10
「やっぱり。千利休は、この世界に転生していたのね」
「そう。その時リキュウのおやじがつぶやいたんだ。『茶の神様の思し召しか。私にはまだやるべきことがあるようだ。』って」
「それからは、ここに小さな庵をたてていつものように茶の時間を楽しんでいたよ。すると、いつのまにかこの世界の人や精霊もあつまってきてな、皆で茶を楽しんだ」クロは嬉しそうに微笑む。
「クロさま。その当時の人間は、クロさまや精霊達を見ることができたのですか?」とイリスがクロに会尋ねる。
「あぁ。みえていたようだ」
「精霊があつまると、この地は緑豊かになり作物も育った。するとまた人があつまり村ができ、いつのまにか大きな国となった。それが、この国のはじまりだ。だが・・・そのことを嫉む者たちもいた。その者たちが船にのって海から押し寄せ奪いにやってきた時、リキュウのおやじはこういったんだ」
『まずは茶を一服いかがかね?なぜこの国だけが豊かで平和であるか知りたいんじゃろ。秘密はここにあると』
「え?その状況でお茶?」(よく飲んだな敵の大将も。さすが千利休)
クロは懐かしむように微笑んで、うなずく。
「そうして、リキュウのおやじは攻めてきたものの身分問わず茶を点ててもてなした。そうしたら、不思議なことがおこった。それまで満ちていた嫉みや憎しみ、不安の気が安らぎに変わっていくのが我にはみえた。そして、争いは終わりこの地に平和がおとずれた」
「聖なる茶っていったい?」和葉は茶を眺めながら、頭をかかえこむ。
「でも、そうでしたらこのおいしいお茶はどうして、この世界に存在していませんでしたの?私、今まで一度も口にしたことがないのです」
「それは、忘れてしまったのじゃよ」
「まさか!?」イリスは驚いた顔でクロの顔をみつめた。
「リキュウのおやじの死後、何百年かのあいだは語り継がれていたが、人はいつしか茶を点てて心を静かにする時間よりも、力をもつこと、自分だけが豊かになることばかりにとらわれ争い、忘れてしまったんだろ。そして、当時仲の良かった王宮の魔導士に相談してこの地を一緒に封印したのだ」
三人と一匹?の間で沈黙の時が流れる。
「でも、忘れない人達もいた。だから、リキュウさまやクロの話は何年も何百年も語り継がれてきたんじゃないかな」
クロが顔をあげて、和葉の方をみた。
「そうだよ。じゃなきゃ、国のピンチにリキュウさまとクロに助けておらおうなんて考えないし、私も手違いでここにくることもなかったし」と和葉が笑って答えると
「国のピンチ?」とクロが真剣な顔で尋ねる。
「はい。クロさま・・・突然あらわれた黒い霧に島が覆われてから、急に魔法がつかえなくなったのです。それで、精霊たちに何かあったのでは?と異世界よりカズハさまをお連れすることに」
「なるほど。安心しろ。精霊達は元気だぞ。元気がないのは人のほうでは?」
「私たちですか?」イリスがクロに尋ねると、クロは少し何か考えこんでから、ニヤッと笑って口を開いた。
「これは、大茶会の出番だな。」
「大茶会??」




