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ソロだろうが、デュオだろうが

作者: 秋暁秋季

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳ございません。

つい先日、絵画が好きな僕はふらりと美術館を訪れた。国立、というだけあって、豊富な品揃えに反し、破格の閲覧料。本当にこんな値段で入館して良いのか? という場所だった。

白亜の壁に大小連なる絵画。写実的な人物像は見るものを震え上がらせる程、精巧に出来ていた。食い込んだ茨も、滴る血も、全て全て、恐ろしい程の画力。

吸い込まれない様に、ふと絵画から目を逸らす。一組のカップルが、一つの絵を見てささやかな意見を交換していた。美術館という場を弁えて、極力音量を下げ、囁く姿は一つの作品の様に思えた。

「で、君は心が折れたと? 楽しめなかったと?」

「いや、めっちゃ楽しかった。いい物は良い。カップルが居ても居なくても」

此処はケーキを専門としている喫茶店。内壁はベージュを基調とし、椅子から卓に至る家具類は全てアンティークを思わせる焦げ茶。古き良き大正浪漫を連想させる店内は常に落ちいた印象を与える。

そこで彼女は黒ずくめの地味な格好をしていた。黒のTシャツに、ジーンズ。この空気に反し、カジュアルな格好。そしてチョコケーキを注文し、無糖の紅茶をちびちびやっていた。

「まぁそうだろね。独り身だと楽しめない。なんてチープなもの、出さないからね? 向こう側」

確かにそうだと思う。友達と来ようが、独り身だろうが、場の雰囲気によって印象を変化させるような場所じゃない。それは過去から続く絶対的な価値と、それを守ってきた方々が居たからだ。

僕も林檎の形をしたケーキにフォークを入れた。真っ赤な果実にニスを塗った、つやりとした表面。形を崩すのが勿体ないほど。確か品名は『ニュートン』だった気がする。良い名付けだと思う。貴方と食べても、一人で食べても、その名前に感銘を受ける程には。

「クソダサい服着て、カップル塗れなデートスポットで、はしゃげるよ。だって楽しいからね。それだけの価値があると思ってる」

その一言は、このセピアな空気の中でカジュアルな格好をしている彼女と良くあっていた。貴方の格好がどうであれ、この店の雰囲気を害されない。それ程の物を周りは与えてくる。

干物人間なんで、平気でカップルいっぱいの場所に行くんですよ。

独り身なんて感じさせない程、完成された物出して下さいます。凄く楽しいです。

関係者の皆様、毎日本当に有難う御座います!


余談です。

昔あった喫茶店、もう無くなっちゃいました……。

ケーキの名付けが本当に逸脱で、こんなタイトルを付けたいと思っていたあの頃……。

店員さんの衣装も、言葉遣いも、絶句するほど綺麗で、こうなりたいと思っている作者です。

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