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 翌日。


「しゃあああああす!!!」


 合宿施設のグラウンドに大きな挨拶が響いた。白いユニフォームに赤い字で『R』の文字。何度とテレビで観た甲子園常連校のユニフォームだ。名将と称えられる高鳥監督が橋じいに頭を下げている。年の功。副島にとって、これほどにその言葉が浮かんだことはない。


「うはは、相手さん気合い入ってるな。木っ端微塵にしてやろう」


 道河原がバットをぶんぶん振り回して言った。


「その前にど真ん中以外も打てるようになってくださいよ、玄武さん」


 月掛が応えると、道河原にバットで頭を小突かれた。


「おい、東雲。ボタン留めろ」


 桔梗の胸元がぱっくり開いている。副島は気合いが入っており、いつもより厳しい表情で桔梗を睨んだ。桔梗は上目遣いで副島に目を潤ませる。すさかず藤田と道河原が桔梗の胸元に目をやっていた。


 犬走はいないものの、初の実戦はどうなるものか。副島と藤田はさすがに胸に来るものがあった。ストレッチとキャッチボールを両チームとも済ませ、ノックは理弁和歌山さんに譲った。


「うちは朝ノックしましたので。理弁和歌山さんがノック終わったら試合始めましょうか」


 高鳥監督は軽く帽子を脱いで挨拶し、バッターボックスへ入る。テンポ良く高鳥監督の右手にボールが渡され、機械のように一定のテンポでノックの打球が各ポジションに飛んでいく。長短、速遅、高低、全て使い分けられ、それを理弁和歌山ナインはエラーなく捌いていく。


「す、すげえ」


 月掛が甲子園常連校のノックに感嘆していた。後ろで桐葉さえもごくりと唾を飲んでいた。


「橋爪先生、ノックありがとうございます。では、30分から試合開始ということで」


「ほほっ、そうじゃの」


 さあ、いよいよだ。甲賀ナインの胸が高鳴る。敢えてノックはせずに、どれだけ実戦に入って浮き足だってしまうのかを副島は確認したかった。だが……。


「副島、相手は背番号一桁がいない。ほんとのスタメンじゃないってことだな?」


 滝音がそう訊ねて胸に闘志を燃やしている。


「ああ、二年生一年生のチームだろう」


「舐めやがって。レギュラー引きずり出してやろうぜ」


 道河原が拳をバシバシと鳴らしながら言うと、皆がおう! と低く気合いのある声で応えた。


 やはりこいつらは頼もしい。気合いの空回りはあれど、浮き足立つことはなさそうだ。 

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