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 まだ、終わらない。


 白烏は続く五番、六番打者をそれぞれフォアボール、デッドボールと歩かせてしまう。


「白烏さん、俺ら守るから打たせようぜ」


 月掛が珍しく気を遣うように白烏に声をかけた。白烏は既に汗をべっとり滲ませている。余裕なく、月掛の言葉に手を軽く上げただけだった。


 四死球を避けてボールを置きにいくと、外野を越えられる。全力で投げるとストライクが入らない……。その後、七番から九番まで結局めった打ちされ、遂に白烏はマウンド上で両手を膝についた。


 本当にあっという間だった。ノーアウトのまま打者が一巡し、スコアは理弁和歌山に7点が刻まれていた。


 白烏の投げるボールは明らかに速い。そして明らかに鋭く大きく曲がる。

 だが、ひとつもアウトを取れずに7点を失う。これが野球の怖さであり、醍醐味だ。


 副島がレフトから滝音に目配せをした。滝音はそれに気付き、少し迷ったようだった。マウンドへ何かを考えるように歩きながら、副島の方を向き、首を縦に振った。


 ピッチャー、交代だ。


「結人、この試合もう一度出番がある。そこで即リベンジすんぞ」


 滝音が肩を叩き、白烏は帽子のつばを下げた。藤田がマウンドに駆け寄ってくる。さすがに内野陣はなんと声を掛けていいか分からないでいた。


「すまねえ」


 白烏がマウンドを降りる。練習試合だろうが、ピッチャーがマウンドを降りる時の背中は儚い。背を丸めてトボトボと去る者、土を蹴っ飛ばしながら悔しさをぶつける者、様々なマウンドの降り方がある。

 白烏結人は違った。センターのポジションに着くまでシャドーピッチングを何度も繰り返し、その背中は次の登板までには何とかするという未来への覚悟で溢れていた。甲賀たる者、こんなにこてんぱんに負けたまま終われるはずがない。

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