ファシアスとの別れ
心臓を貫かれた俺は、動く力を失った。
視界が暗くなり、何も感じなくなる。
血が出てきて熱かった腹も、あちこちに食らった斬撃の怪我も、痛みがなかった。体が軽い。
こんな感覚は初めてだ、今なら何も怖くない。
この状態のまま戦えたらどれだけ楽なのだろうか。
まだサヤたちがあの中にいるのに、ここで死ねないのに、情けねえ、、
身の程を知らなかったってやつか?
死神の特権まだ使えっかな。
死神のとこ行ってくれ。
ポワアアアアアアアンと進を中心として、周囲が光りだす
やっぱ無理か、、そろそろお迎えの時間か。
死神のところへ行くときはいつも闇に包まれたけど、その演出じゃない。
「くそが!!!!!!!いくら強くても!肝心の時に大切なものを守れないと意味ないだろ!!」
そう言って八つ当たりをする進。
「本当に済まねえ!サヤ!凜!!」
そう泣きながら、最後に謝った。
ポワアアアアアアアン
俺が召喚された所には、死神と銀髪の女がいた。
「な、なんで?」
俺は疑問に思った。意識があいまいだったとはいえ、確かに光りながら俺は召喚されていったはず、
それを考えていると銀髪の女が話しかけてきた。
「初めまして。私はこの領域を支配してる、聖母マリアといいます。突然呼び出して申し訳ないです。」
口調はとても柔らかい。声はおっとりしてる感じだ。
恰好やオーラは死神とは正反対ッて感じだな、、なんで一緒にいるんだ?
しかも聖母マリア、、どこかで聞いたことがあるような、、、まあわかんないからいいけど。
「挨拶はいいから。さっさと送り返すぞ。マーちゃん。」
マーちゃん?死神の奴あの女の人のことそう呼んでんのか、、
いいなそれ今度からサヤと凜をそう呼んでみるのもありかもな。
「急にどうしたの?そういう遊び?面白くないよ?しーちゃん?」
「、、、、、、」
「黙んないでよ!」
死神は何もしゃべらない。
「あのー、とりあえずここどこスカ?」
気になったことを聞く進。
その質問に優しく答えるマリア
「ここはねー、神様たちが住む場所!つまりは神界だね。」
はあー-、なんかよくわからないけどすごいところに来てしまったようだ。
「あれ?あんまり驚いてないね、ここと似たところに来たことでもあるの?」
あるっちゃあるけど死神のところだけだしな。
「雑談はその辺にしろ、嫁たちが危ないんだろ?」
と死神が話題を振ってきた。
「ああ、そうだ。そのために死神に会いに来たんだ。」
そう言ってかしこまる進。こっちには命に代えてでも守らなければならないものがある。
「全く、仕方がないな貴様は、さっきの戦いを見ていたが、お前と敵は互角の強さだ。でも心臓をつぶしても死ななかった。だがそれでもお前は勝てる。なんせこの私の弟子だぞ?」
と死神は進を励ます。
「そうだな、でもなんで負けたかわかんねえ。一体何者なんだなんだ?」
心臓をつぶして死なない生物なんてこの世にはいないだろ?!せめて地上には。
「一つ助言しよう。あいつの弱点は可愛い女だ。以上、とっとと帰れ」
そう言って死神は俺を魔法陣へ強制的にもどし、さっきのとこまで戻らせようとしてる。
「えー?!もう行っちゃうの?!」
マリアは人間という客人が珍しかったのでまだいてほしかったようだ。
「馬鹿言うなマリア。あいつは今から世界を救いに行くんだから。」
と死神が止めるマリアを引き留める。
「マリアって呼んでくれたね。さっきまでマリアって呼んでたのに急に意味わかんないあだ名で呼ばれたけどけどようやく本名だ。」
嬉しそうにマリアは微笑んだ。
「ふん、意味が分かんないのはマーちゃんだけだ」
その一連を見ていた進は言いづらそうに、
「じゃ、じゃあ、行ってきまーす。」
最後に死神が俺のほうを見て何かを言ってきてたが、わからなかった。
「っ?!貴様?!何故ここにいる?!?!」
驚いた様子のファシアス。無理もないだろう。俺が逆の立場でもそう言うな。
「は!お前にできることが俺にできないわけないでしょー!」
「き、貴様あああああああ!!!!この私を馬鹿にしたな!!!許さん!許さんぞおお!!」
ファシアスは怒り狂った。空気が揺れ、空が黒くなり雨が降って雷が落ちてきた。
「あぶねっ!」
雷が俺の頭に落ちてきた。
あいつさっき本気出すって言ってたよな?この雷の威力、、、さっきの魔法より圧倒的に強いんだけど、
「やはり本気を出さないとお前には勝てなさそうだ。後悔するなよ?小僧!」
「俺はもう17だ!あとさっき本気出すって言ってたじゃねえか!あれは嘘か?」
「ああ嘘だ!敵キャラが嘘をついて何が悪い!?敵は常に最低なんだよ!わかったらおとなしく死ねえ!!」
「そりゃあ、できない相談だぜ、、、お前と違って俺は二人も奥さんがいるからよ。」
と鼻を高くして進が言う。
「たかが二人で威張るな。我は500人おる。」
、、、、、いやアイツまじか、、、それはさすがにいすぎじゃね?最低じゃね?
「たわ言はここまでにしておいて、ウルトラスキル メガフォール!」
と話を切り上げ、ファシアスはスキルを使った。
「なんだあ?」
最初何も起こらなかったそのスキルを聞いて運任せ系なのか、魔力切れなのか戸惑った。
しかしどっちも違うことにすぐ気づいた。
「おーおーおーおー!!!こいつはやばすぎるて!!」
空からどでかい隕石が落ちてくる。
「これが隕石か、、でかすぎるぜ、、、」
今まで見てきた竜とか、そんなレベルじゃない。
まさに地球の生物を絶滅させるぐらいのでかさ。
「はは、こんなの出されちゃあどうしようもないけど、あがくしかないんですよお!」
そう言って隕石に向かって飛び出した。
「馬鹿め、この隕石は我でも破壊できない。つまり、我らもろともこの星が絶滅ううううう!する。」
やばいなこいつ。、、
「敵は常に外道を行く!それがこの世の摂理!」
「お前、、どれだけ敵キャラにあこがれてたんだ。」
「うるさい!」
そろそろ隕石に突っ込むわけだが、圧がすごい。これが重力!
「ん?なんか隕石の中にある。穴?」
進は隕石に近づいてく度に何かが大きくなっていくのをみて、それは大きな穴だということが分かった。
「なんであんなところにとりあえずあそこを中心にして殴るか!」
そう思って進は殴る態勢に入る。
隕石との距離およそ20メートル。
すると、例の穴からとんでもない勢いで空気が吸い込まれ始めた。
「なんじゃこりゃあああ!?!?!?」
みるみる進は隕石の中に吸い込まれた。
「おお、やったか?いや、なんか吸いこまれてるぞ、あいつ。」
ファシアスも何か異変を感じ取った。
「あれ、我の隕石じゃなくない?」
よくみると我の隕石あんな大きくねえわ!!しかも進むのもすごい遅い。
地上にくるまで4時間はかかるでしょ。
そんなことを思いながら、魔王ファシアスは優雅にお茶を飲みながら隕石が落ちてくるのを待っていた。
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