第六話 オープニング
「貴方が会ったその女神の名前は?」
「確か女神ハリアーと言っていました」
「ハリアーてあのハイネス今日の女神ハリアーですか?」
「有名……なんですか?」
「ケンヤさん貴方はこの世界の常識をまだ全然理解していませんね」
「はい、まったく」
「ハァ」
事実を述べただけなのにため息をされてしまった。
「いいですか?このバロウ王国には様々な宗教の元となる五つの宗教があります。それ以外の宗教は皆五つの宗教の派生です。そしてその中で最も信者が多い宗教それがハイネス教です」
「へぇーためになりますね」
バコッ
「イタッ」
「……話を戻します。もし本当に貴方が女神に頼んで転生したのならまた女神に会わないと元には戻れません。ですから女神ハリアーの聖地に行き女神に会うのです。一度会えたならまた会えるはずです」
「なるほど! それでその聖地はここからどのくらい離れているんですか? どのくらいかかりますか?」
「……学校です」
「え?」
「女神ハリアーの教会はハイネス魔法学園の敷地内にあるんです」
「え!?」
「と言うわけでケンヤさん、魔法学園に入学して下さい」
「えー!?」
「ふむ、ハイネス魔法学園に入学したいと……」
「はいクロエお嬢様がそうおっしゃっていました」
次の日の朝、早速スターチスさんはカールお父さんに本題を振る。
「クロエ……何故魔法学園に入りたいと思った」
「えーとそれは! このクロエ・クレイはより多くの事を知り経験を積むことが何より青春を謳歌する事だと思い魔法学や人間関係を経験する事ができるハイネス魔法学園が最適だと思い選びました」
昨日頑張って考えた文だがスターチスさんが怖い目で見ている。少し棒読みすぎたかな。
「そういえば昨日冒険者になりたいと言っていたな?」
「はっはい! 存じ上げております!」
「ではハイネス魔法学園で年間成績一位を取ったら考えてやる」
「え! よろしいんですか!」
(冒険者なんてさせる訳ないでしょ!)
(そうですよね〜)
目的は変わらずカールお父さんに許可をもらった。寮生活になるらしく明日には荷物を詰めて出発だそうだ。
「荷物は私が用意しておきますね」
「俺も手伝いましょうか?」
「……貴方変態ですか?」
「え?……あっ! 宿泊ということはつまり……そういう事ですね……」
「いいですか? これからは私がお嬢様の体を洗います。付き添い人として一人ついて行けるのでそういう問題は私がどうにかします」
「はいそっちの方が良いですからね」
「……どういう意味ですかそれ?」
「あっそういう意味じゃないですからね!?」
やはりこの体だと色々と面倒だったから、理解者が一人居るだけでも安心する。ちなみに昨日既に一回風呂に入ったことはどう思われてるのだろうか。
「そういえば昨日入浴してましたよね?」
すぐ様バレた。鋭い声と視線で睨みつけてくる。
「……」
「罰が必要ですね。殴り三発で許してあげます」
「……一発でお願いします」
バコッ
バコッ
はやく女神に会おうと誓う俺だった。
「馬車の準備ができましたぞ」
「ありがとうございますトレディさん、お嬢様どうぞ席へ」
「ありがとうございます」
入学式当日。馬車の操縦はトレディさんがするそうです。この人門番できたりと意外と優秀なのでは?
「では出発進行ですぞー」
ガタンガタン
「この屋敷から出るのは何年ぶりでしょうか」
「いつから屋敷に居たんですか?」
「私が十五歳の頃です」
「懐かしいですなー、スターチスさんがまだお嬢様に手を焼いている頃ですな」
「そうだったんですね、ちなみにスターチスさんは今何歳……」
「見てください。バリナス滝です。いつ見ても綺麗ですねー」
その後は雑談が続いた。馬車が盗賊に襲われることもなく三人で色んな事を話した。トレディさんとスターチスさんが共通の話題で盛り上がりそこに俺が入っていった。電車の中で友達の会話にコッソリ紛れ込む感じだ。
「そういえばクロエお嬢様がついにセルリア殿の薔薇を受け取ったんですぞ。ようやく恋が始まるのかのう」
「そんな事があったんですか? そんな話聞いてないんですが」
(何かしらあったら報告するように言ったでしょ)
(屋敷外の人間だからいいかなって思ったんです)
「あっそうですね確かに受け取りました」
「私の感想ですがセルリア殿は素晴らしいお方です。どんな人にも敬愛を忘れずに対等の立場で接してくれます。それにクロエお嬢様を溺愛しておられるのでセルリア殿を認めてくれるのは嬉しいしだいですね」
「今まで薔薇を受け取ることすら拒まれていたせいか初めて受け取ってくれた時には発狂しておったのう」
「ちなみにセルリア殿もハイネス魔法学園に入学するようですよ」
「へぇーでも会った瞬間爆走して近づいてきそうですね……」
「それも愛情表現ですぞお嬢様」
気づくと森の中にいた。馬車は上り坂を登っていくと遠くに塔のようなものが見えた。
「そろそろ到着ですぞー」
「馬車の中から見えたその学校はまさにファンタジー世界にありそうな大きな城だった。屋根は青いレンガが使われており壁は黄色く塔の周りには魔法陣のようなものが浮かんでいる。
「すげぇ!」
「お嬢様「すげぇ」ではなく「素晴らしいですわ」ですよ」
「あっはいすいません」
校門の前に馬車は止まった。馬車から降りる、周りを見ると他の馬車から若い貴族らしき人達が門を通り中に入っていく。
「それではお嬢様行ってらっしゃいませですぞー」
「行ってきますトレディさん」
門の前は大きな広場のようになっていた。スターチスさんと門に向かって歩いていく。
「あーいた! 悪役令嬢のクロエ・クレイだわ!」
大勢の人の喋り声の中で一つだけ正確に聞こえた。声がした方を向くと一人の少女がこっちに指をさしていた。この人どこかで見た事がある。そうだ! この人はファンタジーズのパッケージにいたあの金髪の女の子だ!
「見てなさい! この主人公エイダ・クリスタルがあなたを国外追放にしてやるわ!」
ようやく本編始まります!
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