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続く、二番打者。
藤田の足元はふらついていた。初球、先ほどのボールより10キロは遅いボールが真ん中高めにいく。あまりにも甘い球に打者は手が出ない。それでも2球目にしっかりと合わされ、ライトへのヒットを打たれる。
捕球した桔梗が藤田に大きな声を送った。
「頑張って、藤田!」
桔梗からの声援にも、藤田は手を挙げるのが精一杯だった。
滝音の頭上から声がした。滝音が顔を上げる。そこには他の打者とは違うオーラが漂っていた。
「悪いけど、とどめ刺させてもらうすよ」
打席には、三番、伊賀崎。
ここまで、フォアボールと桔梗のファインプレーに阻まれた大きなライトフライ。伊賀崎の目は明らかに変わっていた。
可能性があるなら……これしか、ない。滝音が内角に落とすスライダーを要求する。ふらふらの藤田が最後の力を振り絞るように腕を振った。
カッキイイイイイイイイィィィィン!!
伊賀崎の放った打球が桔梗の遥か頭上を舞い、場外遥か彼方まで飛んでいった。
悠然と伊賀崎がダイヤモンドを一周する。目の前を横切る伊賀崎に対し、月掛はあまりの当たりに言葉すら出なかった。
13-1。
ここで藤田は力尽きた。がっくりと膝に手をつく。その背中が後ろからそっと支えられた。燃えるような目で白烏が立っていた。
「よく頑張った、藤田。あとは任せてくれ」
ピッチャー交代。
ピッチャー、白烏結人。
「ここでまたノーコンかよ。これ、今日中に終わんのかよぉ」
理弁和歌山の一年生が投球練習をする白烏を見ながら言った。
「お前ら、どういうことだ? あのピッチャー再登板なのか?」
資定が一年生に訊ねた。
「あ、はい。初回に投げてたんですけど、ワンアウトも取れずにフォアボールとデッドボールだらけで。ほら、今から打つ野中がホームラン打ったりしてですね。さっきのピッチャーのほうがマシでしたよ」
「そうか……」
資定は投球練習をする白烏を見つめていた。こいつらの言ったことは本当なのだろう。ということは、今のこの投球練習は何なんだ?
白烏が全身を使って滝音のミットへ投げ込んでいる。低めへ信じられないスピードのボールがミットを穿つ。
初回は緊張していたというのか? もし、そうではなく、この数イニングで成長したのだとしたら……。資定は高鳥監督へ視線を送った。
まさか監督は、これ以上経験を積ませると脅威になるという判断でこの試合を五回までにした、と……?




