第七話 もう一人
歩道で私は美雪と共通の話題で盛り上がっていた。
「そう言えば今日ファンタジーズシリーズの新作がで出るんだよ」
「うんだから弟に買わせたわ」
「弟さんかわいそ〜」
「だってアイツもゲーム買いに行くらしいからさ〜」
交差点で青信号を待つ。スマホで時間を確認した。もうゲームを買った頃だろう。美雪が振り返り話を続ける。
「あれだよ、今回新しい新キャラが35人いるんだって」
「へぇーでも攻略する時大変だろうな〜、前作はクロエ・クレイがめちゃくちゃ強かったからなー。あれ? 舞台は変わらないんでしょ?」
「うん今回もハイネス魔法学園だけど確か2年後の話だよ。だからリアン王子も登場する……」
「本当!? リアン王子でるの!?」
「うん」
「よっしゃー!早く帰ってやろー!」
信号が青に変わった。美雪が進みだす。
ギキィィィ
その時トラックが横断歩道を突っ込んできた。美雪は私と話していたせいでトラックに気づかなかった。私は美雪の手を引っ張り歩道に戻す。しかしその反動で私が前に飛び出した。
(あれ? これ私が轢かれるんじゃ)
そのまま私はトラックに吹っ飛ばされた。甲高い悲鳴、バクバクとなる心臓の音、美雪がこっちに走ってくる。視界も悪くなってきた。耳もキーンとなってるし声も出せない。誰かが体を揺らしている。
親友の手の中で私は力尽きた。
気づくと変なところにいた。真っ暗な場所で前が見えず床を手探りで進んでいった。進んでも進んでも壁には辿りつかない。若干イライラが積もっていた時、前に自分の影ができていた。後ろの光を見ると一人の女が立ち尽くしていた。まるで女神みたいな服装をしたその人はゆっくりと口を開いた。
「素晴らしい行動でしたね。古町美坂」
「えっとどちら様?」
「私は女神ハリアー、死んでしまったあなたを管理する為……」
「死んだ!? 私死んだの!? マジで言ってる女神様!?」
そういえばトラックに吹っ飛ばされた気がしなくもない。
「えーとそうです、貴女は死んでしまいました」
「えー嘘だ! それじゃあ家族にも美雪にも会えないってこと!? しかもファンタジーズの発売日に!? 運悪すぎでしょ!」
「仕方ないことです。ですが貴女は友人の命を救いました」
「そうだった。美雪が引かれそうだったんだ。もしかして天国に行けるんですか?」
「いやいや天国なんて生ぬるいです。ここにきた理由は他でもない、貴女の友人の件です」
「美雪が何かしたんですか?」
「美雪さんは親友の貴女を失ったことで引きこもってしまいます。しかし彼女は命を題材としたマンガを執筆。多くの人の心を動かして自殺志願者の数を一気に減らしたらしいです」
突然な事に驚くが自分が友人の命を救い、それが連鎖して多くの命を救えたと思うと鼻が高くなる。
「確かに命を救ったのは美雪さん自身です。ですが美雪さんを救い彼女に影響を与えた貴女にも神々からの恩恵が必要だと決定づけられました。つまり貴女は大勢の人を救った英雄。我々が一つ願いを叶えてもらう権限を持ったのです」
「え? てことは……」
「貴女の願いを生き返ること以外ならなんでも叶えてあげましょう」
「え! 本当! それじゃあファンタジーズの世界に転生させてよ!」
「分かりました、ではそのゲームに似た世界にしますね
」
「ちょいまち!」
「なんです?」
「似た世界ってどういうこと! ちゃんとリアン王子はいるでしょうね!」
「いますよ、この世界は既に転生した方が創造した世界でしてドラコミッションとファンタジーズが融合した世界です。わざわざ新しい世界を作るのは大変ですからねー」
「ドラコミッション……」
弟がハマっていたゲームだ。弟とは小さい頃いつも一緒に遊んでいた。泣き虫でダメな弟だがゲームとなると結構強く白熱の戦いになった。今は私と同じくらいの背丈にもなって会話も減ったがそれでもゲームは買ってきてくれる。
(もうアイツにも会えないのか。でもアイツがヨボヨボになって死んだらこっちにくるかもしれないもんね)
姉弟とは不思議な関係だ。全然息も好みも合わないのに何故か仲良く話せる。
「わかった。その世界にして。でも待って注文がある」
「もう、なんです?」
「私をエイダ・クリスタルに転生させて頂戴!」
そして私はファンタジーズの主人公エイダ・クリスタルに転生した。家も庭もオープニング映像で見たのと同じね。エイダ・クリスタルは小さな家の生まれだけれど魔法学を学ぶためにハイネス魔法学園に入学するのがあらすじ。しかも前作のファンタジーズを私はやり込んでいる。
(つまり、私は確実に現実のリアン王子と結婚できるということ!)
よっしゃ! 美雪見てるかー! 貴女が頑張ってくれたおかげでリアン王子に会えたんだー! ありがとうー!
ルンルンの気分で列車に乗った。最寄駅に到着、そこからはこの山を登らないといけない。必死に登りようやく校門前に着いた。
そこには赤髪の憎っくきライバルがいた。クロエ・クレイ、高嶺の花には蜂が近づくように彼女はリアン王子と結ばれようとこの学園に入ってくる。もしリアン王子ルートを選ぶとクロエはいつまでも主人公を追い回し何があっても退学させようとしてくる悪役令嬢になる。私はリアン王子ルートをクリアするためにコイツと三日にも及ぶ激戦を繰り広げようやくクリアしたのだ。
あっちはまだ気づいていないが私を見た瞬間、お得意の令嬢マウントをとってくるというストーリーになっている。
ならばこっちから行くまで!
「見てなさい! この主人公エイダ・クリスタルがあなたを国外追放にしてやるわ!」
「え? なんですか急に」
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