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見つけてくださりありがとうございます。

 これは、人々を癒すのに疲れてしまった聖女と、魔族に期待されるのが怖くなった魔王の物語。

 かつて、敵対していた者たちは約束をした。

 聖女と魔王は二人で一つの約束を。


「聖女様ー!!いつも治療してくれてありがとう」

 ───どういたしまして。

「聖女の嬢ちゃん。もう諦めてた欠損まで治すなんて、もはや神だぜ」

 ───それは良かったわね、

「聖女様はやっぱりすごいですね。ありがとうございます」

 ───すごくなんてないよ。どういたしまして。

「聖女さま、痛いの飛んでったよ。聖女の力ってすごいね」

 ───すごくなんてないの、全然。もう、転ばないようにね。


 聖女様、聖女様、聖女様……。

 この国の人たちはみんな期待に満ちた顔をして私を見る。

 それは聖女の奇跡の力で怪我が治ると信じているから。

 違う、違うよ。

 私は聖女様なんて名前じゃないもの。

 仮面を被った私の何が分かるというの。

 聖女は代々、仮面を被って行動してきたらしい。

 身元を隠すためとか、呪われないためとか、諸説ある。

 魔王も仮面付けてるらしいし、その場合は誰に呪われるというのか。

 よく分からない風習だが、昔からの風習とは分からないものが多いので考えるだけ無駄だろあ。特に反発する理由もないので反発しなかったからやらされている。真っ白な仮面。

 あまりに無機質でつまらなかったため、絵の具でカラフルな模様をつけてみたら神官に怒られてしまった。

 結構うまく描けたのに。

 それはまぁいい。

 一つ文句を言うなら夏はめちゃくちゃ暑い。仮面の中は風通しが悪い。

 そんなことは置いておいて、まぁ、みんなその仮面の聖女を期待した目で見るのだ。

 そんなに期待しないでよ。

 私だって人間にすぎない。

 ちょっと癒せる力を持っただけの。

 人間の娘に大それたことできるわけないのだから。

 期待されてるなら応えたい。

 けれど、いつもいつも治せるとは限らない。 聖女だから大丈夫だとか思ってるんでしょ。

 でも、そんなことないよ。

 私は神様なんかじゃないから失敗することもあるし、毎回失った腕を元通りに治せる保証はない。治療するための魔力だって無制限に懇々と湧き出るわけじゃない。

 いつもベッドに入るときには力を使い果たしていて、寝転んだ記憶もないまま泥のように深く眠り、気がついたら朝なのだ。

 そういえば、前はいつ散歩をしただろう。

 散歩が好きなのだ。 

 外は神殿より広くて、偉そうな人もいない。何回外に出ても、見たことのないものを発見できる。道端の花も雑草も好きだ。

 なのに……。

 自分の聖力が誰よりも強いから、その分治さなくてはいけない。他の人が治せないものを治してあげないといけない。

 それは分かってる。

 分かってるけどさ、私だって自分の時間が欲しいよ。自由に生きたいよ。

 ご飯も食べされてもらってるし、住む場所だってもらってるし、神殿には悪いけどこの仕事に疲れてしまった。

 窓の外は、昨日までの雨が上がりキラキラと雫が光を反射して光っている。

 一転。ベッドで重い身体を無理やり起こして、目元を手のひらで覆う。深く重い溜め息が漏れた。


「助けてあげて自分に利益があるならまだしも」


 衣食住も自分で働いて手に入れる方が余程気楽だ。

 今日もまた聖女をやらなくてはならない。

 みんなが憧れ、期待し、望んでいる、理想像のような聖女に。

 なんで、私には自由がないのだろう。


「死にたい」

 

 こんな言葉を言ってしまうのは許してほしい。一人の時くらいは許して。

 だって、そうでないと逃げ場がないもの。

 鏡を見ると、金糸のようというに輝く髪とアメジストという宝石のような瞳が見える。

 元は、ただの黄ばんだ髪と毒のように濁った瞳だった。

 そんなとこにかけるお金はなかった。孤児院育ちだから仕方ない。

 お金というものは、こんなにも人を変える。いい意味でも悪い意味でも。私としては、神殿で働く人たちに「そんなことにお金をかけるないで。髪なんて川の水で洗えば十分なのよ」と何度も言っているのだけどね。

 頭から生えている繊維にお金を使うくらいならスラム街に使って欲しい。

 助けた人には感謝される。

 ただそれだけ。

 自分が助けたい人を選ぶこともない。

 あぁ、本当に……


「死にたい」


 ずっとこんなこと考えてる。

 

「……そうだわ。そう、よね。こんな人生、終わらせてやればいいのよ」


 思いついてノロノロとベッドから這い出る。

 それを実行するためクローゼットを開け、カツラと化粧道具、それからボロい服を取り出す。

 これは変装セット。いつもは休日に街に散歩に行き時に使う。このままの姿ではすぐに聖女だとバレてしまって散歩どころではなくなってしまうから。

 カツラを被り、メイクをして、目の形も変える。 瞳の色だけはどうしても変えられないので目元を前髪で隠す。

 すると、あら不思議。

 どこにでもいる茶髪のそばかす少女に大変身。この恰好なら身バレしないはずだ。

 

「さあ、行きましょう!疲れてくたびれきった人生を終わらせるために!!」


 意気込み、目的地へ向かうために窓から飛び降りた。

 今日は仮面をつけなかった。

 死ぬのに自分の存在を隠すための仮面は必要ない。

 ここは二階。よっていつものように足をずりむいたけど気にしない気にしない。

 え?聖女様なのに、足を治さないのかって?

 残念なことに自分の力で自分を治すことはできないのだ。

 こればかりは神様に怒りたい。せめて、自己治癒できるようにはしといてよ。他人はめっちゃ治してるんだよ?

 だからそのまま目的地めがけて走り出した。

 仕事の放棄上等!

 これから人生の放棄という大仕事をするんだから。



ここまで、お読み下さりありがとうございます。

少しでも、面白い!続きが気になる!と思ってくださったら☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて頂きますと作者が泣いて喜びます。

ぜひ、よろしくお願いいたします。

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