ういちゃんとは
なんだよこれ、なんだよ。夢が全然覚めてくれない。
「うーいーちゃん。ママだよー。見える?見えてる?」
「あ、あう」
「んーういちゃん可愛いね、目に入れても痛くないって本当だね!!!」
生まれてからというもの多分1人女性に事あるごとに
「ういちゃん」
と呼ばれて一週間ほど経つが慣れん。
しょうがない。
まだ目は全然見えないし、ほぼ聴力しか頼りにできない
この私を抱っこして声をかけてくる女性は『あさひな』さん
そうやって呼ばれてるから多分そう。
『あさひな うい』
が何故か私に掛けられる声。
おかしいな。村上 優唯なのに。
『うい』じゃなくて『ゆい』なのに。
「い」しか合ってないじゃん。
そして一番強い違和感。何よりもずっと自分で移動してない。
上向きで寝っ転がって、たまに誰かに抱き上げられて。
「ういちゃん」じゃないのに、
誰かに呼ばれて抱き上げられることが嬉しくなっちゃう。
私は今、周りから『あさひな うい』と認識されていて、
ここでは”そうである”って認めるしかない。
『村上 優唯』を思い出そう。
高校2年生。
華のJK時代とはよく言ったもので華は全くなかったけど、
学校以外の時間は漫画にテレビ、、自分の好きなものに囲まれて最高に楽しかった。
とにかく二次元とか、画面の向こう側の世界が大好きで現実は好きじゃなかったなぁ…
好きなものだらけの家からはほぼ出ることはなかったし
母子家庭でお母さんはバリバリ働くキャリアウーマン。
ありがたいことに稼ぎも十分だったのでお金にも困らなかった。
ま、あんまり家に帰ってくることもなくて一人暮らし状態
でも毎日電話してたし、どっちかっていうと親友って感じか。
と、ここまでのことと現状を整理するとあれかな
転生?いや、でも死んではない…はずだし。
異世界召喚。でも無さそう。
今のところ目は見えないから、あれだけど”魔法”とかそうゆう類の言葉は出てきてないし、もちろん言語も理解できるし。
きっと普通に前の環境と変わらない世界に生まれてきた。
今わかることは
私の人生は別人としてリセットされたっぽい。
『あさひな うい』として。
あーあ、お母さんにだけでもバイバイしたかったな。
にしても!!!この身体、動きずらい!!
「あぅーうー」
「あ、ういちゃんどうしたの?
お腹すいた?んーでもさっきあげたばっかだし、
もしかしてお話ししたい?
んーじゃあママとお話ししよっか!」
・
・
・
話は変わるけど、この母かなりマイペースなんだよな。
「でね、パパが今日もういちゃんの事自慢するんだーって言うの
内緒って言ったのパパなのにねー
あと少しだけママとパパとういちゃんだけの秘密。
ママとお家に帰れるようになったら、みんなに初めましてってしようね。」
「あ、あう。あうーう」
「ね、ママも楽しみ!ういちゃんとお外行くの」
パパ、か…
こうなってから会ってる男の人って限られてるし、
でも予想するに多分異常にベタベタ触ってくるあの人しか無さそうだけど。
正直、目が完全に見えるようになるのが怖い
既に娘にでろ甘な視線を送っているであろうスキンシップの取り方
ほっぺとか、手とか、足とか!フニフニされんの!
絶対に顔面が緩み切ってるやん。私には分かる!!!!
どうしよう、めっちゃおっさんだったら。
いや、でも声が!!
めちゃイケボでして!!!耳が!溶ける!!!!
すっごい好きな声!!!!
ありがとうイケボ!!!!
まあ我が父の声には大満足です。
どうぞ父であってください。
声だけは!!!!
とまあそんな感じで順応してきている自分も怖い。
それにしてもやっぱり自分に何が起こっているのかわ知りたいわけで毎日そんなことばかりを考えて赤ちゃんをしている。
まあ寿命が延びたし、あのまま大人になるよりもまた自由な時間が増えたと思ってたのしもーっと。
幸い前世の娯楽という娯楽は知り尽くしてますし!!!
ってことで早く自分で行動したいお年頃です。
はよ来い、ハイハイできる赤ちゃんライフ!!!