20
利休の庵にて、クロとシアンが和菓子を作っている。
ぞわっと背中に何か走って、手をとめるシアン。
「どうかしたか?シアン?」
「いやっ、何か強いものが背中に走ったような気がしたんですが、気のせいです」
「誰かがうわさでもしてたんじゃないか。お前も隅におけないなーさぁ、手をうごかせ」
「はい。師匠」といって、生地をこねるシアン。
「そういえば、姫さんにだす菓子はきまったか?」
「はい。練り切りを・・・絵を描いてきたので後でみていただけますか?」
「あぁ、楽しみだな。どれ、そろそろ和葉も戻ってくる頃だろう。一服しようか」とはなしていると、
「ただいまー」と和葉が裏口から帰ってきた。
「カズハ、おかえり。姉上とのお茶会はいかがでしたか?」
「うん。たのしかったよ・・・」とシアンの顔をみて、先ほどのイリスとの恋バナを思い出して、顔真っ赤にする和葉。
(何、意識してんのよ。私。)
「どうかした?顔が真っ赤だよ」と、顔をつかづけてくるシアン。
(顔が近すぎるんですけど・・・)と、後ずさりしながら、
「急いで走ってきたから」とごまかずカズハ。
「それより、抹茶ラテ。すっごく気にってもらったよ!」
「和葉が話しておった、茶と牛の乳をまざた飲み物か?」
「そうそう!」
「マッチャラテ。私も飲んでみたい」
「じゃぁ、今日は抹茶ラテを淹れようか?」
「うん」と子犬のような笑顔で喜ぶシアンとは違って、顔をゆがめるクロ。
「なんと邪道な!我は、茶がよいぞ」と駄々をこねるが、
「師匠、たまにはよいではないですか」とシアンになだめられるて、しょうがなく抹茶ラテにしたクロ。
桜が一枚、また一枚と花びらが池に落ちる様子をみながら、リキュウの庭の池のほとりのベンチで抹茶ラテを飲む三人。
「おいしい。抹茶が甘くて、動いた身体にしみる」とシアンが抹茶ラテを味わいながらほっこりしている。
「わかる。わかる。しみるよね」と和葉が働いていた頃を思い出しながら、抹茶ラテをすする。
「たまにはよいな」とどうやら、抹茶ラテが気にいった様子のクロ。
「そういえば、クロ。精霊の木ってあの桜の木のことなの?イリスが前にリシェルさまは精霊の木の番人であるって話を聞いたのだけれど」と和葉がたずねると、
「あれは、ただの桜の木だ。精霊の木とはおそらくあれだ。ついてこい」とクロが和葉とシアンを手招きして、庵の裏庭へと案内する。
そこには、緑の茶畑が広がっていた。
「これって、お茶の木じゃ?」
「そうだ。ここで、茶の精霊たちが茶を育ててくれている。昔は王家の者も一緒に育てていたんだが・・・」
「王家のものも?」とシアンがクロにたずねる。
「まぁ、封印される遠い昔の話だし、ここは知られない方がよい」
「そうね」と和葉は豊かな茶畑を見つめながら答え、三人はその場を後にした。
そして、明日はいよいよイリスとシアンの仲直りのお茶会、一石二鳥大作戦の大事な日を迎えるのでした。




