表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/240

14

 次の打席に入った桐葉は打てると確信して、構えに入った。相変わらず居合いの構えを取る。ぽつりと理弁和歌山キャッチャーの森本が呟いた。


「悪いですけど、それじゃ当たりませんよ?」


 主審に聞こえたようで、森本は主審のコーチに注意された。桐葉は全く動ずることなく、居合のまま構えた。


 剣術は間合いで決まる。相手の刀身の長さ、踏み込む歩幅、スピード、それらを見極め、先に打突するか受けるか出鼻を狙うかなどを瞬時に決めていく。実際に野球というスポーツをやってみて、桐葉は剣術と同じだと感じた。石田の球筋は見極めた。おそらくタイミングは合うはずだ。剣術でいう打突の重さは相手の投げる球質の重さにあたる。一度対峙して三振を喫したが、二度ファールで当てた際に桐葉は球質が軽いと判断した。故に、タイミングを合わせてヒットを狙う必要はない。水月刀でスタンドへ運べる。そう、確信していた。


 初球。外へのフォークに桐葉はピクリともしない。一度見たボールに桐葉は手を出さない。


 二球目だった。


 石田が投げ終わる体勢で、桐葉の足元につむじ風が巻き起こる。何事かと森本が桐葉を見ると、桐葉が頭上で高速回転している。内角低めのストレートに竜巻のごとく上段から振り落とされた桐葉のバットがピタリと合った。


 キイイイィィィィィン!


 甲賀ナインがライトスタンドへ片手を上げる。桐葉の打った打球がライナーのままライトスタンドへ放り込まれた。


 甲賀高校、初の得点は桐葉の強烈なソロホームランとなった。


 静かにダイヤモンドを回った桐葉を全員が出迎える。


「すげー、桐葉すげえぞ!」


 皆が桐葉のヘルメットを叩いて手荒い祝福をした。桐葉が珍しく少し笑った。


 続く道河原は鼻息荒く打席に入ったものの、三振。バットとボールは30cmほど離れていた。


 対して、続く副島はレフト線への良い当たりを放った。一塁を勢いよく蹴って二塁へ。だが、中継に入った伊賀崎が信じられないスピードで二塁へ送り、微妙な判定ながら副島は二塁で憤死してしまった。


 伊賀崎がベンチに帰りながらグローブをつける月掛に視線を送る。月掛がそれに気付いて、伊賀崎へガンを飛ばすと、伊賀崎は鼻で笑った。


「くっそ、あいつ!」


 ベンチを飛び出しそうになる月掛を滝音が制す。


「なんだ、月掛。さっきからかっかしやがって」


「あっちのショート生意気なんすよ!」


 月掛の頭から湯気が昇っている。


「それはお前も一緒だよ」


 こつんと月掛の頭を小突いて滝音がグラウンドに出ようとした時だった。


 高鳥監督がベンチから出て、こちらへ向かってくる。甲賀ナインはその姿に気付き、グラウンドに出ようとした足を止めた。高鳥監督は甲賀ナインへ帽子を取り、小さく頭を下げた。


「橋爪先生、少しよろしいでしょうか。あ、あと副島主将も、いいかな?」


 ベンチ近くで高鳥監督と橋じい、副島が輪になって話し込んでいる。


 話はなかなか終わらず、一旦両軍ともにベンチへ戻った。ほっほと笑う橋じいの声だけが楽しそうに響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ