


「私は父上のようになりたい。ドレスや刺繍なんて大嫌い。馬や武術が大好き。どこかの国の王子に嫁になんていきたくない。この国を守りたい」とイリスが立ち上がって大きな声で叫んでから、恥ずかしそうに何もなかったようにベンチに座る。


「じゃじゃ馬姉上はそうではなくちゃ」と、シアンが笑う。


「誰がじゃじゃ馬ですってー」とイリスも笑う。


そういって、遠くをみつめる二人。


「私、シアンのこと何もわかっていなかったわ」


「僕もです・・・」と少しの沈黙の静けさをやぶるのように


「で、カズハは?」とイリスがたずねる。


「え?私?」うんうん、とイリスが笑顔で答える。シアンも聞きたそうにこちらをみている。


「私はなりたいものがずっと分からなくて・・・何をやっても中途半端におわってしまって。だからこの国にきたときスキルなしって言われても正直腹がたたなかった。だから、やりたいことがある二人が本当にうらやましい」と申し訳なさそうに答える。


シアンはそっと和葉の手をとって、優しくいう。


「なりたいもの?何者かにならなくてもよいんじゃないかな?カズハはカズハだ」シアンの言葉が胸に響いて、泣きそうになる。


「そうですわ。私はカズハと出会えて、本当によかったと思っています。お茶の時間も楽しいし」


「イリス」の言葉に和葉の頬に涙が伝う。


「カズハは、何かやってみたいことはある?」とシアンが優しくたずねる。


「やりたいことは・・・私は、毎日お茶の時間にほっこりしてたい。大好きな人たちとずっと一緒に」


シアンが優しく微笑む。そして、和葉と手をつないだまま何か決めたように立ち上がる。


「姉上、大茶会が成功したら父上に本当の気持ちをお話してみようと思います」


「シアン・・・」そして、イリスも心を決めたように「私も腹をくくらなきゃね」とフフフと笑う。


「そうと決まればまずは、大茶会を成功させましょ」のイリスの声が聞こえなくなるくらい、シアン王子にずっと握られた手が気になって、顔を真っ赤にする和葉でした。

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