それぞれの思い
「ひとつ、お願いがあるんだけど…」
子供たちは言いにくそうに捜索隊のメンバーたちに告げた。
「わかっている。むしろそれをしなければならないと思っていた。しっかりとやらさしてもらう」
捜索隊の隊長はさも当然だと言うふうに答えた。
「だが、今は無理だ。明日になれば追加の部隊がくる。それまではしっかりと準備をしておく。大したもてなしはできないが今までよりはマシだろう。ゆっくり休んでいてほしい」
そういう隊長の申し出を彼らは受け入れた。
「取りはしないからもっとゆっくり食べたらいい。慌てて食べるからそうなるんだぞ」
隊員の一人がそう注意するほどに彼らはがっついていた。
「ただのレーションだぞ。そんなにうまいものでもないのに」
「あいつらにとってはこれでもご馳走なんだろう。さっきあいつらのアジトを見てきたがろくなもの食ってないな。食べばかりのこいつらにとってはつらかっただろうな。よく生き残ったものだ」
「俺らがこんな目にあっていたらどうだろうな。生きていくのに食えないものでも食わなきゃならないとなったら……」
ある種の哀れみや同情をうかべながら隊員たちは感想を述べ合う。
「ごめんなさい。」
食料をむさぼり食うアレンやグージェスを横目で見ながらヴァネッサは怪我をさせた隊員に謝罪する。
「別に君たちに敵意を持っていたわけではないんだ。逆の立場なら同じことをしていたかもしれないな。だから気にすることはない。むしろ君たちにやられたことを反省しないとな。これが実戦だったらと思うとゾッとする。いい経験になった」
その言葉にヴァネッサは自分は救われたような気になった。
「それにしても……」
「えっ、なんですか?」
「君はしっかりしているな。あの二人とは全然違う。女の子だからかな」
「そうかもね。あの二人、切羽詰まると周りが見えなくなるのよ。だからね、わたしがちゃんとしてないとね。いまだってそうでしょう」
「確かに。だがリーダーはあのアレンとかいう子だったはず」
「あれが年長者だからね。戦略には優れているだけど自分自身のことは全くだめなのよ。グージェスなんて先のことなんて全く考えてないし」
「いろいろと大変だったんだな」
「そうなのよ。私なんて家事全般やらされていたんだから」
ヴァネッサは今まで溜めてきたものを一気に吐き出すかのように愚痴りだした。
「寝たか?」
「ああ。こうしてみるとやっぱり子供だな。こんな子供にえらい負担をかけていたんだと思うといたたまれなくなるな」
食うだけ食って満足したように眠り込んだ二人の横で優しく二人を優しく抱きかかえるように眠るヴァネッサを見つめる隊員たち。いろいろと考えさせられた一日だった。
「この子達は強くなるぞ。いや強くなってもらわなくては困る」
導師は強い決意をもって子どもたちを育てていこうと思うのだった。