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マウンドに集まった内野陣は黙ったままだった。
いつも強気な道河原も声を出せない。たった15分で7点も取られた。いくらコントロールが悪いとはいえ、白烏がエースだと誰もが思っている。その白烏が一瞬でノックアウトされた衝撃。これが実戦か、と多少ならずもおののいた雰囲気がそこにはあった。
「藤田、ひとつアウト取ろう。組み立てで違うと思ったら遠慮せず言ってくれ」
滝音は藤田の肩をポーンと叩いてマウンドを離れた。俺がしっかりせねば。ポジションに戻る滝音は緊張に満ちた表情をしていた。
「藤田、白烏さんの仇とったれ」
月掛がグローブを鳴らす。
「うん」
藤田がマウンドの感触を確かめる。手渡されたボールを強く握った。せっかく副島さんとここまで来たんだ。練習試合とはいえ、このままずるずると終わらせられない。
バッターボックスに入った一番打者の顔は引き締まっている。初回に打者一巡しても気を緩めてくれそうにはない。
二番手として白烏の後を受けた藤田が、柔らかなフォームから初球を投げる。
ストライーーク!
審判の右手が突き上げられた。ミットに収めた滝音、レフトから見守る副島、そして降板した白烏もこのストライクコールにほっと表情を緩めた。
だが、この藤田にも理弁和歌山打線は牙を剥くのだった。
藤田の2球目。
容赦なくランナーが走る。守備の決まりごとが徹底されていない甲賀ナインは、ランナーにつられてしまう。
蛇沼がサードベースにつき、桐葉はセカンドベースに寄る。ぽっかりと空いた三遊間を一番打者は冷静に狙った。当てるだけのバッティングが広い三遊間を抜けていく。
レフトの副島が捕球したときには既に8点目のランナーがホームインしていた。
藤田がせっかく取ったストライクが霧散するような……。
まだ一回の裏。アウトすらひとつも取れていない。こんなに実力差があるのか……。
絶望という壁を前に、甲賀ナインは必死で顔を上げるのが精一杯だった。




