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序章

「これがこうで、こうなったから…」

講師の説明に目を輝かせながら耳をかたむける子供達、教えている内容は簡単な計算を伴う文章問題、10リットル入る容器に毎分2リットル入れているが下から毎分1リットル出ていく。満杯になるのに何分かかるかというような問題。答えは10÷(2-1)=10なのだが計算に慣れない子供たちに理解させるのはなかなか難しい。それでも講師は丁寧に説明していく。

「先生、大変です。すぐ来て下さい」

授業中にもかかわらず叫びながら教室に駆け込んでくる男、それを見ながら講師は

「やれやれ」といった表情を浮かべながら

「ちょっと行ってきますから今日はここまでということで」

そう言って講師は教室を後にする。

道中で話を聞く講師。どうやら水資源をめぐっていざこざが起きたようだ。上流で水を採りすぎたため下流に行き渡らなくなったとのこと

「その件は取水制限を設けることで話がついたはず」

講師の言葉に男は答える。

「このところ雨が少なくて水量がいつもより少ないんです。下流側は採りすぎだと抗議したんですが上流側は制限内だから問題はないとの一点張り、それで揉めているんです」

「それで仲裁してくれってことですか? なかなか難しいですね」

「そこは賢者様の威厳というか……」

「やるだけはやりますがね」

賢者と呼ばれた講師はさあどうしようかと思案しながらも現場に向かうのであった。

現場では上流側と下流側の一団がにらみあっていてまさに一発触発の状態だった。

「いくら制限内だからといってもいつもより少ないんだ。少しは考えてくれ」

「そうは言ってもこちらも大変なんだ。これでも譲歩しているんだ」

それでもなるべく穏便に済まそうと話し合ってはいるがどこまでも平行線をたどる。

「いい加減けりをつけないとヤバいぞ。賢者がでてきたら無事じゃすまない。以前どうなったか忘れたわけではあるまい。呼びにいったやつがいる」

上流側は賢者が出てくることを恐れているようだ。

「忘れたわけではない。だけどこれは死活問題だ。ここで引くわけにはいかない」

下流側に引き下がる気はないようだ。

「雨が降ってくれればいいんだが」

「だが期待できないな」

集まった人々は恨めしそうに空を見上げる。雲ひとつなく晴れ渡る空は雨が降る気配は全く感じられない。

解決策が全く見つからずいぶん人々は途方にくれる。しかしその時間は長くは続かなかった。

「あなたたち、まだこんなことをしているんですか? 全く懲りていないようですね」

沈黙を破るように賢者の声が集まった人々に響きわたるのだった

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