第四話 整理完了
「クロエさんどうぞ! 僕からの赤い薔薇です!」
「ありがとうございます」
「……!? マジで受け取ってくれるんですか!?」
「え?そんな当たり前……」
「しゃあぁぁぁ!!」
突然屋敷にやってきたこの男は俺が花束を受け取ると涙を流して喜んだ。名前も知らないその人は俺に近づくと薔薇を一本抜き取った。
「ではいきます!」
「?」
「この薔薇も綺麗だけど君程綺麗な人はいないよ」
「……」
「よし言えたー!」
「???」
男はガッツポーズをして喜んでいる。えっなに今の。
俺今恋愛漫画でも見ない程の褒められ方された?
「ということでクロエさん! 僕と付き合ってください!」
「ごめんなさい」
バタッ
「そっそんなぁ〜!」
この人見た目は国宝級なんだろうけど異性との話し方が酷すぎる。いくらなんでも他にやり方があると思うけど。
「また新しいコクり方を考えるんですな、セルリア殿」
「そのようですねトレディさん、しかし僕は決して諦めませんクロエさん。必ずこのセルリア・ユーフォリアが貴女を振り向かせて見せます! それでは!」
そう言うと彼セルリアは馬車に乗ってそそくさと帰ってしまった。
「今のは……」
「この関わり方もある意味では青春なのかもしれんのう」
「え?」
「クロエお嬢様もようやく彼のことを認めたのですかな?」
「認めたって……いやいやいやそんな訳ないじゃないですか!」
あの人だけは俺に親しく接してきたがいったい2人はどんな関係なのだろうか。親友?それとも単に片想いなのか?
トレディさんに聞いたところ彼も貴族の家系でクロエさんのいいなずけらしい。それでもクロエさんは認めず今も彼は交際の許可をもらいにここに来るらしい。ちょっと可哀想な人だ。
三日月が窓から見える。書いているうちに夜になってしまった。俺が必死こいて白紙の本に書いたのはこの屋敷の人たちの名前と説明だ。
スターチス 真面目で気品のあるメイド クロエさんとは仲が良かった模様
カール・クレイ クロエさんのお父さん無口で少し怖いあまり話さない方がいい
トレディさん 門番のおじいさん唯一気軽に話せる人屋敷の話は彼に聞こう
スーナ・エリクサー この屋敷の回復役の看護師優しい人だけどクロエさんのことは嫌っているらしい
セルリア・ユーフォリア 一応彼も。かなりのイケメンだが恋沙汰は苦手らしいだがきっといい人だろう
それ以外にもメイドさんや剣士さん達の名前を本に書き込む。正体がバレることはないだろうけどきっと違和感を感じてしまうだろう。できれば穏便に済ませたい。
名前を書き込んだ後は暗唱して覚えるだけだ。
「ノラス、グラトン、ミーナ、メイ、ノラス、グラトン、ミーナ、メイ」
コンコンッ
「お嬢様入りますよ」
慌てて持っていた本を本棚に入れて机からベッドにinする。
ガチャ
「すいません就寝中でしたか?」
「あっはい……何か用事でも?」
「そうでした。新しいティーカップを置き忘れていましたので」
「あっそうでしたか」
スターチスさんは新しく綺麗なティーカップを置いてくれた。
「そっちの方が綺麗でいいですね」
何気ない会話だった。思ったことを言ってみただけだった。
「……そうですね、それでは」
明日からもずっとクロエ・クレイとして生きるのだろうか?まあそれでもいいかと心の中で思い始めていた。この世界も案外楽しいかもしれない、そんな先のことを考えていた。
「おやすみなさい、スターチスさん」
「おやすみなさい、お嬢様」
「そういえば聞き忘れていました。貴方は誰ですか?」
気にするべきは目の前の問題だ。
2話投稿しますから許して...
ご愛読ありがとうございます
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