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 副島は白烏にバントのサインを送る。12点差だが、白烏にはしっかりバントで送るところは送れるようになってほしい。


 初球は外角に外れたボールとなり、白烏は慌ててバットを引いた。


「えっ、12点差でバント!?」


 伊香保が目を大きくして副島に向かった。


「……黙って見といてくれ。お前、今来たばっかだろ。それに、俺はマネージャーなんか呼んどらん。俺はマネージャーなんかまだ認めてへんからな」


 副島の一喝に伊香保はしゅんと小さくなり、頭を垂れた。


「ご、ごめんなさい」


 副島も言い過ぎたとは思いつつ、何でわざわざこんな最終回に来たやつに言われなあかんのやと、むかっ腹を抑えるので精一杯だった。


 ふと顔を上げると、白烏がこちらを見ている。副島からのサインを待っていた。副島はすまんすまんという仕草とともに、同じくバントのサインを送った。

 副島は相手の守備位置を確認していなかった。


 白烏がバントの構えをすると、ファーストとサードはもう目の前にいた。何とかバットに当てるが、すぐさま白烏の目の前でサードが転がったボールを補球する。


 セカンドランナーの滝音は良いスタートを切っていたが、間に合わないと判断した。さすがにアウトになる。


 ならば、せめてダブルプレーを避けられないだろうか…。滝音は走りながら、蛇沼の位置を確認する。蛇沼も良いスタートを切っている。


 よし。一か八かで滝音は叫んだ。


「セカンッ!!」


 三塁のカバーに入っていたショートの伊賀崎はサードからボールを受け、その声に僅かにつられた。反射的に二塁を見るが、とてもそちらは間に合いそうにない。滑り込んできた滝音がニヤリと笑っている。


「ちっ、姑息な……」


 向き直り、一塁へ矢のような送球を送ったが、二塁を確認した分、僅かに白烏の足が先にベースを踏んだ。


 セーーフ!


 滝音の機転でダブルプレーは免れた。塁上でうなだれる白烏を見て、副島はそれ以上に悔やんだ。伊香保のことで苛立ち、最終回だというのに判断を誤った。一度、ヒッティングの構えを取らせて守備を迷わせるべきだった。


 ベンチに滝音が返ってくる。ヘルメットを脱ぎながら伊香保に声をかけた。


「来てくれたのか」


「うんっ」


「ありがとう、大変だったな」


「ううん、お安い御用だよ」


 そう言って伊香保はゆっくり首を振った。


「何だ? 滝音が伊香保に頼んだのか? 何勝手にやってんだ、滝音」


 副島が二人の会話を聞き、苛立った目線を滝音に送る。


「副島、黙っていてすまない。伊香保に頼んだのは俺だ。伊香保に2つ頼みごとをしてたんだ。お前の負担を減らしたくて……。俺らが、甲子園に行くために」


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