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犬に囲まれて生きてきた。
子供の頃から遊び相手は専ら犬たちだった。
犬たちはよちよち歩きの犬走和巳をいつも見守っていた。
犬走家では、一人の子に対して三頭の犬が子を成長させる役目を果たす伝統がある。和巳には、シン、ヒョウ、セイの三匹がついた。
いつもシン、ヒョウ、セイの三匹と鬼ごっこをして遊んだ。幼稚園から小学校卒業まで、どう逃げ回っても追いつかれた。小学校高学年にもなると、いっぱしのフェイントもできるようになったが、何度かかわしても結局はタッチされてしまう。
ワウ! ワウ!
和巳にタッチしたシンが喜んで吠える。
ワオーーーン!
ヒョウは和巳に追いつくと勝ち誇ったように遠吠えする。
ワンワンワンワン!
セイはシンとヒョウよりも遅いが、フェイントに騙されない観察眼があり、時折和巳を捕らえる。嬉しそうに、少し小馬鹿にするように和巳の周りを鳴きながら走り回るのだ。
中学に入ると、かなり足は早くなった。それでも、シンたちには勝てない。
ワウ! ワウ!
ワオーーーン!
ワンワンワンワン!
夕焼けの空に今日も三匹の鳴き声が響く。
夕食を静かに食べていた時、和巳は箸を置いて父と母を見た。実は和巳はこの父と母どちらにもまだ走力が及ばない。悔しくてしょうがなかった。
「俺は陸上部に入る。毎日、陸上で日本代表になったことがあるコーチが教えてくれるらしいんだ」
父は茶碗を置いて、じっと和巳を見た。母は少し笑みを見せたように感じた。




