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忘れ得ぬ過去③

「ここへ来るのはいつぐらいだろうな。あのときは青々としていて実に美しかった。なのに……。アイツラのせいで」

調査のためこの地にやってきた兵士と思われる男は隣りにいる男に話しかけていた。

「そうですね。あの時は実にいきいきとしていた。だけど今は……。これが現実、見たままありのままを報告しなければ」

「もう一つあっただろう。生存者の救出、いるとは思えんが一応調べよう」

「そうですね。随分とここの人たちには世話になった。せめて供養でもしておかないと」

「そうだ。勇敢に立ち向かった名もなき住民たちの栄誉を讃えるためにも」

二人はどんどん歩みを進める。ここはかつて大穀倉地帯と呼ばれた場所、戦乱によって踏み荒らされ不毛の地となった。発掘すれば侵略者からこの地を守るために体を張った住民たちの亡骸が出てくるであろう。

やがて彼らは集落であったであろう場所に到達する。

「想像以上だな。これはひどい。もっと早く来れば助けられたかもしれない」

「全くだ。だが、後悔してももう遅い。帰還したら直ちに埋葬の準備に入ろう」

二人は無惨にも朽ち果てていた子供たちの亡骸を目にしても気持ち悪がることもなく涙を流すこともしなかった。ただひたすらに祈りを捧げるだけだった。

二人はさらに奥に入る。わずかに残っていた森林地帯に到達したとき彼らは信じなれないものを目撃する。

「なあ、あれは確かにひとだよな、それも子供」

「まさか生存者?」

「いるわけない。大方流れ着いた流民かもしれん。いずれにしても一人というわけでもないだろう。直ちに引き返して捜索隊を要請しよう」

二人は急ぎ帰還した。

報告を請けた上層部は直ちに捜索隊を派遣した。大規模な捜索が開始された。

「ごめん、発見された」

獲物を探すため森林をうろついていたグージェスは意図せず森林ので外に出てしまった。そこで調査にきていた兵士らしき二人組みに自分の姿を目撃された。

「なぜ謝る。やっとたすけに来てくれたかもしれないのに。発見されたのならむしろ喜ぶことだろう」

「逆だよアレン。アレは俺たちを殺しに来たんだ。あいつら兵士だ。俺たちが生きていることを知ったら間違いなく殺される。逃げよう」

「だめよ、ここから逃げったって結果は一緒、いい加減覚悟を決めましょう。ようやくみんなのもとへ行けるのよ」

「そうだな。ビビることはない。やることやってみんなの元へ行こう」

ヴァネッサの言葉に3人は覚悟を決めた。

だがグージェスが発見されてから2、3日たっても何も起こらない。

「どういうことだ。なんの動きもない」

アレンは何も起こらないことに不安を感じていた。

「ちょっと見てこようか?」 

「だめだ。動くな。もしかしたらこっちが動くのを待っているかもしれない。迂闊に動くと何もできない内にやられてしまう」

アレンはグージェスを止める。

捜索隊が到着するまでの間、彼らはずっと身を潜めていた


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